お嬢さまは百合が好き

とねてつVer2

第1話

「あー・・・だりぃなぁ・・・よお美紗!午後の授業サボろうぜ」

午後の授業をサボろうと画策しているのは、高校3年生の古田優花である。


ギャルである。


金髪のロングヘアを巻き、ネクタイはだらしなく、ワイシャツは2番目まで外し

スカートはパンティが見えるのではないかというくらい。「JKはミニスカ一択!」


今日はバッチリメイクのはずだが「ファンデののりが悪いわぁ・・・」


休み時間もまつげの手入れに余念がない。

同じギャル仲間で、一番仲の良い松本彩夏とコスメのはなしでもりあがっている。



優花と彩夏、他のギャルたちとワイワイしている同じクラスで。



「あーいやですわ、あんなギャルになりたくないですね」

「そうですね、私たちとは別の人種ですわね」

などと、煙たそうな目でギャル達を "見下して” いるのはお嬢様グループである。

その中心に居る二宮美羽は、常にアルカイックスマイルで仲間の会話を聞いている。


〚深窓の令嬢〛という言葉がぴたりとあてはまる二宮美羽。


艶のある黒髪のロングヘア、前髪を7:3に分けている。

大きめな目、筋の通った鼻、薄めの唇、口元に小ぶりなほくろがある、

長身でスタイルが良く、手足が長い。


その美しさでクラス中、いや学校中の男子の憧れの的でもある彼女には

「二宮美羽親衛隊」なる組織まで存在しているという。

この組織は、いかに二宮美羽が素晴らしい存在であり、その存在をいかに保護し

守っていくか、常にこの組織では二宮美羽について議論を行っている。

【隊長】と呼ばれている野中光とその取り巻きたちは、回りの男子たちに、

二宮美羽のすばらしさを説いて回っているのだ。


その二宮美羽は学業優秀、スポーツ万能、そしてその美貌。

誰もが憧れる存在であるのだが・・・




ある日の昼休み

【放課後、屋上来れる?】と美羽のLINEに。


ウキウキしながら階段を上る美羽。



ドアを開ける。



フェンス際にいくつかのベンチが置かれている。


そのうちの一つに一人の女子生徒が座っている。


「お待たせ!」

「おっ」

と、ベンチに座っていたのは誰あろう、一番毛嫌いしている筈のギャル、

古田優花だった。


「待った?」

「いや」

「今日も可愛いね優花!」

「っそうか?お前だってキレイじゃん美羽」

二人できれいだ、カワイイだと褒め合っている。

ベンチで肩を寄せ合っている様子は、恋人のようだ。


たわいもない話をしている二人。


しばらく二人で喋っていると

空がだんだん薄暗くなってきた。

「そろそろ帰んないと心配すんじゃねえの」

「そうだなぁ・・・じゃあきょうは帰る」

「じゃあな」

「うん、またね」


校庭を見下ろすと、自転車を押して校門を出ようとする美羽が見えた。

屋上から見ている優花に手を振っている。振り返す優花。


校門を出ていく美羽を見送ってから「さぁってと帰るとすっか!」


バス停に行くと、彩夏と美沙がいた「おせぇよ優花!」

「わりぃ担任にちょっと用事頼まれたんでよ」「案外そういうの頼まれるよね優花」

「やりたかないんだけどさ。成績に響くかなと思って。それだけだよ」

「そっか、あっ、そうだ駅ビルの新しいコスメショップ知ってる?行かない?」

「あ、そうなの、じゃあ待たせちゃったし、行くか!」



「おはようございます」

「美羽さま、おはようございます」のあいさつで始まるのがお嬢さまグループ。


「うっす!」でスタートするギャルグループとは、どう見ても相容れない。


派手なギャルたちがひと固まりでいる一方で、清楚上品をモットーとするお嬢さま

グループが共存しているクラスの一日も、いつもと変わらず始まっていた。


しかし二宮美羽には悩みがあった。



第1話 完

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