第六話 秋は死骸の季節
秋が幕を閉じた。
エンドロールにはAutumn Serenadeが流れ、あまりにも美しい結末の映画のようだった。人生の終末を
思うに、春は生の季節だった。徐々に日が上がる、高まる季節だ。
冬眠から起きる熊、芽吹く
そして、それら全てを包み込む桜。
ああ、なんと美しいことだろう。
反対に、秋は死の季節だ。その役目は、決して冬には務まらない。
ここに辿り着くまでに、どれだけの生物が死んだのだろうか。秋の美しさは、死骸の美しさなのだ。そうさ、あの紅葉だって、死んでいく過程の赤なんだ。為す
生が恐ろしくないのならば、死だって恐ろしくないはずだ。華麗に死ねるのならば、死にも意味はある。
「……あはははははははは!!!!!」
一人で笑い転げる。
ああ、秋は本当にすごい。こんな色の変化、ただの現象なんだ。なのに、それなのに、まるで人間になってしまったかのように、そこに意味を見出そうとしていた。その事実が、堪らなく可笑しかった。
「意味とは、人間に元々備わっているものではなく、季節が施すものなのかも」
鶏と卵のような疑問だ。どちらが先か分かったところで、少しも私の腹を満たさない。意味を考える意味も無い。
それでも、季節を見て、美しいと思える心を持っていて良かった。現象に意味など無いが、長い長い退屈しのぎには丁度良い。
ああ、うかうかしていられないな。
そろそろ秋が完全に終わってしまう。こうしちゃいられない。鑑賞の準備をしなくちゃ。
…
「ついに始まるね」
大きなポップコーン片手に、鑑賞を始める。まるで金曜ロードショーを見つめる子供の様に、その潤んだ瞳は季節に釘付けだった。
秋は終わり、夏の生まれ変わりの
……ああ、始まってしまう前に、トイレを済ましてこようか。
急いで便所へ向かう。楽しげな様子が伝わる足音は、天空に響き渡っていた。
焦げ茶色に死にかけていた紅葉は、その色を取り戻すかのように、葉の先から深緑に染まり始めてた。
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