第五話 秋口

 肌寒さを感じて目を覚ます。

 ずいぶんと眠ってしまっていたようだった。のまま、少しの微睡を楽しむ。目が覚めてきたところで、初めてカレンダーを見る。


 季節は秋に差し掛かっていた。


 春から直結した秋はとても新鮮なものだった。夏がないため、特に温度の変化を大きく感じなかった。周りを眺めると、自然は淡い暖色から濃い暖色へと直接変化していた。

 秋の美しさは、段違いだね。


 ふと横を見ると、死体があった。

 それは間違いなく私のしかばねだった。

 そうだ、眠ると死ぬんだった。毎回忘れてしまうな。感覚としては、脱皮に近い(脱皮なんてしたことないけれど!)。

 記憶は引き継がれるが、体は毎回違う。今回は、少女のように小さく線の細い体だった。

 けれども、毎回、体の奥から心を燃やすように、確かに感じる。その全てが、通ったことのあるような感覚なのだ。輪廻というよりも、なんというか、旅に近い感覚。初めて訪れた場所も、どこか懐かしさを感じることがあるでしょう。それはにおいなのか、風景なのか、前世なのか、勘違いなのか。

 または、その全てなのか。


 死体をいつも通りヌルに食わせる。これは儀式のようなものだ。私は人間じゃないから、彼も人間じゃないから、これはただの現象。

 いつも美味しそうに食べるね。


 立ち上がって、秋の中を歩く。

 真っ直ぐにダーツの的へ向かう。そこへ至る道は、いつの間にか積もり始めた紅葉もみじによって赤く彩られていた。真っ直ぐに、的だけを目指して、死んだ葉っぱたちは寝転がるように生き絶えていた。あの頃の戦争を思い出す。

 屍の山を踏み鳴らして歩く。


 的に刺さった矢はまだ生きていた。体をピンと伸ばして、その役割をまっとうしていた。


 ダーツが刺さった箇所は「秋と冬の間」だった。

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