第2話 新たな家族

是清が高橋家に迎えられてから数ヶ月が経った。高橋家は、仙台藩の足軽である覚治とその妻が住む、小さくも温かみのある家だった。是清は新しい環境に興奮しながらも、少し緊張していた。


「是清、今日はお前の新しい部屋を見せてやるよ。」覚治が微笑みながら言った。


「はい、お父さん!」是清は元気よく答えた。


覚治が是清を連れて行ったのは、家の奥にある小さな部屋だった。壁には覚治が自ら作ったという棚があり、その上には小さな玩具や絵本が並んでいた。


「ここが是清の新しい部屋だ。どうだ、気に入ったか?」覚治が誇らしげに尋ねた。


「すごい!僕のためにこんなにたくさんのものを用意してくれたんだね!」是清は目を輝かせながら言った。


「まあ、俺が作った棚はちょっと斜めになっちゃったけどな。」覚治が照れ笑いを浮かべると、是清は笑いながら言った。


「お父さん、大丈夫だよ!僕、斜めの棚も好きだよ!」


その夜、家族全員が囲む夕食の時間がやってきた。覚治の妻が作った温かいご飯と味噌汁が並ぶ食卓に、是清は嬉しそうに座った。


「是清、今日は特別にお前の好きな魚の煮付けを作ったんだよ。」母がにこやかに言った。


「ありがとう、お母さん!僕、この料理大好き!」是清は嬉しそうに箸を取った。


「それにしても、覚治さん、今日は何か面白い話を聞かせてくれるって言ってたわよね?」母が覚治を促すと、覚治はにやりと笑って話し始めた。


「実はな、今日は町でとんでもないことがあったんだ。大八車を引いていた男が、突然猫が道を横切って驚いて、大八車ごと川に落ちちゃったんだ。」


「ええっ!大変だね。」是清が驚きの声を上げる。


「でもな、その男は何とか川から這い上がってきて、『大八車も猫も無事だ』って言ったんだ。町のみんなが大笑いしてたよ。」覚治が声を上げて笑うと、是清も母も一緒に笑い始めた。


「お父さん、それ本当の話?」是清が目を丸くして聞く。


「もちろんだとも。町ではそんなことがよくあるんだよ。」覚治が自信満々に答える。


是清は新しい家族との生活にすっかり慣れ、新しい寺子屋にも通い始めた。毎日が新しい発見と冒険に満ちており、彼の心はますます強くなっていった。


「お父さん、今日は寺子屋で友達と一緒に竹馬に乗ったよ!」是清が嬉しそうに話すと、覚治は優しく頷いた。


「それはよかったな、是清。新しい友達ができるのは素晴らしいことだ。」


ある日、是清が寺子屋から帰ってくると、家の前で覚治が木を削って何かを作っていた。


「お父さん、何を作ってるの?」是清が興味津々で聞く。


「これか?これはな、是清のために新しい竹馬を作っているんだ。」覚治が得意げに答える。


「本当?お父さん、ありがとう!でも、お父さんが作るとまた斜めになっちゃうかもね!」是清が冗談を言うと、覚治は笑いながら言った。


「そうかもしれないな。でも斜めの竹馬も楽しいだろ?」


「うん、きっとね!」是清は笑顔で答えた。

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