第2話 ベンチでアイスを食べる
結局、京香と優里亜はお金を出し合ってモナカアイスを買った。
再び道路をポンポンと渡って、バス停のベンチに腰掛けた。
バス停のベンチに屋根はない、ただベンチが海岸との間のコンクリの壁にピッタリとくっついているだけだ。
ベンチに座れば太陽は背中側に来るから、コンクリの壁で直射日光は当たらない、しかし日陰にいようとじっとり蒸される。
「はい」
京香は適当に折ったモナカアイスを優里亜に渡した。
「ありがとぉ?」
「ん?」
「サイズが違うんですけど」
「優里亜は70円弱、私は100円、七対十でしょ」
「けちくさ」
呆れと暑さからくる投げやりなリアクションだ。京香はすでにアイスを食べ始めていた。
「......ねぇ優里亜はさぁ高校卒業したらどうするの?」
「どおって......大学かなぁ」
「そうじゃなくてもっと先、五年後十年後、やっぱ優里亜も地元戻らないの?」
優里亜は中からあふれ出しそうなアイスをうまく口に運んだ。
「だってここ何もないよ、車がないと何もできないし、この道路だって全然車が通らない」
「まぁド田舎だからね」
「京香はどうするの」
「わたしぃはーたぶん適当な大学にいって、適当な会社に就職して、いつか帰ってくるかなぁ」
「壮絶だね」
「壮絶?」
「だってそうでしょ、いつ帰るかいつ帰ってこられるかわからない」
「でも、優里亜も都会行くでしょ」
「うんまぁね」どこか寂しそうに言った「あー嫌だなぁ永遠に高校生でありたいなぁー」
優里亜はアイスの最後の一切れを口に放りこんだ。
京香はまだ一口分残っていた。
颯爽と吹き抜け、木々を騒がしくさせる夏のぬるいの風が吹いた。
風が吹く時だけ蝉が静かに聞こえた。
夏のぬるい風はアイスの入っていた袋を巻き上げた。
「あ!」
取ろうとした京香の手は空回った。
空中でくるりんくる、自由に回りながらアイスの袋はコンクリの壁を越えた。
「やべ」
「向こう側って海岸だよね」
「超えれるかこの壁」
京香は二メートルはあるコンクリの壁を見上げた。
「しばらくあっち側に行けば、階段があるでしょ」
「次のバス何分後? 取ってくるわ」
元陸上部は気合いを入れた。
「次のバスは......」優里亜はスマホの時間を確認した「あと......45分」
「余裕だね......」
「ほんと」
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