第19話 不滅の冠



幻獣種 白虎


白銀に輝く体毛、鋭い牙

とてつもない剛力。雷魔法を

自在に操る最強種の一角

首には前主からの贈り物である

冠のネックレスを付けている


.........

......

...


死の湖 ゼア



ハオ

【っと......ん?どこだここ。】


そこは湖の畔だった。

辺りは霧靄がかっておりよく見えない。


ググググ


【なんだ?.....気のせいか

何処なんだよここ。レオンに会えるって

言うから来たのにそんな気配すら...】


【なんだ.....誰かいるのか?】


ググググググググググ


【誰だ!?】


霧が少し晴れる



???

【人間。なにをしにきた。】


ハオ

【なっ!?が、骸骨!?】


Aランクモンスター

リッチキング

禍々しいオーラを放つ骸骨

大鎌を使った物理攻撃や

闇魔法を操る。


リッチキング

【ここは私のナワバリ。侵入者は殺す】


ハオ

【ちょ、ちょっとまってくれ!!!

僕はここがどこだかわからず...】



ブゥン


リッチキングが大鎌を振ると

斬撃がハオ目掛けて襲いかかる


《腰を落とせ》


ハオ

【えっ!?】


言われた通りに腰を落とすと

斬撃はハオを通過する


距離にして30m

ハオの背後の森が伐採され朽ち果てる


ハオ

【なんだよこれ....】


リッチキング

【触れるだけで腐敗するぞ

さぁ。死ね人間】


【闇魔法 メギドラ】


どす黒い球体がリッチキングの

手のひらで生成されていく


ハオ

【た、助けて!!誰か!!しぬ!!】


《呼べ。破壊の神フォーナを》


【だ、誰だよ!!】


【う、うああああああああああああ】


リッチキングの魔法がハオの

半身を焼き尽くす


《あーあ。鈍臭いなぁおまえ

ほら。早く呼べよ。ほんとに死ぬよ》


死の間際、ハオはその名を呼んだ。


【破壊の.....神....フォーナ.....】


《あぁ。遅せぇよ羽虫が》


《結合》


フォーナがそう唱えるとハオの身体が

修復される。


ハオ

【なっ...何が起きて...】


《さて。交代だ。代われ》


リッチキング

【なんだお前.....何故吹き飛んだはずの

身体が再生されている?】


フォーナ

《再生ではない。結合だ。吹き飛んだ身体を

再結合しただけだよ。まぁ今から死ぬ

お前には関係ない。さよなら雑魚》


《破壊》


リッチキング

【なんだ?何も起きんぞ】


フォーナ

《あ、間違えた。まだ無理か。》


《分解》


刹那、リッチキングの身体が崩壊する


リッチキング

【なっ、なんだこれは!?

私はリッチキングだぞ!?高位の魔...】


リッチキングは跡形もなく消え去った。


《さて.....》


--------------------


ハオ

【ん、ん?ここは】


フォーナ

《目が覚めたか?雑魚野郎》


ハオ

【お前が助けてくれたのか?】


フォーナ

《お前が死んだら私も死ぬみたいだからな。

ほんと。雑魚の器に入れやがってあのカス》


ハオ

【よくわからないけど、ありがとう】


フォーナ

《気持ちわりぃ。感謝される筋合いはない》


ハオ

【まぁ、そう言うなよ!僕はハオ

宜しくな、フォーナ。】


フォーナ

《フォーナ様だ馬鹿野郎》


《さて、私の相棒も連れてくぞ》


ハオ

【相棒?】


フォーナ

《お前が死の湖に飛んだのはラッキーだった。

さぁ、迎え来たぞ。ハク》


《我が魔力に応えよ。幻獣種 白虎》


刹那、全ての霧が晴れ

湖から眩い光が放たれる


ハオ

【なんだ!?何も見えない!】






???

【フォーナ様 おかえりなさいませ。】


フォーナ

《よぉ、白虎。元気だったか?》


白虎

【ここは魔素が濃すぎて気づいたら

200年ほど眠りについておりました。

浄化しますので少しお待ちを】


白虎の首の冠を催したネックレスが光る


白虎

【聖魔法 浄化の光】


死の湖から魔物が消滅する


白虎

【お待たせしました。フォーナ様

そちらの方は?】


フォーナ

《ハオってんだ。私の新たな器だよ》


白虎

【そうでしたか。ハオ様宜しくお願いします。

では契約を。】


ハオ

【ちょっと、待ってくれよ!!

お前らなんなんだ?なんで虎が

喋るんだよ!骸骨も攻撃してくるし

ほんとわけわかんねぇよ......】


フォーナ

《まぁ、混乱するのも無理ないか。

わかった。先に話しをしよう》


----------------


フォーナの話しによると

こちらの世界では7柱の神の代行者を

探しておりハオがフォーナの器として

選ばれたということらしい。


神は元々人間から神に成ったとされ

白虎はフォーナが生前相棒として

共に戦った仲間だということ。


ハオもレオンを探してこの世界に

来たことを伝えた。ノアの存在は伏せた。


ハオ

【話しが飛躍しすぎてまだ信じられ

ないけど、あんなの見たら信じるしか

ないよな。。。】


フォーナ

《とりあえずそのレオンとかいう小僧に

会いたいなら王立魔法学院を目指せ。

お前と同じ転生者なら必ずそこへ向かうはず

丁度いい。お前もそこで魔法を学べ。》


《あと私は霊体だからな。白虎の新しい

相棒はお前だ。契約してやってくれ》


ハオ

【どうすればいいんだ??】


フォーナ

《簡単だ。お前の魔力を流してやれ

あと名前をつけてやれば完了だ。》


ハオ

【魔力ってどうすれば】


ハオの脳内に知らないはずの記憶が流れる


ハオは無意識にそっと白虎に手をかざす


【お前は今日からハクだ。宜しくな、ハク】


ハク

【ハオ様。宜しくお願い致します。】






フォーナ

《(頑張れよ。ハオ)》


..........

.......

...


ハクの背中に乗り王立魔法学院を目指す道中




ハク

【ハオ様。空から人が降ってきます。】


ハオ

【へ?そんなことあるの!?】


【ってうわ!ほんとだ!

ハク、助けられるか?】


ハク

【もちろんです。行きますね。】



孝一郎

【うお!?】


白虎は孝一郎を咥え地上へと降りた


孝一郎

【助かったああああああ】


【どなたが存じ上げませんが

ありがとうございました!!】


ハオ

【危ないところでしたね。助かってよかった】


孝一郎

【本当にありがとうございました!

僕は赤城孝一郎です!貴方は??】


ハオ

【ふふ。名乗るほどでもありませんよ。

またご縁があればどこかで】


ハクの首のネックレスが少し

光った気がした。


........

.....

..



白虎

【なぜ名乗らなかったんですか ハオ様】


ハオ

【彼とはまたいずれ会うからね。

今はまだいいんだよ。それよりハク

急ごう。死の匂いがする】


-------------------



旅館【天月】


イーベルの町を支える温泉旅館だ。

大森林エルダを越え魔法都市バーツへ向かう

冒険者が多く宿泊している。

また温泉も引かれており住民の憩いの場として

古くから愛される名旅館だ。


そんな天月で女将が働くようになり

半年の月日が流れた。


財政が傾いていたイーベルの町を

女将は見事にたった半年で立て直していた。

直感と得意の交渉術でイーベルの町や

旅館、名産であるココラの実を

リブランディングしイーベルという町を

世界中に広めた。


今ではココラの実や女将の接客を求め

世界中から多くの種族が訪れるようになった。


そんな数々の偉業を成し遂げた女将は

国王から【龍神の巫女】の2つ名を授かった。

人種族が2つ名を授かるのは700年振りだった。


感情が欠落していた女将だったが

多くの種族の温かさに触れ、取り戻していった。


..........

.......

....



フユネ

【女将。貴方が来てもう半年になるのね。】


女将

【はい。フユネさんのおかげで町にも

馴染めました。本当にありがとうございます】


フユネ

【お礼を言うのはこちらよ。

町を立て直してくれて本当にありがとう。

貴女なら.....】


女将

【どうかしましたか?】


フユネ

【前に女将が元の世界のことを

話してくれたでしょう?あれからずっと

考えていたの。元の世界に帰りたくない?】


女将

【はい。帰りたくないです。

私の故郷はここ、イーベルの町ですから】


女将は優しく微笑みながら答えた




フユネ

【女将。貴女なら、龍神様の力を

コントロールできるかもしれない。】


女将

【龍神様?コントロール?なんのことです?】


フユネ

【少し長くなるわよ....】


...........

........

.....


女将はフユネからこの世界のことを

より詳しく聞かされた。


強大な闇が迫っていること。

それを払い除けるには7柱の神の

代理人が集い力を合わせなければ

いけないということ。


イーベル町の奥にある

滝壺。さらにその奥には龍神王の

髪飾りが祀られている。

龍神王に認められた者はその力を

扱うことが出来る。


そして、フユネは女将にその可能性を

見出し相談したのだった。

そして、女将の直感もまたそれが

自分にとって必要なことなんだと告げていた。


なにより、女将は身元も分からないような

自分を拾ってくれたこの町が大好きだった。

そんな町に脅威が迫っているのなら

自分が守りたいと心から思っていた。



女将

【フユネさん。案内して下さい。】



フユネ

【覚悟が決まりましたね。

女将。貴女なら大丈夫です。】



.........

.....

..



ザアアァァァァァァァァァァァ


滝壺は人の侵入を拒むかのように

大きな音を立て流々と存在している


フユネ

【龍神様 お通し下さい】


パァァァン


滝が割れる。奥には洞窟が続いている


2人は中へと進んだ。



洞窟の中は静かだった。


何故か外の滝の音すら聞こえない。



フユネの魔法で足元は明るく照らされていた。


10分ほど進むと扉が現れた。



そして扉へ女将が手をかざす



女将の魔力が扉へと流れる


ズゥゥゥゥゥゥウン


何百年開かれて居なかったであろう扉は

鈍い音を立てながら開いた。



中には台座があった。


そして、その上には薄暗い洞窟には

相応しくないほど眩い光を放っている

髪飾りがあった。



女将が髪飾りを手に取ると光はより

大きくなる。


そして、女将はおそるおそる

自分の髪へと髪飾りを運ぶ。



《待ちわびたぞ。龍神の巫女よ。》



女将

【誰?】



《龍神 ライラだ。》


《何百年待っただろうか

お前に力をさずけよう。》


不思議な感覚だ。

どこか懐かしいような、はじめてなのに

知ってるいるような、形容し難い感覚だが

不思議と女将は心地よかった。


《少し眠る。女将。また》




女将

【適応したみたいです。よかった。

フユネさん、あ】










ザシュ






【ゴファッ....ゴフッ】






1本の剣が女将の心臓を貫いた






女将

【ガハッ....あ....あな.......た...は】










レオン

【そんな危険なもの手にしちゃ

ダメじゃないか】





19話 完


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次回20話 勇者







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