第11話 11th 光宙
社会は残酷だ。学生とは違い
一人一人に確かな責任が生まれる。
義務教育を受け、本人若しくは親の意向で
大学を卒業し社会人となるのが一般的だ。
真面目に大学へ通い勉学に励み
やりたいことをみつけ就職する人は
どれくらいいるだろうか。
やりたいことも無く毎日バイトに明け暮れ
授業をサボり遊び呆けている大学生も
多いだろう。意外とそんな学生もしっかり
就職して良い給料を貰っていたりする。
逆に真面目に勉学へと励んできた
大学生が中々就職につけないこともある。
お金を払い学校へ通っていた時と違い
社会はお金を貰いその責務を果たすことで
成り立っている。
そしてパワハラやセクハラ、最近では
アルハラ等様々なハラスメントも起こる。
そしてやっと思いで希望の職に就いたと
思えば配属先が劣悪な環境で早期に
辞職してしまう人も少なくない。
そう。社会で恵まれた環境でやっていけるのは
ほんの、ほんの一握りなのだ。
そんな中、俺光宙もその他大多数と
同じく社会で苦しめられていた。
---------------
光宙は生まれてからずっと平凡だった。
いわゆる凡人と言う奴だ。
特に目立つこともなく、成績も真ん中
運動神経も可もなく不可もなくだった。
友達も普通にいたし部活動も
サッカー部で先輩も後輩もいた。
本当の凡人だった。
努力は人並みにするが、人より伸びる
訳でもなくて普通に生きてきた。
大学も奨学金で入ったが、やりたいことも
特に見つからず4年間は平凡に過ぎていき
就職先もなんとなくで決めた。
漣財閥の子会社である有限会社山中設備へ
入社した。従業員45人ほどの企業で
主に水道管系の部品を扱う会社の
営業職として採用された。
今でこそ、大企業の社員は会社に守られて
いるが中小企業の社員はまだまだ
会社には守って貰えずパワハラな横行する。
ずっと平凡に生きてきた光宙は
営業でも目立った成績を残せるわけもなく
ノルマ達成に向けて足を動かしていた。
気づけば入社して3年目だった。
光宙
【くそぉ!今日もアポイントとれなかった。
このまま帰ったらまた課長に怒られる...】
【でも仕方ないか、、、はぁ。やだなぁ】
【ただいま戻りました!!】
リョウナ課長
【成果は?もちろんあるんだろうな?】
光宙
【い、いや、、すすすすみません。
今日は成果ありませんでした、、】
課長
【今日【は】?毎日だろうが!!!!!!】
バンッと机を叩く
光宙
【す、すみません、明日は必ず、、】
課長
【あのさぁ。お前、明日は明日はって
毎日口だけなのもいい加減にしろよ?
お前の後輩は成績上げてるじゃないか
お前ほんとなんなの?なにができるの?
三年経ってそれってほんと終わってんな】
光宙
【ほ、ほほ、ほんとすすみせまん】
課長
【謝罪とかいらないから。アポイント
アーーポーーイーーンーートーー!!!!
おら!今から行ってこいや!!!】
光宙
【課長、も、もう21時ですしすみません
今日は母の誕生日でして、、、あの】
課長
【は?だから何?成果のないやつが
権利主張するわけ?お前どこまで
舐めてるんだよwwwwww
頭悪いんだから体くらい動かせよ
成果でるまで帰るなよ。わかったな】
光宙
【わ、わかりました。すすすぐいきます】
............
........
....
光宙
【はぁ。こんな時間にアポイントなんて
取れるわけないよ。。。
もう黙って帰っちゃおうかな、、】
【いや、だめだ。あと少しだけ頑張ろう】
時刻は24:05
光宙
【あぁ。また今日もダメだった。
明日も8時に出勤だし帰ったらすぐ寝...】
【ああ!!!母さんの誕生日、、、
もう過ぎてるよ、、、泣
ケーキも予約してたのに、、、、】
【帰ったら謝らないと】
自宅へと帰る光宙
ガチャ
母親を起こさないようにそっと扉を開ける。
光宙は母子家庭だった。
幼い頃に両親が離婚し、母親が女手1つで
育ててくれた。
母
【今日遅かったわね。おかえりなさい。】
光宙
【か、母さん!?明日も仕事だろ!?
なんで起きてるんだよ!!】
母
【何言ってるの。あんたが頑張ってるのに
母さんが先に寝てちゃダメでしょ。
今日お疲れ様。さっ、ご飯するわね】
光宙
【母さん!!!そ、その、、、ごめん。】
母
【どうしたんだい?】
光宙
【昨日、母さんの誕生日だったのに
俺仕事のせいで遅くなっちゃって
ケーキも予約してたのに、それで
その、間に合わなくて、ごめん】
母
【ったく。何言ってんのよあんたは。
母さんはね、あんたが毎日無事に
帰ってきてくれればそれでいいんだよ。
あんたの顔見るだけで安心するからさ】
光宙
【母さん、、ありがとう、、、、
でも俺頑張ってるんだ!!!
もっと成績上げて母さんに楽させて
あげるから!もう少しまってて!!】
母
【はいはい!いつになるかしらねぇ
ほんと一丁前に気遣って。いいのよ
あんたは自分のためにお金稼いで
好きなことに使って幸せになりなさい】
【ほら、ご飯できたわよ。もう遅いから
早く食べてお風呂入って寝なさい!】
光宙
【うん!ありがとう。頂きます!!】
..........
......
...
そしてまた朝がやってくる。
朝なんて来なければいいのに。
寝たらリセット?そんな甘いことはない。
寝てる間だけ辛いことを忘れ起きれば思い出す
その感覚が嫌でろくな睡眠もとれない。
朝なんてこなければいいのに。
追い詰められた社会人なんてそんなもんだ
光宙
【かぁさんもう仕事行ったのか。
俺も行かないと、、、、はぁ、、、】
........
.....
..
光宙
【お、おはようございます】
課長
【おい。お前今日契約なかったら
もう明日から来なくていいよ】
光宙
【え、え?】
課長
【朝からキョドってんなよ気持ち悪い
あのな?成果に見合った対価が支払われる
のは当たり前だよな?お前、成果は?
ないよな?なのになんで給料もらうの?】
光宙
【そ、それは基本給が....】
課長
【基本給がなに?利益を生まない人間に
給料払うのおかしいと思わない?
昨日も母親の誕生日ってお前いくつだよ
その歳でよく母親の誕生日だからーとか
言えたな?マザコンかよ恥ずかしいww
みんなもそう思うよな?wwww】
光宙
【か、母さんは関係ありません。】
課長
【お?なに?お前反抗してんの?俺に】
光宙
【ひっ、、い、いえそんなつもりは、、】
課長
【だったらよおおおお!!!!!!!
契約くらいすぐにとってこいや!!!!
おら!!!あと8時間以内に契約ないと
お前クビだから!!!!!はやくいけ!!】
..........
.......
....
光宙は必死に走り回った。
母親に楽させると言った手前、クビになったと
なれば恥ずかしくて目も当てられない。
そん感じていた光宙は必死に営業した。
結果、なんと契約をとることができた。
久々の契約に心が踊った。
これで課長に怒られなくて済む。
褒めてもらえるかな。と浮かれていた
光宙
【ただいま戻りました!!!課長!!】
課長
【契約取れたのか?お前】
光宙
【はい!とれました!!!
こちら注文書です!】
課長
【一...十.....百..............は?
35万?お前本気で言ってる?】
光宙
【え、あっ、は、ははい!】
課長
【あのさぁ。お前固定費いくら?
今までの累計契約数何件?累計金額は?
お前が会社にいるだけで利益が
減ってる自覚ある??なぁクズ社員
もういいよお前クビ。はいクビぃ!】
光宙
【え、ででも、契約とればクビじゃ
ないって今朝、、】
課長
【うん?言ったよ?でも今変えた
こんなカスみてぇな金額の契約
いらねぇんだよ。社会のゴミが
とっととやめちまえ】
光宙
【ででも、社長はそんなこと
許可するんでしょうか!!!】
課長
【うん?もう捺印もらってるから
君の退職届。はい、さよならあ
ママァって泣きついたら?wwww
養ってもらえよwwままにwww】
光宙
【あっ、、、あああ、ああああああ】
課長
【うわ、きもっ!はやくでてけよwww】
光宙
【お、おせ、おせわに、、なりました、、】
光宙はもう言い返す気力もなかった。
そして帰路につく。
母さんにはまだ言えないや。。。
............
........
....
ガチャ
光宙
【ただいまぁ......】
・・・
光宙
【母さん?ただいま】
返事がない
【まだ仕事から帰ってないのか】
ネクタイを緩め、顔を洗う
【はぁ。疲れた。もうダメだぁ
いっその事死んでしまおうかな
ってないない。母さん残して
死ねるかよ。、馬鹿だな俺
また仕事探せばいっか。
あっ、そうだ。ケーキ買ってきたんだ】
【母さん喜ぶかな。ロウソクも立てちゃお】
スーツを脱ぎ、寝室へと向かう
寝室の電気をつける
【え?】
【母さん?は、っえああ、えあああ】
【なん.......で.......っ.......】
【あ...あっ..ああ....ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁああああああああああああああぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああ】
母親は寝室で首を吊っていた
【どうしてなにがだれがなんでなんでなんだよおおおおおおああああああああああ】
母親の足元に一通の手紙があった
《光宙へ
いつも母さんのためにってありがとうね。
母さんほんとにあんたの母親でよかったよ。
母さんね、実はずっと前に会社クビになったんだ。でもあんたにそんな事伝えたら心配するだろ?だから言えなかったんだ。
母さんね、実は心療内科に通っててね
パニック障害だったんだ。もう2年かな。
一向に良くならなくて、でもあんたの顔
みたら、頑張ってるあんたを見たらさ
言い出せなかったんだ。
あとね、母さんが勤めてた会社
実はあんたと同じグループなんだ。
リョウナ課長って人にこっ酷くやられてね
母さんイジメに耐えられなかった。
弱い母さんで最低な母さんでごめんね。
毎日辛かった。ほんとうに。でも
あんたの顔を見たら幸せだったのも事実だよ。
でももう心が限界になってしまった。
あんたを置いて先に逝く母ちゃんを許してね。
あ、そうだ。ケーキ美味しかったよ。
最後にあんたからお祝いしてもらえて
母さん嬉しかった。
ずっと大好きだったよ光宙。ありがとう
母さんより》
母親の足元には綺麗に食べた後の
ケーキのお皿と、勿体なくて食べれなかった
メッセージプレートが置かれていた
光宙
【母さん。ごめん。ほんとにごめん。
俺もう無理だ。そっちに行くよ】
ガラガラ
バルコニーの扉を開ける
はぁ
つまんない人生だった。
最悪でクソみたいな人生。
凡人として生まれて無能として死ぬ
俺らしいな。ははは
リョウナ。許せないけどもう
復讐する気力もないよ
さようなら。母さん。待ってて
サッ
ゴパァン
《転生を開始します》
《スキル 開闢ノ勇者を獲得しました》
《スキル 破滅の王を獲得しました》
《スキル 精霊王の末裔を獲得しました》
光宙
【ん。なんだ、これ。。。】
《本当に死ぬのですか?
やり残したことはありませんか》
【ないよ。もういいんだ。
死なせてくれ】
《最愛の母を殺した人を許せますか?》
【・・・】
《許せますか?》
【許せない。。。許せない!!!!!!!】
《5分差し上げます。では、現世へ》
.............
..........
.....
リョウナ課長
【ぷはぁ。酔っ払ったあ。いやぁ
今日のあいつの顔最高だったなぁww
あのマザコン野郎wwwww
親子揃ってクビだよクビwwぎゃははww】
光宙
【課長。こんばんは。】
リョウナ課長
【あ?おまえぇ。なにしてんだぁ?
とっとと失せろクズ社員!!!!】
光宙
【謝ってください。それでいいです】
リョウナ課長
【謝るだぁ?おまえあたまわりぃwww
母親も息子だけは面倒みてくれって
たのんでたよwいやぁ傑作だったなあ】
光宙
【わかりました。もういいです。さようなら】
《破滅魔法 魔剣降誕》
禍々しいオーラの魔剣が召喚される
ブンッ
スパッ
ゴトッ
リョウナ課長
【?.......う、ううううでがああああああ】
光宙
【うるさい】
ブンッ
スパッ スパッ スパッ
魔剣は手足を全て切断した
リョウナ課長
【・・・】意識を失っている
光宙
【聖癒魔法 エクストラヒール】
手足が元通りになった
リョウナ課長
【はっ、、元に、、?、、えっ、あっ】
時間にして3分
計2006回
四肢を切断しエクストラヒールを
繰り返した。17回を過ぎた頃には
リョウナの精神は崩壊していた。
スパッ
最後に首を落とした。
光宙
【はぁ。虚無感しかないな。心が晴れない。
母さん。。。俺、母さんをなんとかして
生き返らせるよ。そのためだったら
悪魔にでもなるよ。こんなの間違ってる】
そろそろ時間か
ヒュン
《おかえりなさい。》
【あぁ。時間をくれてありがとう】
【少しづつ前世の記憶が戻ってきたよ】
《ゆっくりで大丈夫ですよ
◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎光宙様》
《では、次の転生先で。》
【さぁ。はじめようか。◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎を】
第11話 完
-------------
次回第12話 小葉武
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます