第5話 5th 倍丸
その怪物は心の中にいた
倍丸は2つ歳の離れた妹と
両親とボロアパートで暮らしていた。
妹の名前は万鹿(ばんび)
明るく元気な性格の女の子だ。
無職の父親は昼間から飲んだくれており
母親は働き詰めで家をあけることが多かった。
倍丸は面倒見の良い兄で妹の面倒を
よく見ていた。
父親は酔うと暴力を振るう。
倍丸は万鹿を庇い、いつもアザだらけに
なるまで殴られていた。
それを見て見ぬふりする母親。
倍丸は家にいる時間が地獄だった。
毎日毎日殴られ、日に日にアザも
増えていった。
万鹿
【おにぃ、、、いつもごめんね、、
私のせいでおにぃがいたいいたいして】
倍丸
【にいちゃんは平気だから気にすんな】
優しい兄は感情を押し殺し、妹へは
ずっと笑顔を向けていた。
しかし、当時6歳の倍丸には到底
耐えられるようなものではなく、いつも
1人で隠れて泣いていた。
小学校へ上がった倍丸は、妹を家に
1人にすることだけが不安だった。
学校が終わると、友達とも遊ばず毎日
走って自宅へと帰り妹の無事を確認した。
倍丸
【ばんび!大丈夫か?今日なにも
されなかったか!?】
万鹿
【 うん!わ、私は大丈夫だから
おにぃはおともだちとあそびなよ!】
倍丸
【見たところアザもないし、、、よかった。
なにかあったらおにぃちゃんに言うんだぞ!】
万鹿
【う、うん!ありがとうおにぃ】
ある日の授業中、倍丸は発熱し学校を
早退することになった。先生に家まで
送ってもらい自宅のドアを開ける。
倍丸
【ただいま!ばんび? 父さん?】
声がしない。いつもなら玄関まで
走ってくる万鹿だがこの日は来なかった。
不審におもった倍丸はランドセルを
放り投げ、居間へと走る。
底には全裸で横たわる万鹿の姿と
全裸の父親の姿があった。
父
【おう、ヒック 帰ってたのか!ヒック
倍丸。こいつ動かねえんだよ ヒック
お前なんとかしろよ】
倍丸
【ば、ばんび?大丈夫?お、おい!
返事しろよ!!】
万鹿の身体は冷たくなっていた。
【と、父さん、、ばんびになにかしたの?】
父
【いや?いつもみたいに少し殴ったり
首を絞めたりしたらなんか
急に動かなくなったんだよ】
倍丸
【は?な、どういうこと?でもアザなんて
ひとつもなかったし、え、えあああ】
父
【そうそう。こいつお前と違ってよ
母親に似て賢いんだよ多分。
身体触らせてくれたら殴らないって
言ったらいつも大人しくなるんだよ】
まだ8歳の倍丸にはその言葉の意味は
よくわからなかった。
妹が死んだ。父親に殺された。
今までの暴力により積み重なったストレスを
爆発させるにはあまりにも大きすぎる
出来事だった
倍丸
【ああああああああああああああああああ】
父
【うるせぇなクソガキ!!!!!!!!!】
ドンッ
父親が倍丸を突き飛ばす
倍丸
【.....てやる........殺してやる!!!!!!】
倍丸は台所から刃物を取り出し父親へと
向かっていく
倍丸
【死ね!!!!!!!!!】
父
【ガキのお前になにができんだよ】
ドンッ 倍丸を蹴り飛ばす
【お前実の親に向かってなにしてんだ?
もういいわ。お前も死んどけや】
ガチャ
母親が帰宅する
母
【なにしてるの?あなた達】
倍丸
【はぁはぁ...か、母さん、、こいつが
ばんびを殺したんだ!!!!】
母
【そう。それで?】
倍丸
【え?】
母
【殺されるようなことしたんでしょ?
そしたら仕方ないわよ。ね?あなた】
父
【がはははは。そうだぞ倍丸
ばんびが悪いんだぞ】
倍丸
【なっ、、、そ、そんな、、、、】
次の瞬間、倍丸の脳内へ何かが語りかけてきた
《殺したいですか?》
だ、だれ?だれなの?
《そのクズ2人を殺したいですか?》
殺したい。
《では、私と代わりなさい。》
そこで、倍丸の意識は途絶えた。
目を覚ますとすっかり夜になり
部屋は真っ暗だった。
倍丸
【ん、、んー?僕寝てたのか、、、
あっ、妹が!!!!!!!!】
電気をつける倍丸
そこには血の海と共に、両親の死体が
横たわっていた。
しかし倍丸はその光景を見ても
不思議と冷静だった。
倍丸
【僕がやったんだね。それより万鹿の
遺体がない。。。】
《代わってくれてありがとう。警察
呼んで置いたから、そのままそこにいて
君はまだ8歳だから大丈夫。》
君は誰なの?
《僕はもう1人の君だよ。君が困ったら
君を助けるよ。汚れ仕事は僕がやる》
そっか。助けてくれたんだね。
ありがとう。
そして、警察がかけつけ倍丸は保護された。
取り調べの中でわかった事だが
僕には妹が存在しなかった。
いや、この世界から存在が消されていた。
この一連の事件は、殺人犯が住居へ
侵入し逃亡したものとして処理された。
その後倍丸は親戚のもとへ引き取られた。
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8年後
16歳になった倍丸高校に通うも
友達はおらず孤独な青年だった。
部活動もせず学校が終わるとすぐ
家に帰る日々を送っていた。
倍丸
【ばんび.....どこに行ったんだよ
にいちゃんずっと独りぼっちだよ。】
引き取ってくれた親戚も倍丸のことを
呪われていると煙たがっていた。
倍丸
【ぼくはこのままずっと1人なのかな。】
【いいなぁ。みんな幸せそうで。
家族連れをみるとイライラしてしまう。
ぼくはこんなにも不幸なのに。
神様はなんでこんなに不平等なんだろう】
《お前が神になればいいじゃないか》
【また君か。無理だよ。そもそも神様が
なんなのかわからないし。】
《選別》
【選別?どういうこと?】
《神様は選別する人のことさ。
この世に要らない人間は消せばいい》
【消すって、殺すってこと?】
《そうだ。お前はあのクズの両親の元へ
生まれてこれて幸せだったか?あんな両親
いないほうが幸せだっただろ?
世の中にはお前よりも辛い人間が沢山いる。
そんな人達に救いの手を差し伸べたいと
思わないか?》
《お前のような不幸な人間を増やさないよう》
【・・・】
《神様はいないんだよ。でもお前が神になって
不幸な人を助ける事はできるよ。
だって俺がついてるんだからな。》
【そうだね。僕やるよ。】
《わかった。では今日から少し鍛えようか。
俺の殺しの全てを教えてやろう》
その後、倍丸は身体を鍛え医学を学び
人体の構造を完璧に理解した。
心の中の自分から暗殺術も教わった。
《さぁ、今日からだ。今日からはじめよう
この世界の神様を》
【僕、できるかな】
《あぁ。心を殺せ。誰かのために。》
【わかった。行こう。】
..
その後、日本全国で殺人事件が相次いだ。
殺された人達はみんな犯罪者やクズばかりだった。そしてこの一連の連続殺人事件は
全て同一犯による犯行とされたが証拠1つ
残さない倍丸の完璧な暗殺術により
事件が解決することはなかった。
そして、数え切れない程の人間を殺した
倍丸の心は崩壊していた。
【あははははははは
みんな、みんなこれで幸せだァ
ぼくは神様になったんだ。みんな、みんな
ぼくが助けてあげるからね】
《お前は正しいことをしている。
だからそのまま進むんだ》
【ねぇ。最近さ、ぼくすごく楽しいんだ。
人の死ってこんなにも美しいんだね
もっと人が死ぬところを見たいよ】
《お前は神様なんだ。生かすも殺すも
全部お前に決める権利がある。
お前が殺したいなら殺せばいい。
神のすることは全て正しいのだから》
【ははっ。そうだよね。ぼくが正しいんだ。
ハァハァ。もう、抑えきれないよ】
自我を失った倍丸は無差別に大量の人を
殺した。人を助けるためではなく自分の
欲望を満たす為、快楽殺人鬼となった。
倍丸
【あぁああ、気持ちいい。最高だ
次は誰を殺そうか。あっ、あそこに
女がいる。あいつにしようあいつを殺そう
ハァハァ ききききみ、こんな夜道で
なにをしてるの?ぼぼぼぼぼくがががが
たすけてあげるよおあああ】
???
【困っていないので大丈夫です。】
倍丸
【は?僕を拒むの?僕神様なんだよ???
おまえ、生意気だなァ ハァハァ】
???
【? 用がないなら失礼します】
倍丸
【死ねええええええええええ】
倍丸が女へと刃物を向ける
倍丸の刃物はオリジナルで紙よりも薄いが
岩を切断できるほどの切れ味を誇る
???
【はぁ。。。疲れてるのに。】
【時空間魔法 バルハラ】
突如 時空が歪み その歪みから無数の
剣が現れる
倍丸
【そ、それはなんなの?】
???
【さようなら。名前も知らない殺人鬼さん】
ザシュ ザシュ ザシュ ザシュ ザシュ
ザシュ ザシュ ザシュザシュ ザシュ ザシュ
ザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュ
倍丸は原型を留めないほど細切れにされた。
???
【《死者転生》】
???
【どんなに悲しくて辛い過去があっても
人を殺ていい権利なんて誰にもないの。
次の世界では正しく生きられるといいね】
【私は《ノア》またどこかで会いましょう】
.........
......
..
ぼく、死んだのか。。。
《転生を開始します》
な、なに?転生?
《固有スキル 暗殺者の王を獲得》
うっ、頭が痛い、、、
薄れゆく意識の中、別の声がした。
<ぃ、、ちゃん。。。おに、、、ぃ
、、、の森で、、、待っ、、、、、>
第5話 完
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次回 第6話 6th 万鹿
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