1日目「繰り返される夢」

名古屋市街


ピピピッ、ピピピッ


信弥しんや「ハッ...!」


アラームの音で信弥は目が覚めた。額には脂汗が湧き出ており、荒い呼吸を繰り返していた。


信弥「朝...か...」


スマホから鳴り響くアラームを止めて起き上がる。その時、一瞬めまいがした。


信弥「また同じ夢...春休みからずっとこれだよ...」


うーん、と首を傾げながらベッドから降りようとしたタイミングで、母親が部屋に入ってきた。


母「信弥、早く支度しないと遅刻するわよ」

信弥「分かってるよ母さん...今着替えるから...」


春休みが明け、今日から2年生だ。さっさとブレザーに着替えて持ち物を整えるとリビングへと向かった。


母「ダラダラしてたんだから休みボケでもしたんでしょ」

信弥「違ぇよ...ちょっと夢見が悪かっただけだし。もう俺出るから」

母「ちょっと!朝ごはんは?」

信弥「お腹空いてないからいいよ。どうせ昼で帰りだし」

母「もう...気をつけてね」


外に出てカーポートの横にある自転車を出す。

学校は家から自転車で20分くらいの場所にあるのだ。


信弥「うおっ!?あっぶねぇなあの車...。朝からビュンビュン飛ばすじゃねえかよ」


名古屋走りによろけながらも自転車を走らせた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おはよぉ〜」

「うーす」


生徒指導の先生の挨拶をやや気怠げに返しながら校門を過ぎる。駐輪場に自転車を止めて昇降口へ向かうと、既に多くの生徒が掲示されたクラス名簿に集まっていた。


「ねぇねぇ何組なった〜?」

「私1組〜」

「えー嘘ぉ!私3組なんだけど〜」

「ええ〜!」


クラスが別れてうなだれる生徒もいれば


「俺5組!」

「マジか!俺も5組だった!」

「うぇ〜い!」


同じクラスになってテンションが高まる生徒もいた。


信弥「えーっと...俺のクラスは...」


1組から順に見ていくと、自分の名前が2組の名簿にあるのを見つけた。


信弥「俺は2組か...」


???「信弥!何組だった?」

信弥「おう薬師寺!俺2組だったぜ」


彼の名は【薬師寺やくしじ 研太けんた】。小学校から信弥と仲が良い幼なじみだ。とにかく頭の切れる少年で、医者でもないのにやたら医学に詳しい事から、将来名医になるのではと噂されたりもしている。


研太「そっか、僕も2組だったよ」

信弥「おっ!マジか!今年もよろしくな!」


下駄箱で上履きに履き替えて教室へと向かった。自分の席を確認してそこに座る。五十音順な事もあって、窓側に近い席だった。


しばらくするとホームルームの始まりを告げるチャイムが鳴り、先生が部屋に入ってくる。


信弥 (今年は女の先生か...)


そう心の中で思っていると、先生の自己紹介が始まった。


「はい、今日から1年間このクラスの担任をさせていただく【三谷】と申します。よろしくお願いします」


自己紹介の最中、ふと廊下側を見ると一つだけ座席が空いていた。初日から欠席だろうか?


そう考えていた時だった。


三谷先生「実はこのクラスに、今年転校してきた生徒がいますので紹介したいと思います。では入ってきてください」


先生がそう言うと、少しウェーブのかかったセミロング、黒髪でいかにも清楚で大人しそうな女子生徒が中に入ってきた。


黒板には「森乃 蘭」と書かれていた。


蘭「初めまして。京都から転校してきました、【森乃もりの らん】と言います。よろしくお願いします」


彼女...蘭は深々と頭を下げると、先生に案内されて空いていた座席へ腰掛けた。


先生「はい、それじゃあ───」


先生が今後の予定などを説明したり、プリントを配布したりしていく。


そんな中信弥は、彼女の名前に妙な既視感を抱いていた───

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あの日願った恋の続きを 白玉ヤコ @Siratama85

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