第12話 リルアの妹登場!
「ん。いいんじゃないか。じゃ、行くか」
なんとなく気恥ずかしくて少しそっぽを向きながら答えた。
「えーそれだけ? “リルアかわいいぞ。俺のタイプだ、嫁にくるか” とか、ないのー?」
そんな俺にリルアは不服そうだ。
「なんでそうなるんだよ」
「えー? リルアがクウガにかわいいって言われたいから」
「……リルア、さっきから気になってたけど、俺のこと好きなの?」
あまりにもあからさまなリルアの言い方に、つい聞いてしまった。けれど。
「え? うん。好き。ごはんくれるし。素手でカユガセーダ倒せるくらい強いし。ちゅー気持ちいし。エネルギーおいしいし。控えめに言って、最高に好き」
「……そうか」
……恋愛的な意味の好きとは違うようだ。要するに、便利とかメリットがあるとか、そんな感じか。
「ん。ちゅーする?」
なのに、リルアは地球人との感覚とは違っているようだ。これは真に受けないようにしないと。今朝失恋したばかりだというのに、また失恋を味わうのはごめんだ。
「なんでそうなるんだよ。ほら、ドラッグストア行くぞ」
だから俺は軽くあしらったのだけど。
「え、麻薬売買の現場を取り押さえに行くのか!?」
なんだよ、麻薬売買って。ああ、ドラッグを麻薬だと思ったのか。
「違う。そのドラッグじゃない。虫よけ売ってる店に行くだけ」
「なんだ。紛らわしいな」
……俺からしてみれば、リルアの方が紛らわしいがな。『ちゅーする?』とか、マジで勘違いしかねないぞ。
……けど、リルアにとってのキスは、人間みたいな恋愛的な意味合いのキスではないんだろうな。
俺の恋愛はいつもそうだ。いいなと思って、仲良くなって、いい感じになってきたと思っても、結局いい人だとか友達だとしか見られていなくて失恋して終わる。
……だから、もうしばらく恋愛なんてこりごりだ。
◇
玄関で、当たり前のようにまた、こめかみにピコットを撃って靴を履いた姿になったリルアと共に、俺はドラッグストアに向かって歩き始めた。
二人の姿が、はたから見ればすっかりリンクコーデになっているなんてことには、まるで気付かずに。
「クウガ、クウガ、ちょっと待って、靴の中なんか入った」
「え?」
リルアの声に足を止めた。その時。
――カッキ――――――ン
ドサッ
何かが飛んできて俺の背中にぶつかって堕ちた。
「いってぇぇぇぇぇ。え、何?? ……柿? なんで柿がカキ―ンて飛んできて俺の背中に突撃して潰れてるの」
思わず俺にぶつかったそれに目をやってそう嘆くと……
<いったぁぁぁぁぁぁい。ちょっとぉ、急に止まんないでよ。“宇宙船は急には止まれない” なんだからね!!>
そこには柿の中から出てくる小さな女の子の姿があって、同時に脳内に声が響いた。
「へ!? なに、柿からまた変なの出て来たんだけど……!?」
<ちょっと、変なのとは何よ!>
俺の言葉にその小さな少女がぷんぷんと頬を膨らませた。その時。
「あー!! ラルカ!! どしたの??」
リルアが割って入って来た。
「“ラルカ”? なに、リルアの知り合い??」
「うん。リルアの妹だ」
……リルアには妹がいたのか。にしても……メロンの次は柿って……どうなってんだよ。
<ちょっと、リルア。せっかく人が心配して来てあげたのに、どしたのはないでしょ? リルアのメロメロナルル号の通信が途絶えたから、不時着でもしたのかと予備の宇宙船持って迎えに来たのに。まさか私の宇宙船が壊れるなんて……>
リルアの妹がそう嘆いた時。
――ブ――ン
再び不穏な羽音が聞こえた。
<え!?今カユガセーダの音しなかった!? 嘘よね? いやよ?>
「あ! ラルカ! おでこ!」
<え、おでこ!?>
見ればラルカと呼ばれたその小さな女の子のおでこには蚊が止まっていて、プクーッと腫れはじめた。
「ラ、ラルカ!! 大丈夫か!? おでこ……すごい腫れてる……」
「え、まさか妹も刺されたのか? ちょ、大丈夫か、ふら付いてるけど……立てるか!?」
動揺するリルアと俺の前で。
<う……来たばかりなのに、……なんという、醜、態……>
おでこを押さえながら、ラルカがパタッとその場に倒れた。
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