第11話 リルアの生着替え(?)
「へいへい、それはどうも。あ、そうだ。さっき寝言でマシュマロみたいな名前も言ってたから、リルアにこれ買ってみたけど……食うか?」
俺はレジ袋の中から買ってきたマシュマロを取り出しリルアに見せた。
「え? なにそれー! 食べる!」
「……意外と雑食なのかな。ほれ」
リルアは目をキラキラとさせながら食い気味で言ってきたので、俺はマシュマロを手渡そうとしたのだけど。
「食べさせてー! あーん♡」
今回もリルアは食べさせてと口を大きくあけた。
「またかよ……じゃあ、口に入れるぞ。はい」
何の警戒心も見せないリルアの口の中に、俺はマシュマロを食べさせた。
「あーむ。あむあむあむ……うっまあああああい!! リルアこれ好き!! これくれるクウガも好き!!」
マシュマロを食べて、すっかりご機嫌なリルアは無邪気な笑顔だ。さっき俺の事を嫌いとか言ったクセに。現金なやつだ。
「……ん、おう。そりゃよかった」
俺も買って来たおにぎりを食べながら適当に答えると。
「これ食べてる時の感触、クウガとちゅーした時みたいなのも好き」
リルアはまた変なことを言い出した。
「んぁ?? ……そうか」
……リルアのやつ、変なこと思い出させるなよ。確かにリルアの唇、マシュマロみたいに気持ちよかったけど……。
思い出すとまた胸の中がむず痒くなってきた。
いかん。忘れよ。あれは断じてキスなんかじゃない。ただのエネルギーの受け渡しだ。
俺は気持ちを切り替えるためにパンっと自分の両足を叩くと、口調を変えてリルアに話しかけた。
「よし、飯も食ったし虫よけ買いに行くかぁ!」
「おお!! 行くー!!」
リルアは片腕を高々と掲げて行く気満々になっている。
「……と思ったけど、リルアのその服、なんとかならないのか」
けれどふと、リルアの服装が気になって躊躇した。リルアの服装は全身メタリックのキラキラした格好なのだ。これではさすがに目立って仕方がないと思う。
「えー? この服だめ? ピカピカしてかわいいだろ? んーでも、クウガが好きじゃないならリルア着替える。どんなのが好きだ。言え」
好意的なのか高圧的なのか分からない口調で、リルアはまたぐいっと俺の顔に自分の顔を近づけながら言って来る。……さっきから思ってたけど、距離感バグり過ぎじゃないのか。
「え、言えと言われても……言葉で言うのは難しいぞ。でも確かにリルアの服、形はかわいいんだよな。色だけ変えてくれたらそれでいいんだが……あ、俺の服の色でいいや。上が俺のTシャツの色、下が俺のデニムの色だったら問題ない」
「よし、クウガの服の色だな? あんまりリルアの星ではなじみがないけど……理解した。任せろ」
リルアはドンと胸を叩いてドヤ顔をする。
泣いたり拗ねたりドヤ顔したり、忙しいやつめ。
そんな事を思っていると、ふとある事に気付いた。
「あれ? リルア靴は? 履いてなかったっけ、靴」
「……あ、そういえばいつの間にかどっかいった。クウガの家に連れてきてもらう途中で落としたのかもしれない。でも問題ない」
「……そうか。で? 理解したとか言ってるけど、まさか身体大きくした時みたいにまた自分のこと撃って着替えるなんてこと、しないよな?」
「ふふふ。そのまさかだ」
リルアは得意のドヤ顔をすると、太ももに収めていたケースからピストルを抜き取った。
「まじかよ。……リルアの星はもうそんなに文明が進んでるのに、殺虫剤ないとか意味分からんのだけど」
「まぁ、リルアの星のモノにも得意不得意があるんじゃよ」
「……そうか」
そんな会話をしている間にリルアはピコットのダイヤルを回す。
――カチカチカチカチ
「これでよし。じゃあ、リルアの
そしてリルアはまるでショータイムだと言わんばかりに高々とピストルを掲げると、ピコットを自分のコメカミに当てて引き金を引いた。
ピコ――――ン
その瞬間にまばゆい光に包まれて、一瞬にしてリルアの生着替えは完了していた。
――これを生着替えと言っていいのかは分からないけれど。
「じゃーん! どうだ! リルアかわいい!? 好き? クウガの好みになった?」
そこにはすっかり人間ぽい服装になったリルアの姿。
その姿に一瞬俺の心臓がドクりと脈を打った。
……やっば、服がメタリックじゃなくなっただけなのに、リルアのやつ益々かわいい。これ、完全に俺のタイプなんだけど。……でも、これは黙っとこ。
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