第8話 襲われるリルア
……
…………
「ん、ん………あれ? クウガ??」
「え、クウガ?? どこ……いないの??」
クウガの気配がなくなったからか、リルアが起きた。
そして、寝ぼける目を擦りながら、クウガを探して部屋の中を歩き回る。
「ねぇ、くうがぁ……え、うそ……いない?? リルア、お腹すいたとか言ったから……嫌われちゃった??」
目にうっすらと涙を滲ませるリルア。その時。
——ブーン
聞いたことのある嫌な音が聞こえた。
「え、え、え、やだ、この音、え、うそ、え、やだ、うそだよね!?」
——そして少しの静寂の後に、また。
——ブーン
再び嫌な羽音がした。
「え! やだ!! カユガセーダ!! やだ!! やだやだやだ!! なんでカユガセーダいんの!! まだ時期じゃないはずじゃん!! リルア、ちゃんと調べたもん!! まだいないはずだもん!!」
——ブーン
リルアの声にも構うことなく今度は別の方向から羽音がする。
「やだ!! こっち来ないで!! いやあああ!! あ、そうだ、クウガの武器!! ……えい!! えい!! やあ!!」
リルアは殺虫剤を手に取ると、蚊に向けてブンブンと缶を振り回した。
宇宙人のリルアは殺虫剤の本来の使い方を知らないのだ。
「なんで当たんないの、どーやって使うの!! やだ!! うう、やだああああ!!!! いや、きらい、こわい! クウガああああ!!!!!!」
子供のように泣き始めるリルアの声が部屋中に響く。その時。
——カンカンカンカン
——ドタドタドタ
微かに誰かがアパートの外階段を駆け上がり、玄関に向かって走ってくる足音が聞こえてきた。
——ガチャ
そして、勢いよく玄関の鍵を開ける音と共に、クウガの声が響く。
「リルア!! どした!! 大丈夫か!?」
「ク、クウガああああ……!!」
その声を聞いて、リルアは力が抜けたようにペタンと地べたに座り込んだ。
「なに、どした!!」
「カユガセーダ!! カユガセーダいる!!」
「え!? カ、カユ!?」
涙顔のリルアの元に急いで駆け寄るクウガ。
——ブーン
その時クウガの目の前に現れた一匹の蚊をクウガは視認した。
「こいつか!?」
——パンッ!!!!
そして勢いよく両手で蚊を仕留めた。
「え……? くうが……やっつけたの!? ……武器も使わずに……?? ……え……くうが……すご……い」
その光景に驚いて呆然としているリルアの顔は、明らかに大泣きした後で。そんなリルアにクウガは話し掛ける。
「リルア、大丈夫か。ごめん……そんな泣くほど怖い思いすると思わなくて……ひとりにして、ごめん」
謝りながら、ついクウガはリルアの頭を撫でた。
「……やだ。やだぁ、クウガの、ばか、クウガの、ばかあああああああ。リルア、こわかった。クウガきらい。リルアひとりにするからきらいぃぃぃぃ」
するとリルアはまた大泣きしながらクウガに抱きついたのだった。
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