第6話 リルアとアメ
あー、なんなんだよ、リルアのやつ。何言われるのかと思って焦ったじゃねーか。いや、俺も俺だよ。何焦ってんだよ。
あー、くそ、なんだよこの気持ち。恥ずかし……
俺は左手で頭を掻いてから、右手でリルアの背中をポンポンとする。
「リルア。腹減ったの分かったから、ちょっとどいてくれ。重い」
本当は重さなんて感じなかったけど、気恥ずかしさからそんな事を言った。
「えっごはんっごはんくれんの? やったぁ!!」
けれどリルアはそんな言葉気にする素振りもなく、ガバッと顔を上げて喜んだ。
「あーはいはい。で? お前、地球のもんとか食べれんの?」
「んー、わかんない。けど、お腹すいた」
「いつも何食ってんの?」
「んー、ケピパルテとか、パルマルルとか、あ! アメダーマル、大好きっ!」
顎に人差し指を当てて空中を見ながら答えていたリルアは、途中で何か思いついたようにパッと表情を明るく変えた。
けれど、全く聞いたことのない単語に、それらがどんなものなのか想像すらつかない。
「はぁ? 意味わかんねーし。けど最後のはアメ玉っぽいな。アメ玉なわけねーけど、試しに食ってみるか? ちょうど持ってるから。ほれ」
俺はたまたま持っていたアメをポケットから取り出すと、リルアに渡した。
「んー? なぁにーこれ、食べてみよーっと。あーん」
するとリルアは早速それを食べてみようとしたのだけど。
「あー! ちょっと待てっ! 袋ごと食うなっ。ちょ、貸してみろっ。こうやって、袋から出して食べるんだ。ほら。食ってみろ」
袋のまま食べようとしたものだから、慌てて止めて、袋からアメを取り出しリルアに差し出した。
「わっ、なにこれ、裸にしたら可愛いっ。食べさせてー。あーん」
するとリルアは目を閉じて小さな口をあーんと開けた。
「え? あぁ。ほら」
俺は戸惑いつつも、小さく開けられたリルアの口の中に、コトンとアメ玉を落とした。
なんだよ、この感覚。
アメ玉を口に含んだリルアは、んー? と首を
「あぁ、口の中で転がしながら舐めるんだよ。リルアの星には、こーゆーのないのか?」
「…………」
俺の言葉に無言のリルア。アメを食べるのに真剣らしい。
「うまいか?」
「………………」
やっぱり無言のリルア。ほっぺをアメでポコンと膨らませたり反対の頬へやったりしながら、嬉しそうに微笑んだ。どうやら気に入ったらしい。
リルアの口の中のアメがほとんどなくなった頃、だんだんリルアの瞼が重くなってきて、こっくりこっくりと舟漕ぎをし始めた。
「え? おい? リルア、どーした。 眠いのか?」
「んうー、なんか、たべたらねむたくなってきたぁ〜」
「え、ちょっと待て、アメ玉一個くらいじゃ腹の足しにもならんだろう?」
「ん〜? なぁに? リルア、ねむい。……ねるっ……」
――パタッ……
リルアはそのままパタンと真横に倒れ、すーっと眠ってしまった。
え、ウソだろぉ?? おい、待てよ、寝るかぁ? どんだけ自由なんだよ、リルアのやつ……
戸惑う俺にはお構いなしに、リルアはスヤスヤと眠りこけている。起きてる時より一層あどけない無垢な顔。
……眠ってたら、物静かな可憐な少女に見えるのになと思う。
宇宙人てのは始めて見たが、やっぱり独特の服装だなぁと思う。
姿形は人間ぽくはなったものの、服の色は相変わらずメタリックなピカピカした色で、肌にピタッとした生地の、ノースリーブとショートパンツのつなぎ。
腰についているベルトには小物入れみたいなカバンがつけられていて、太ももに巻かれたベルトには、さっきのピストルが刺さったケースがついている。
左手首には時計のような物。すべて身につけて身軽に動けるようにしているのだろうか。
「あーあーもう、こんなところで寝て……宇宙人て風邪ひいたりしないのかな。仕方ない。布団でも敷いてやるか。まぁ……宇宙船で長旅して、あんなに足バタバタさせてたんだから疲れたんだろう」
俺は押入れから布団を出して、ちゃぶ台の横に敷く。そして。
「リルア? 布団敷いたから、運ぶぞ?」
俺はリルアを抱き上げた。
――ヒョイッ
……軽い。リルアの身体は想像以上に軽くて、俺はリルアを抱き上げたまましばらく驚いていた。
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