第5話 恥ずかしがるリルア

「クウガ、可愛いっ」


 リルアは俺を見つめたままへにゃっと笑い、リルアの左手までもが俺の頬に触れる。そして、両頬を挟まれたまま、グイッと俺の顔へと自分の顔を乗り出した。


 らしていた俺の視線も反射的にリルアの方へと向き、リルアの瞳に吸い込まれるように視線を外せなくなってしまった。



「……なぁ、クウガ。リルアの事……キライなのか? せっかく大きくなったのに、なんで視線逸らそうとするの」



 強気だった声が途中から弱々しくなると、俺の両頬からパッとリルアの手が離れた。そして

 


 ふわっ――――――――



 リルアは俺の両肩に腕を伸ばして抱きついた。


「……キライになったら……ヤダ。泣くぞ?」


 俺の右耳にリルアの弱々しい声が聞こえる。


 や、ばい。完全にやばい。


 俺にふわりと抱きつくリルアの身体は、なんか柔らかくて、華奢で、甘い香りがして。


 しかもさっきまで強気な発言だったクセに、急に女の子らしくて。


 あーなんなんだ。どうしたらいいんだ。


 心臓だけがやたらバクバク煩くて、言葉も出てこない。

 

 すると。


「う、わぁぁぁぁぁん……」


 リルアが本当に泣き出した。


「え、ちょっ、ええ!?」


「だって、クウガが話しかけても答えてくれないんだもん。リルア、クウガに嫌われたのか?」


「ち、違うっ。キ、キライになったわけじゃなくてっ、その……あー、なんだ」


 俺のたどたどしい声に、リルアは抱きつく身体をバッと離して俺の顔を見つめる。

 そして――

 

「ほんと??」


 涙顔をパッと明るい笑顔に変えて、俺の身体に勢いよく抱きついた。



「ちょ、待って、そんな勢いよく抱きついたら……倒れ……る」



 ガッタ————ン!!!!



 反動でリルアに押し倒されたような形になってしまった。けれどリルアはそんなことお構いなしで


「ホントか? リルア、クウガに嫌われてないのか? そっか。よかったぁ」


 リルアは嬉しそうに俺の身体にぎゅうっと抱きついた。


 俺の頬にリルアの柔らかい頬が重なる。


 なに、この状況……俺の心臓が……やばいんだけど!!


 破裂しそうな心臓の音とは対照的に、リルアは俺の耳元で恥ずかしそうに囁いた。



「クウガぁ、あのさ、リルアね…… えと、その……」


「な、なに」


 俺は息を殺して返事した。


 な、なんだこの展開。リ、リルアは一体何を言うつもりなんだっ


「あ……笑う、なよ? リ、リルアね、あの、その……」


「うん……」


 俺は固唾を飲んでリルアの言葉の続きを待った。するとリルアの言葉の続きは――


「お、……ぉなか……すいた……っ」


 言い切った後、リルアは恥ずかしそうに俺の肩に顔を埋めた。

 

 俺の頬に当たるリルアの頬は、今は熱を帯びていて。たぶん、今、リルアの顔が赤いんだろうなと思う。


「え、腹減ったの?」


「う、……うん」


 おい、恥ずかしがるとこ……おかしいだろうー!!

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