episode3

 日焼け対策に裏の桜の木の下を選んのだが、木陰は少し寒い。

 彩は証書を片手に詩音を待つ。卒業式プリを撮りにいこうと約束しているのだ。待たされているものの、嫌な気持ちには一切ならない。社交的な性格の詩音は、顔が広く、今日は色んな人と別れを惜しまなければならない。時間がかかるのはしょうがないのだ。友達の少ない彩は、子供の頃はそれに苛立ち、嫉妬もしていたが、今はもう分別がつく年齢だ。人付き合いの苦手な自分が、無理して輪を広めてもしょうがない。大切な人との関係を大切に続けることができたらそれでいい。

 好きなバンドのアルバムを一周再生した頃、肩を叩かれた。

「お待たせ、長引いちゃって、ごめんね」

 走ってやってきたのだろう。詩音は息を切らしてそう言った。

「大丈夫。詩音こそしっかり挨拶終わらせれた?」

「うん。完璧。本当に待ってくれてありがとう」

「じゃ、いこ!」

「いこいこ!」

 詩音の方へ一歩踏み出すと、春の日差しがあたりを包み、彩は目を細めた。

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「おいしー!内装もおしゃれだしあとで写真撮ろうよ」

プリを撮り終わり、流行りの韓国料理の店でご飯を食べることにした。流行っているだけあって、とても味が良い。彩が少し明るく振る舞っているのはずっと詩音が意味ありげな視線を送ってくるからだ。

「デザートにアイス頼んじゃおうかなー、詩音どうする?」

 詩音はメニュー表を開かない。

「彩、大丈夫?」

「別れたこと?今度こそ続くと思ってたのにショックだよー」

出来るだけ軽く言ったつもりだが、ちゃんと笑えているのだろうか。

 詩音はズッとジンジャーエールを飲み干して言った。

「あんまり悲しくないんでしょ。最近の彩振られ待ちしてたじゃん」

 やはり詩音はお見通しのようだ。こんなに何でも分かってくれる親友がありがたくもあり、煩わしくもある。

「私から振るなんてできない」

「だよね。彩のタイミングで別れてたら誰も ニンスタ、一ヶ月記念のストーリーあげれて なかったよ」

そう言って詩音は彩の頭上あたりを見つめ、何度もゆっくり頷く。

「そうじゃなくて、私から告白してる し、、」

「知らなかった。そんな理由だったの?」

 彩の回答に詩音は本当に驚いた様子だ。私が言い出したら後味悪くなってしまうだろうから、とまでは言えなかった。

「高校生の恋愛なんてこんなもんだよ。詩音こそ今日は彼氏と会う予定だったでしょ。どうしたのよ」

攻守が逆転し、今度は詩音が目を逸らす番だ。

「えっと、ね」

 彼氏のこととなると、普段のきっぱりした物言いと比べて信じられないほど歯切れが悪くなる。

「ほらほら、話しちゃいなー」

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