ある鼻炎の男

早川コータ

第1話 鼻炎編〜やすお〜

これは鼻炎に苦しむある男の物語。


『フレッシュストロベリーとバナナのアイスラテをください。』


まさかこの1杯がやすおのその後の運命を変えるとはその時は思ってもいなかった。


確実にこの1杯は彼の運命を変えたのだ。


やすおはその日朝から困惑していた。


鼻がどん詰まりだったからだ。


鷲っ鼻のやすおにとって鼻炎は鬼門の症状だ。


その日やすおは夜に気乗りはしなかったがどうしても参加しなくては行けない飲み会があったのだ(彼にも気乗りしない日だってあるのだ)。


そんな憂鬱な気分を取り除こうと飲み会に行く前に、最近四ツ谷の駅前に新しくできたカフェに入ったのだが、


そこでやすおの目に飛び込んできたのが


『フレッシュストロベリーとバナナのアイスラテ』


だったのだ。


クリっとした目が特徴的な、美人、と言うよりも愛嬌のあるステキな女性店員がブラックボードに広告を書いていた。


その女性店員がやすおに気づくと彼女はニッコリと笑い


『新商品です、とってもおすすめで私も大好きです』


そう笑顔で声をかけられると


『いい人がグッチを着て歩いてる』


と言われるぐらい人が良いやすおには断るという選択肢はなかった。


注文してしっかりしたソファーにカラダを沈めて数分立つと例のラテが届いた。


キリッと冷えたアイスラテだ『悪くない』


やすおはそう呟いた。


普段はキリッと冷えたハイネケンしか飲まないやすおだが、たまにはアイスラテを、しかもフレッシュな生のイチゴとバナナがたっぷり入ったラテだって飲むのだ。


しかししばらくするとやすおのカラダに異変が起きた。そう、鼻炎が悪化して鼻がさらにどん詰まりになったのだ。


必死に口呼吸をしながら、やすおはあることを思い出した。


『イチゴやバナナはヒスタミンの放出の引き金となりアレルギー鼻炎を悪化させることがある』


という事実を。


しかも火が通っていないフレッシュな状態だ。それがこのラテの特徴なのだ。当然アレルギーは悪化する。


鼻がどん詰まりとなり、


薄れゆく意識の中で、やすおはあることに思いを馳せていた。


『今夜の飲み会は休もう』


これでアルコールと油っこい食べ物が加わるとやすおの鼻は二度と通ることはないであろう。


やすおは最後の力を振り絞り、カフェからでると四ツ谷の駅に向かい歩き始めた。


『鼻炎中に冷たいもの、ナマの物は控えよう』そう小さくつぶやくとやすおは一人家路を急いだ。



※この物語はフィクションであり実在する人物などとは一切関係ありません。


鼻炎持ちの方、アレルギー体質の方は生の果物、野菜、魚などの摂りすぎと冷たいもの、油っこいものには気をつけようね。

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ある鼻炎の男 早川コータ @kota-haya

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