4.朝ご飯の時間!地獄のご飯は予想外だった!!

「おはようー!!」


樋口さんに起こされる。

まだ眠いなあと思いながら、なんでもう起きなきゃいけないんだろうと思いながら。


「まだ寝たいと思ってるだろ。

でもな、朝ごはんの時間なんだ。

時間ってのは決まってるんだ。

ほら、顔を洗って、行かなきゃ」


ふぅ。そうなのか。

早速これから、地獄の毎日が始まるって訳だ。

しんどいな。辛いな。

ゴミを避けながら、洗面台まで行く。

バシャバシャと顔を洗う。

水が冷たい。

こんなに冷たい水があるのだろうか、そう思えるほど冷たい。

僕の顔が熱すぎるのか?いや、そんな事はないだろう。

タオルで早く拭かないと、風邪を引いてしまいそうだ。


「タオル、ありますか?」

「ああ、おまえの腕だ」

「腕?」

「無いってことだよ。腕の服で拭くんだ。

物が全然無くてな、すまない」


いやいや、こんなに物が散乱しているのに。

ゴミなのか。全部ゴミなのか。

とりあえず、腕で顔を拭いた。


「よし、外に出るぞ!!」





一緒に扉を開け、エレベーターに乗り込み、外に出る。

朝の筈だが、世界は暗闇だ。

夜だから暗い訳ではなかったようだ。


「一日中、暗いんですか?」

「ああ、そうだな。

電灯の光を頼りに生きているんだ」


電灯は点々とある。

だから、なんとか生活は出来ているのだろう。


「ちょっと歩くぞ。

まあ、2、3分だ」


樋口さんに着いていく。

段々と、賑わいが見えていく。





「よし、ここが食事場だ。

俺達の区域の連中は、全員ここに勢揃いする。

まあ、200人くらいだな。

200人が、集まるんだ」


人が沢山居る。

全員、悪人なのだろうか。

地獄で懺悔して、生活している内に、更生しているのだろうか。

学校でも、友達が居なくて、みんなに怯えて生きていた。

いまも、怖いなあ、と、思いつつ。

樋口さんがいるから大丈夫。

もう、そう思えていた。

それほど、他が怖くて、樋口さんへの頼りが浮き彫りになっているのだろう。


「どの席に座ってもいいぞ」


机が沢山並んでいて、椅子の前にお皿が置いてある。

みんな、同じ食べ物だが、見た事ないような内容だ。


「まあ、じゃあ、ここに座るか。

食べ物見て、びっくりしてるだろ。

生まれる前にはこんなの無かったからな。

特別な動物、野菜、魚で出来ているんだ」


茶色い岩のような物の頂点に穴が空いていて、そこにストローが刺さっている。


「この岩みたいなのはなんですか?」


「ああ、これはな、ストロー吸うと、凄い甘い、ジャリジャリした物体が口の中に入っていく。

粉砕したビーフジャーキーみたいな歯応えだけど、この世の物とは思えないほど甘いんだ。

それで、全部吸い切ったら、この岩みたいなのを手づかみで食べる。

これは、表面がピリピリして辛いが、中は豚肉に近い味だな。

ピリピリした辛さがあるから、タレはいらないってもんだ」


美味しそう。

こんなサービスが地獄にもあるのか。





「それでは、ご飯を始めましょう!!!!!」


遠くから声がする。

女性の声だが、とてもドスが効いている。


「いただきます!!」


「いただきます!!!!!」


女性の声の後に、一斉にみんなが、いただきますと言う。

僕も、少し遅れて言った。




「よし、食べよう!!」


ストローを吸う。

確かに、物凄く甘い。

甘すぎて、頭の中がキンキンする。

例えがおかしいが、この甘さの中に体全てが吸い込まれてしまいそう。

それほどまでに、甘さがとても強力だ。


「びっくりしたか?

変な食べ物が沢山出てくるからな。まあ、期待しとけって」


僕はどんどん吸い込み、どんどん美味しさが増えていき、癖になる味だな、と思った。


そして、全て吸い終わり、岩を千切って食べる。

うん。ピリピリが程よく、お肉な歯応えと味も美味しい。


「食事の時間は30分だ。

早く食べ終わったら、食器を返して、帰ってもいい。

まあ、みんな30分もかからず、さっさと食べ終わるけど、残って喋ってる事が多いな」


僕も、もうすぐ食べ終わる。

美味しくて、あっという間だ。

周りから、ご馳走様の声が聞こえてくる。


「食べ終わったら、必ず、ご馳走様と言うんだ。

言わなかったら、どうなるか。

まあ、何も起きないんだが、それでも、言った方が良い。

感謝が大切だ」


僕も食べ終わり、満足感と共に、ご馳走様と言う。


「ご馳走様でした」


「うん、いいぞ。

食べるの早いな」


僕は、樋口さんが食べ終わるまで、ぼんやりと待ち続けた。

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