第64話 スタンプカード!
日中は、出入りする一般の人達に色々な乾物を勧めている。
ある時何処かの料理人さんが、土下座して弟子入りを頼んで来た。
しかし俺はセトさんの例があるので気軽には弟子入りをさせない。
料理人さんはトボトボと街に戻って行った。
「かわいそうに、領主の所のパン焼き担当さんだね、硬いパンしか出来なくて領主に首を言い渡されているそうよ」
教えてくれたのは、最初の晩にパンとビールを買ってくれた小綺麗な女性で名前はマユユさん。
此処の国の名前はブロウデス王国、最初に来たスベリエ王国の隣の隣の隣だと?
何処かで国境も覚えなく2カ国完全素通りしたみたいだ。
その国のソフィリア侯爵領の中のルモンデと言う街の外だ。
「領主も毎日高いパンを一家で食べていたら財産を食い尽くすって言って、パン焼き担当さんにどうにかしろと言っている見たいね」
「そんな所に弊害が出てしまったんだ、これは困った売るのを止めるかな!」
俺が独り言を言うと、マユユさんはパンを食べるのも止めて、俺に縋り付いてくる。
「お願い、此処でたまに食べるパンが私の生き甲斐なの、夕方に着けば門が閉まっても安心して居られる場所は此処しか無いのよ、冒険者達でさえ門よりも此処の方が大事だって言っているしね」
へー初耳、冒険者さん達は俺の方が街よりも大事なんだ、それはありがたい事です。
でも彼が首になるのは可哀想だよね、かと言って此処にあるあの粉は俺が日頃使う分しかない、それでもアップアップなんだ。
「マユユさんは、商人なんだよね、此処にあるジュースの元のリンゴってこの街にあるの?」
「果物のリンゴかい、市場に行けば何処かの国の物はあるかもしれないね、ただ果実は高いはずだよ」
「金貨1枚ぐらい?」
「冗談を言わないでよ、そんなに高く買ってくれたら私は今頃大富豪よ! 高々銅貨1枚よ、たまに安いと2個でその値段ね」
しかし困ったな、俺は街には入れない買う事も出来ないな、俺はマユユさんをチラ見!
更にチラ見、チラチラ。
「あゝ分かったわよ、銀貨1枚よこしな、今頼んで来てやるから」
そう言って門に向かっていく、何か騎士さんと話している。
そして話し終えたのか、俺の店に戻ってくる。
「騎士達に頼んでおいたよ、最低5個は此処に持ってこいとね、ただ寄りはいいから銀貨を渡しといたから、誰か飲みに来るついでに持ってくるはずよ、じゃあまたね」
マユユさんは昼のうどんを食べて、街と反対方向に馬車を走らせて行った。
夕方、ビールを飲みに来た騎士さんがリンゴを持ってきてくれた。
数は20個で多くないかと聞くと、どうやらマユユさんがパンの新たな美味しい作り方を俺が考えているらしい!
協力すれば街中に美味しいパンが溢れて、もっと安く腹一杯食べれると言ったみたいだ!
若い騎士さんは薄給で、間食として俺のパンは中々食べれない、先輩が少しお金を出してくれて、りんごを多く買ってきたとの事!
ならば、騎士さんには、10個買ったら1個オマケしてあげると言っておいた。
この時に、スタンプカードを思い出して、これに一個買う時に俺の判子を押すから、10個になった時にパンを一個ただであげると言っておいたよ。
この異世界に初めてスタンプカードが出来た瞬間だ。
ただ、色々なお客さんにスタンプカードの事がバレてサービスのオマケが増えて俺が苦労し始めた、早く安くて美味いパンを作らないとね。
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