第62話 逃亡後始めての開店!

お昼はブラブラと列を見ながら過ごす、たまに先はどの冒険者と同じ様に近づいて来た人がいるが、丁重に断っておくと同時に少し離れた木陰まで避難した。


段々と列が小さくなり、所々にテントが張られていく、門に近い方が安全なのか密集している。


そして時間は午後5時頃、門が閉められると列に並んだ人達からため息が聞こえる。

厳格に閉められた門の内には騎士達が並んでいる。


ならばと俺は店を出す、そして中からテーブルと椅子を出して開店準備。

たとえ盗賊や魔物が来てもバリアーでどうにかなるので、外にいる人達相手に何かを売ってみようと思う。


まずは蕎麦かウドンかなと思うけど、食べたことのない人達には売れないだろう。

ならばと、ジャムパンやアンパンを売ることにする。


飲み物はリンゴジュースと、ビールも出してしまおうか!

値段は日本の10倍の値段、それだけの価値はあるはずだ。


お店が出て来たことで、遠巻きに見ていた人達が騒ぎ出して、門の中から騎士が3名ほどが、俺の店の方にかけてくる。


「おい貴様、何を出している!」

「ええと店ですけど、何か悪んでしょうか?」

「イヤ門の前の連中が騒いだので、見に来ただけだ! ただこれ程の物を入れるアイテムBOXを、みんなが初めて見たんで騒いだから来てみただけだ」

2度も同じ事を言っている、相当な騒動をしてしまったらしい。


「お詫びにこれを上げます、試食にどうぞ」

俺はジャムパンとあんぱんを、10個ずつ入れた手提げを渡す。


「イチゴのジャムが入っているパンとアンと言って小豆と言う穀物を砂糖で煮た物を入れています、良ければ皆さんで分けてください、毒は心配しなくてもいいですからね」

袋から無造作に一個を取り出して、4等分にしてその内の1つを俺が食べる。

残りを3人で味見をしてもらう。


「ほう美味いな、それにパンも柔らかい」

「この黒いのが小豆という穀物を砂糖で煮たアンと言う物か」

「値段はいくらですかね」

俺は答える。


「銀貨一枚です、貴重な物を使ってますのでね」

値段に驚いた兵士達。


「これは賄賂になるのか!」

「そうだぞ返さないと」

「でも一口食べてしまったぞ、どうする?」

慌てる3人だが、俺は言ってあげる。


「私は此処で当分の間は商売をしますのでよろしくお願いします、私は身分証が有りませんので街には入れません、ですので騎士さん達には、この店で売っている物を宣伝して欲しいのですよ」

俺はニコニコ顔で3人に語りかける。


「賄賂では無くて、宣伝だと」

「身分証の手心で街に入るのでは無くて、宣伝ね」

「ならば、貰っていくか、余り戻るのが遅いと本隊が出て来てしまうのでね、ではこれは貰っていく、一晩気をつけてくれ!」


そう言って3人の騎士さんは戻っていく。

戻った門の周りでは3人が説明をしてくれている様だ。


そんな事を見ているとまた小綺麗な人がやって来る。

「何を売っているんです」

「ええ穀物や果物を砂糖で煮た物を詰めたパンを売っていますが少しお高いですよ」


「因みに幾らなの?」

「パンは一個銀貨1枚で2種類ありますよ、飲み物もリンゴジュースがコップ一杯やはり銀貨一枚です。それとエールに似たビールと言う物が銀貨5枚ですよ」


「かなりお高いけど、外では仕方ありませんね、ではパンを一種類ずつとエールを一杯お願いします」

彼女は代金の銀貨7枚を渡してくれたので、奥からパンを皿に盛りコップを持ってきてビールの栓を抜いてあげる。


「ではお注ぎしますね、コップは少し傾けて下さい」

俺はビールを注いであげる、そして残った瓶を置いていく。


「店主、残りは下げないのか?」

「その瓶一本の値段ですよ、ではごゆっくりと」

俺はまた店の入り口に腰掛ける、女の人は最初の一口を付けたらコップを一気に喉に流し込む。

「美味い、まさかこれ程の酒が此処で飲めるとは、門が閉まった時は絶望したが、天国は此処に合ったなハハハ」


どうやら彼女は笑い上戸らしい。


その後も何人かの人が来たけど、値段の高さに自分のテントに戻る人の方が多い。

数少ないお客さんは、パンの柔らかさと、ビールの美味しさを絶賛して行った。

ただビールは1人2本までとした。


明日からは違う物も売ろうと俺は思った。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る