第36話 怒りの執事長!


その頃の調理場では。


「料理長、そろそろ迎えが来ますね、スピーチ大丈夫ですか?」

「あゝ慣れている、それにあの料理ウッ・ドーンの凄さを見ただろう、みんなウッと唾を飲み、心臓がドーンとなっている事だ、そろそろ落ち着いてきて、執事長が迎えに来るだろう、みんなの絶賛する声が聞こえる様だ」


すると調理場の入り口に、執事長がやって来る。

「料理長来ましたよ、早く行かないと」


料理長は調理場の入り口に向かっている、それを無視して執事長は調理場の中を一周して、木箱や鉄箱を覗き、また入り口の料理長の元に来る。


「執事長、伯爵様は喜んでいましたか、会場は落ち着きましたか? これから会場でウッ・ドーンの説明をさせてもらいます」

料理長が入り口から出ようとすると、執事長は肩を捕まえて調理場に戻す。


「貴方には失望しました!」

「はー、何か変な事が耳に入って来ましたけど! 聞き間違いですか?」

うすら笑いの料理長と執事長。


「もう一度言いますよ料理長、旦那様は料理長に失望したと言ってます、大体此処に来る前に言いましたよね、この食材は3日分だと」

「それは来る馬車の中で聞いていましたが、仕方ありませんよね、新作のウッ・ドーンを作ったのですから、手抜きは出来ませんよ、そうだよなみんな」

「はい料理長」

「そうです料理長」

「全力でウッ・ドーンを作りました」

各料理人も相槌を打ってくる。


執事長は、後ろの料理人達を睨みつける。

「明日からの2日間の料理はどの様にするのですか?塩を水で薄めて、お茶会は砂糖水ですか、夕飯は雑草の炒め物を、お客様にお出しすると旦那様に言うんですか、この私が! 嫌ですよ料理長さんが言って下さいね!」

料理長は考え込んで執事長に言う。


「ほら早馬で麓の街まで買いに行かせましょう、それならば間に合うでしょう」

「何の冗談ですか?100名分をどうやって此処に持ってくるんです?」

流石に料理長、その食材の多さを長年の勘で分かってしまう、そこに執事長の追い討ち。


「馬の1頭2頭で持ってこられる量ではありませんよ、まして夜中に伯爵家の馬車で行っても店は開いてないですよね、そして充分な量が無いかもしれませんね」


執事長の言葉に、これ以上は何も言えなくなる、料理長と料理人。


「此処が戦地でなくて良かったですね、本当なら死罪ですよ!兵士を餓死させた料理人としてね」

更に顔が青くなる料理人達。


「後で本当のウドンが残ったら、お届けして上げます、此処を綺麗にして待っていなさい」


そう言って執事長は出て行く。


料理長は思った、何処で間違えたかと、あの時後ろで喋っていた奴らがいたな。

「おいお前、確かウドンはこんな物と言ったよな」

「ええと記憶にありませんけど」

「確かに言った、見た瞬間にウッ食べた瞬間にドーンて天にも昇る料理だと、

大きい皿に肉や野菜を持ってドーンと出すものだとな!コイツとコイツ、アイツもだ、3人を縄で縛っておけ、縛ったら清掃をするからな」


料理長は考える、引退して確かに伯爵様の言葉で復帰したけど、良かったのかと思えて来た。


「此処にメイド長として戻って来た女房ともう一度相談しよう、死ぬのはその後だ」


料理長は知らない、隣の乾物屋は保存食のパイオニアだと言う事を!










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