第33話 ウドンは!
偉い人が気づかぬうちに、調理の時間が流れて行く。
「この鉄板の上に鍋を置いて水を沸騰させよう、そしたら乾麺を取り敢えず入れて!ある程度したら流し台のざるで水切りね、そして水道の水で締めといて!」
セトさんに、乾麺の戻しをお願いして、俺は天ぷら作り!
ネギとニンジンの野菜天と、冷凍枝豆を戻して乾燥エビと豆のかき揚げ天ぷらを作る。
この椎茸を短時間で戻す方法は有るけれど、勿体無いからパスしよう。
唐揚げとコロッケも少ないけどあるので、隠しトッピングで、気づいた人だけに盛ってあげよう、しかし乾物屋に山菜と油揚げが無いのは仕方ないけど、高野豆腐で誤魔化そうよ、美味しく醤油で煮れば油揚げを知らない人達はどうにかなるでしょう。
そんな事を考える、ウドンはセトさんが汗だくで頑張っている、冷房入れても全然効かない。
さてあちらの料理は、何を出すのか楽しみだ! ウドンて分かっているのかね?
「おい誰か、ウドンのレシピを知っているのか?」
かなり高齢の料理長が、周りの料理人に聞いている。
「伯爵様からは、何も文書は届いてませんけど」
「確か秘伝を教えてくれる者がいると言っていたけど、その者は誰なんだ?」
周りを見渡すが、誰も手を上げない。
(まずいぞ、さっきの奴らが秘伝を教えてくれる者だったのか)
(親父の味を盗んで、勝手に改良して美味いと言わせたら、作り方も教えないで出て行った奴だぞ)
(なら何処かで盗んだ秘伝を、それを自分達が作った事にしてるのか!ふざけた奴らだ)
(そんな物をあの料理長に教えたら、料理長の沽券に関わるから黙っていようぜ)
(それに追い出したのがバレたら、やはりクビだから黙っていよう)
(でもどうするか、ウドンてわかるか?)
(ウッ、ドーンて豪華な料理だろう伯爵様の料理だから)
「おいそこのお前達、何を話しているんだ?」
「はい料理長、このウドンて料理を俺は聞いた事が有ります、見た瞬間ウッと言葉が止まり、食べた瞬間にドーンと天にも登る気分になる豪華な食事です!
恐らくは大きい皿に肉や野菜を盛って、ドーンと出すのが良いかと!」
料理長は考えるけど、誰もウドンを知らないならば、正解は豪華に盛った料理か!
「よし、みんな各々の豪華と思える料理を大皿に盛る事に!調理開始」
この熱くなった時期に盛大に盛る暑苦しい料理、果たしてこれがウドンだと言えるのかこの料理人達は分からない!
「フー、セトさん水じめしたら、各ザルに盛って冷蔵庫で冷やしといて!」
「でもまた温めるのでしょう、冷やしすぎると燃料がもった無いですよ」
「フフフ、ザル盛りと言う料理方法があるんだよ、そうだ蕎麦も茹でてあい盛りも作っておこう、今度は蕎麦も茹でて置いてね、残っても騎士団が喜んで食べるから、今日店にある分は全て料理に回して」
何人前か分からない、ウドンと蕎麦が出来上がってくる。
トッピングどうしようかね!
その頃お風呂から出たメリーナは、女騎士グリーから報告を受けている。
「えぇマサシ様が調理場から追い出されて店に戻ったの、なら夕食会の料理はどうなるのよ」
メリーナは慌てて調理場に向かう、中を見るとウドンは何処にも無い。
「料理長料理長は何処です、此処に来てください」
お嬢様に呼ばれて、あわてて料理長は前に出て来る。
「お嬢様、本日は「良いからマサシ様は?ウドンはどうなっているのよ!」
調理場の中を見渡すお嬢様に見えるのは、大皿に盛られた肉肉肉。
「はいあちらの大皿が、ウドゥン伯爵家に伝わるウッ・ドーンです、今回はこの後も更に盛りまして、王城のパーティーにも出たことのない肉肉肉料理をお出ししますね」
この言葉を聞いたメリーナは腰から床に力無く崩れる。
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