第29話 猪八戒の様なセトさん!
店の前で口論しているのは猪八戒に似た大柄の獣人だった。
背中にはリュックとかを背負って鍋やフライパンを下げている。
「だから今店主さんがいないんだ、中には入れられない」
「匂いで分かるんだ、美味い食材がある筈なんだ」
騎士さんと猪八戒が押し合いしている。
「とにかく、もう少し離れてくれ、こちらもお宅に怪我をさせたくないんでな」
「俺は食べ物の為なら命をかけている、退かぬのならどかすまでだ!」
フライパンで騎士さんを威圧する猪八戒!
「ねえ、揉めているでしょう」
メロウは俺に言ってくる、確かに止めないと店が壊れるかも知れないね。
「もしもし、そこの人暴力は反対だよ、まずは話をしましょう」
俺の方を見る猪八戒と騎士さん達。
「お前は誰だ!」
「店主さんすいません直ぐ排除しますのでお待ちください、お前直ぐ離れろ! 此処の店主さんが戻られた、それに貴族のお嬢様もいる、暴れれば不敬で牢屋行きだぞ!」
サラッと俺を紹介してくれる騎士さん。
「何だよ、ただそこの食材を見てみたかっただけなのに、店主さんお願いだ、店の中の物を見せてくれないか?」
もしかしてお客さんなの、嬉しいね見せてあげるよ!
「騎士さん達、後は俺が引き継ぐから大丈夫です、お客さんみたいなので俺が案内しますからね」
「マサシ様、暴漢ならどうするんですか?警備をさせておきましょうか?」
「メリーナさん大丈夫ですよお客様ですからね」
(またさんつけた、名前だけで呼んでほしいのに)
「何か言いました、これで失礼します、お客さん」
俺はお客さんの元に、メリーナは騎士さんに警備を任せて戻って行く。
「はじめまして、この乾物屋の店主マサシサダです!」
「お貴族様ですか、貴族様のお店なら納得出来る」
「イエイエ、普通の者です、お客様のお名前は?」
「あゝ俺か、俺の名はセトだ、流れの料理人をしている、各国で美味い物を食べて調理方法を教えて貰って、更に美味いものにするのが俺の生きがいだ、そしてこの前を通ったが、何故か俺の鼻をくすぐる匂いが流れて来たのでこの物を見たかったんだ、店の前で騒いだ事は謝るすまん」
セトさんは頭を下げてきた、料理人に悪い人は中々いない。
「でも何の匂いですかね、乾物はあまり匂いを発する事はない筈です、近くにならわかりますけどね」
「俺の鑑定は目でなくて鼻に有るんだよ、この鼻から逃げる匂いは無い!まあ臭いニオイは拒否したいがね」
「それは可哀想に、発酵食品を食べられないなんて人生損してますよ」
「ハハハ、腐らせた物に美味いものはあるわけないだろ〜、腹を壊すだけだ!」
ならばと、俺は店の中に入ってみたらし団子を持ってくる。
「これ食べてみてくれる、それから説明するからね」
セトさんはまず匂いを嗅いだ、嬉しそうに微笑んでる。
「これこれ、これの匂いだ、ここから出てきた匂いと同じだ!」
一言言って、爪楊枝でみたらし団子を頬張る。
「美味い、全て食べて良いかな?」
「どうぞ、堪能してください」
後ろでメロウが言ってくる。
「私にも下さいね!」
また俺は店の中から、みたらし団子を二つほど持って来てメロウにあげる。
そして反対の手には有る物を持って来ている。
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