第13話 ドワーフが来たよ!

何日か経った頃、荷を積んだ馬車の行列が俺の店の前で止まった。


中から、ゴッツイがずんぐりムックリの男と女が出て来た。

「メルーラ此処で良いのか?」

「あゝ此処だね、大体一軒しか無いから間違えようが無いよ!」

騎士さん達が近づき確認している、その中の1人がお嬢様を呼びに来た。


「もう来たんですか、余程大金を払ったんですね?」

「分かりませんが、来たのはダルゴンメルーラ親子です」

「よく来てくれましたね、ならば最上級の挨拶をしないといけませんね」


お嬢様は外に出て行き、綺麗なカーテシーでまず挨拶をして話を始めている。


「スージーさん、ダルゴンメルーラ親子って有名なの?」

「侯爵領では1番です、国でも5本の指に入りますね」

凄い有名人が隣の建物を建てるんだ、俺の店は目立たなくなるかな?


すると男のドワーフが、俺の家に近づいてきて

横の酒瓶置き場に近づき、走り込んで立ち止まる。


「なんだこの匂いは、新しい酒か?」

「どうしたの親父、何を騒いでいるのよ」

後から娘さんも合流してくる。


「この瓶からの匂いを嗅いでみろ、全く知らない新しいエールの匂いだ!」

ビール瓶を娘さんに渡すと、同じ様に匂いを嗅いでいる。


「本当だ、なんて良い匂いなの」

そして冷酒の空き瓶を持って匂いを嗅ぎ始める。

娘さんは、焼酎の空きペットボトルを蓋を開けて匂いを嗅いでいる。


「親父こっちのが、アルコールが強そうだぞ」

2人して空き瓶の匂い当てを始めてしまった、まだ一本しか開けてないブランデーにも手が伸びる。


その時声がして2人が振り向く、そこには少し怒ったお嬢様がいる。

「お二人ともまだ説明が終わってませんけどね、どうかしましたか?」

振り向いた2人は、お嬢様に酒瓶を突きつける。


「これは何だ!嗅いだ事がない酒の匂いだ、どうして此処にあるんだ!」

「そうよ凄く良い匂い、このお酒を貰いたいけどくれるかい!」

「キチンと書類にサインを頂いています、追加報酬はありませんよ2人とも!」


ドワーフの2人はお互いに見合わして頷く。

「関係ない、この酒を寄越さないなら仕事はしない!」

「同じく、このまま帰るがよろしいかいお嬢様!」


お嬢様はため息をついた後に、毅然とした顔になる。

「フー・・・分かりましたお帰り下さい。其方からの契約破棄ですけど違約金は取りませんから契約金は返してくださいね! ウメグル書類を書いて渡してあげて違約金無しでね」

「お嬢様よろしいのですか? 旦那様か奥様に連絡しなくても」

「良いわよ、また誰かを連れてくるだけよ、損は何も無いはずだから、困るのはこちらのドワーフさんよ!」

お嬢様は2人を睨みつける!


「良いのか俺たちが帰っても!」

「そうだよ、速攻で帰るからな!」

「結構です! その代わりその匂いの元は、永遠に口に入る事はありませんから!」

お嬢様は、背後を向いて騎士達の方に歩いていく。


慌てたドワーフは、走り込みお嬢様の前で土下座する。

「すいません、ゆるしてくれ、反省する」

「すいません、冗談ですよお嬢様頑張って作らさせて頂きます、そうだよな親父」

「あゝ本当にすまんかった、ただこの酒は建物を建てたら飲ましてもらえるか?」


お嬢様は腰に手を当てて考える、そして2人に言う。

「まあ少しは飲ませますよ、ただし料金はこちらの言い値ですからね!」

「あゝそれでいいぞ、なぁ娘よ」

「そうだよ、我らには酒の方が良いからな、ただ料金は勉強してくれるかい?」

「ええ、このお酒は1日に出来る本数が少しなの、まあかなり高額だけれどもあなた達の腕なら払えるでしょうから」


そしてお嬢様は俺の方に寄ってくる。

「マサシ様、お酒はどうにかしてストックを増やしましょう、色々と交渉に使えそうです」


メリーナの瞳が光った様に感じる、やはり貴族さんは怖いね、交渉上手だよ。  


夕飯はいつもの様に天ぷら蕎麦とおにぎり二つの定食、ピクルス付き。

更に本日はドワーフが来たので、歓迎の意味を込めて、皆んなにコップ一杯のビールを出した。

料金は、建物が建った後に最後に価格を決めて清算となる。


どれだけみんなが食べても、20人〜30人ならどうにか暮らしていける。


乾物屋万歳!

















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