第 参 話:妖怪の都、裏平安と約定
平安京伊達武家屋敷に到着した真斗と源三郎は美しい三日月が昇る夜に都に繰り出した。
大通りを含めた道々には松明で明るく、道の脇には妖怪達が営む店が多く立ち並び人や妖怪によって昼間以上の賑わいをしていた。
「さすが
笑顔で周りを見渡しながら言う源三郎に真斗も笑顔で返事をする。
「ああ、そうだな
時は遡るほど応仁の乱が終わり戦国時代に入って間もない頃、各地の大名達が天下統一を巡って朝夜問わず激しい戦を繰り広げていた事で人と滅多に関わらない妖怪達の住処が戦火で焼かれた。
そして住処を無くした妖怪達は全国各地で生きる為に悪事を行い、妖怪による人的被害が拡大し、それは平安京も例外ではなかった。
戦による妖怪の悪行は、いくら神格化され力持つ天皇家でも限界があった。そこで時の天皇、
「ほぉーーーーっ戦を起こし、剰え妖怪達の住処を奪った人間の王が私に頭を下げるか?」
「はい。此度の妖怪達の悪行は全て我々の争いにあります。どうか
頭を下げ、願う
「貧弱な人間とは欲深く、そして身勝手だ。だが、そんな王が全ての人間に代わり自ら我の前に頭を下げに来た。その姿に免じて妖怪達の悪行を鎮めてやろう」
「本当でありますか⁉︎」
「ただし、
「約定ですか・・・なんなりと」
「一つ目は“戦で住処を追われた妖怪達を平安京を含めた各大名の町村に住まわせ、
「二つ目は“妖怪達は夜を好む。なので夕暮れから日の出までは戦をしない事”」
「そして最後の三つ目は“人と妖怪の繋がりを強固にする為に我、腹違いの妹で九尾の狐、『
「分かりました。この
「はっ!分かりました
それから二人が
敵同士の大名達も天皇の召集には戦をやめ、何事かと騒がしくなる。
正座をし、集まった大名達がザワザワとしている中で
「皆!我の声に答え!集まってくれて感謝する!」
一瞬でザワつきをなくし、深々と一斉に頭を下げる大名達。
「「「「「ははぁーーーっ‼︎」」」」」
一糸乱れない大名達の忠誠の姿に
「うむ。皆、頭を上げよ」
「実は皆をここに集めたのは国中で悪行を行う妖怪達についての話だ。詳しくは
「皆!我と帝様は五日前に鬼の長で妖怪達の王、
「
そして
だが、そんな光景に
「皆の者!驚くのは分かるが、此度の妖怪達の悪行は我ら人の争いにある!ならば我らはその責務を果たさなければならい!」
「「「「「はっ!」」」」」
そして
「これは天命である!我の意に異を唱える者が
しかし、大名達は誰一人、立つ事はなく深々と頭を下げながら息を合わせる。
「「「「「いいえ‼我ら大名!今は争う中ではありますが!
大名達の深い忠義の姿に
「では皆の者!
「「「「「ははぁーーーっ‼︎」」」」」
それから
平安京を含めた各大名の村町に戦で住処を追われた妖怪達を住まわせるのと同時に
そして
こうして
⬛︎
真斗と源三郎はぶらりとしながら妖怪や人が営む店を笑顔で見物していた。
「さあ!さーあ!いらっしゃい‼いらっしゃい‼小豆洗いの小豆だよ!餡子菓子にはやっぱり!この小豆だよ‼」
「天狗の里で育った新鮮な野菜だよ!カボチャにトマト、ナスなどの夏野菜が今が旬だよ‼」
「ジョロウグモの糸で塗った素晴らしい着物だよ!しかも今なら一着たったの
「さぁ!若狭沖で獲れたイキのいい魚だよ‼あたし達!雪女が凍らせて持って来たから新鮮だよ‼」
そんな賑わいの中で真斗と源三郎は
「これと、これと、これも。あとこれを買いたい」
真斗がそう言うと習字絵用の絵の具、質のいい松の太い枝とガラスの原材料、そして大量の和紙を
「はいよ!全部で
「はい
源三郎は懐から布製の財布を出し、真斗に渡す。そして真斗は財布から小判一枚を
「小判一枚だ。釣はいらんよ」
笑顔でそう言う真斗であったが、一方の
「えぇぇぇ⁉︎小判ですか!いや!でも!」
「いいんだ。ここの店は色んな道具を取り揃えているからな。気に入っているんだ」
「ははぁ!ありがとうございます‼︎」
「じゃまたな」
「はい!ありがとうございました‼︎」
「
大通りを歩きながら問う源三郎に対して真斗は笑顔で答える。
「これを使って
突拍子しもない真斗の答えに源三郎は軽く驚く。
「何ですと⁉︎
「ああ。本気も本気だ
「上手く行くといいんですが」
「上手く行く・・・いや、行かせてみるさ!」
すると二人の腹の虫が鳴り、お互いに苦笑いをする。
「そう言えば、夕食がまだでしたね
「ああ、何処かで腹ごしらえをしよう」
「そうですな。何が食べたいですか
「そうだな・・・寿司にしよう。この頃、暑くなってきたからサッパリと冷えた物が食べたいな」
「確かに・・・では、あそこの寿司屋にしましょ。
「そうだな。寿司屋は
江戸時代、
寿司屋で食事を終えた客は出された湯飲み茶わんのお茶で指先を洗い、その指先を
「いらっしゃいませ!お二人様ですね。前金で
男性店主の提示した金額を真斗は出し、手渡しで店主に渡す。
「ありがとうございます。お侍様!どうぞ、好きなネタをお皿に取ってお召し上がり下さい!今日は雪女の漁師さんから購入した美味い魚介類ですよ!」
店主が笑顔で言うと真斗と源三郎も笑顔になり、醬油の入った瓶を手に取り醬油の小皿に注ぎ、蓋付きの小瓶に入った
「さて!いただくとしようか
「ええ!
そして真斗と源三郎は好きな寿司ネタを取って食べ始めるのであった。
あとがき
今回、描写しました裏平安はアニメ第四期の「ゲゲゲの鬼太郎」に登場する「妖怪横丁」と多くの文化の花咲く江戸時代の「江戸町」をイメージモデルにしています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます