第129話 しっかり実効支配しておいた方が良いよ(エカテリーナ視点)

「・・・という訳でしっかり実効支配しておいた方が良いよ」

「呆れた・・・」


 アニー達が王都についたので、ヤハイエ聖国の聖職者たちがどうなったのか聞こうとバーニィの部屋を訪ねたら、スイたんが住処にしている入江の近くにダンジョンが作られると説明を受けた。 まだ表面に口を開けていないけれど、出来始めると土魔術で地中を調べるとおかしい場所がある事に気が付くらしい。


「あと20年あるんだし、ゆっくりと開発すればいいでしょ?」

「特に街道沿いでも無いし岩ばかりの場所なのよ?岸壁だから海までのアクセスも悪いしね」

「でも沖合は海峡で岩礁地帯という場所でしょ?その内海運の要衝になるんじゃないかな?船で近づけないから、一方的に打ち下ろしで軍艦を撃沈する難攻不落の要塞とか向いてそうだよ?ほら、カバーニャ要塞みたいな感じにね」

「何を期待しているのよ・・・」

「別に?でもサントリーニ島みたいな綺麗な街になったら僕達も別荘を建てたいかなってね」

「良く知っているわね・・・でもあそこはカルデラじゃないわよ?」

「でも入江の感じが似てない?」

「まぁ・・・似てはいるわね・・・」


 バーニィは前世であまり体が動かない事もあって、地図アプリを見ながら疑似的な世界旅行を楽しんでいたそうだ。だから意外と世界の色んな場所を知っている。

 私も前世で何度か世界旅行に行った事があり、その中にキューバやギリシャが含まれていた。バーニィは兄貴あたりから聞いて私がどこに旅行に行ったのか知っていたのだろう。


「でもマクレガーは地中海性気候じゃ無いわよ?海洋性の亜熱帯だもの。台風があるのよ?」

「そのままの街を作る必要は無いでしょ?白壁に青屋根じゃなくても、沖縄みたく石灰岩の壁に赤瓦の屋根が並んでも綺麗だと思うよ」

「確かにそうね・・・」


 亜熱帯性気候なので沖合にはサンゴ礁があり石灰が取れる場所もある。赤土が多いので粘土が赤いので赤瓦の屋根も作れるだろう。


「考えておくわ」

「よろしく~」


 バーニィは将来マクレガー領にダンジョンが出来るという大きな置き土産を置いて去っていった。領地に戻ったエバンスお兄ちゃんに急いで連絡をしないといけない。


△△△


「主席おめでとう」

「ありがとう」

「なんとかS組に残れたぁ」

「フローラ頑張ってたもんなぁ」


 クラス分け試験の結果バーニィが2年連続の主席を取っていた。

 本当は3年連続なのだけど、1年生の時はカールが忖度付きで主席とされていたのと、2年と3年は、私がいくつかの実習を欠席しているので実技部分で満点を逃していたのだ。

 兄貴とフローラは勉強を頑張った様で筆記試験の成績があがっていた。フローラはいつも筆記がボロボロだったけど、今年はギリギリではあるけれどS組に踏みとどまれる程度にはなっていた。


「兄貴達はどうするの?」

「新学期の顔合わせを終えたらナザーラに帰るよ、もう成績を気にする必要もないし実習も受ける意味が無いからね」

「それは同感ね、でもすぐに帰らないの?」


 貴族で、さらに「日」の加護だからと王都の学校に入学する事が強制されていただけで、S組になって授業の免除が出来るならいる意味は全くなかった。


「王都にはキャンディさん達と来ているんだよ、なんかザックさんの家族に挨拶すするみたいだからしばらくはいるよ」

「なるほど・・・じゃあ卒業式にね」

「あいよ」


 私とマギ君は新学期の顔合わせも欠席して帰るつもりだ。スイたんに早く会いたいしね。


「そういえば、ソラたんやフジたんは、そんなに大きくなってないのね」

「ソラたんはそうだけどフジたんは大きくなってるでしょ?」

「バーニィからスイたんの事聞いてないの?」

「大きくなってる事は聞いてるけど、えっ?・・・そんなに大きくなったの?」

「ほら兄貴が一応やってたRPGの召喚獣の竜いたでしょ?」

「えーっと何だっけ?・・・リヴィアさんだっけ?」

「それって誰よ・・・リヴァイアサンよ」

「何?それぐらいに大きくなったの?」

「えぇ・・・」

「・・・マジ?」


 兄貴はスイたんが大きくなった事は知っていたけれど、あそこまで大きくなっている事までは知らなかったようだ。


「ジェット旅客機どころじゃないな・・・大型タンカーレベルじゃないか?」

「あそこまで太くはないけど、長さは数百メートルあるわね」

「マジかよ・・・」


  マクレガーに帰ったらもっと大きくなっているかもしれないけどね。


「どうしてそんなに大きくなったんだ?クジラでも食べさせたのか?」

「もっと大きなものよ・・・兄貴はクラーケンって分かる?」

「えーっと大きなイカだっけ?」

「こっちの世界ではクラーケンはタコらしいわ」

「どれぐらい大きいんだ?」

「マクレガーの港に入港する一番大きな帆船の大きさ覚えてる?」

「あぁ・・・」

「あれを掴んで海に引きずり込むぐらい大きいわ」

「あんなのどうやって捕まえるんだよ・・・」

「スイたんが水流操作でね」

「あぁ・・・あの巨大な渦潮作ってた奴か・・・」

「えぇ・・・」


 今じゃ大海嘯も作れるぐらいになってるけどね・・・。

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