第127話 トレントにとっては老廃物
「ウナーン!」
「ミャウミャウ!」
「ユキたん良かったねぇ」
「まだ子供だから優しくするんだよ」
「グルグルナーン!」
「ゴロゴロ」
ヤハイエ聖国でなんか悪いことしている人たちを誘拐している過程で、ユキたんと同じ雪豹を発見する事が出来た。枢機卿の1人の従魔になっていて心のパスが繋がっていらしいけれど、その枢機卿の人をユキたんがひと撫でして殺したら、あっさりとパスが切れて、ユキたんの主人であるバーニィの従魔になっていたそうだ。
ちなみに名前はミーたんでフローラ命名していた。
ミーたんは初代の従魔だった雪豹の娘で、まだ100歳未満の子供らしい。「ミーミー」とか「ミャウミャウ」といった感じに鳴くのでフローラはミーたんと名付けたようだ。
相性は良いようでお互いに体をこすり合って喜んでいる。バーニィいわくツンデレ口調らしいけどね。
ミーたんの母親の雪豹は既に亡くなっているらしい。大神殿の地下にあるダンジョンの探索に連れていかれ、そこで魔物に殺されたそうだ。
ちなみにその時に見つかったという杖が、バーニィから渡されたヤハイエ聖国の国宝だったという杖の事だったらしい。
「チーたんは相手が要らないの?」
「チー(要らなーい)」
ユキたんとミーたんのイチャイチャぶりに、チーたん番が欲しいか聞いたけど、どうやら興味は無いようだ。
チーたんは結構モテる。何故なら春先から初夏にかけて、オスのシマエナガに近寄られて求愛の「チチチッ」という声をかけられているからだ。
チーたんはそれをいつも振っている。しつこいオスにストーカーのように付きまとわれて部屋に逃げて来た事もある。
「トレントが喜んでたよ」
「魔力だけは高いみたいだしね」
毒花の森に送った聖職者達はサバイバル生活中だ。1週間程度は彷徨っていたけれど、今は諦めて拠点を作っている。
風魔術の結界で花粉を防ぎ、水魔術で作った水を飲んで凌いでいるけれど、食料が無いので近いうちに死ぬ。
魔力が高い生き物の死体はトレントにとっての重要な栄養源らしい、普通なら自然死した魔獣で充分らしいけれど、毒花の森は魔獣が少ないので、魔力が低い獣から少しずつという感じになっていたらしい。
トレント達は、毒花の森に定着したあとに魔獣が少ない事に気がついたようで魔力が高い生き物の死体を欲しがっていた。だから誘拐した聖職者達を送った事はとても有り難かったようだ。
「あとそろそろ老廃物が溜まったからダンジョンを作り始めるってさ、どこが良いって聞かれたから、スイたんの住処になってる入江の近くにお願いしておいたよ。
「えっ?結構遠くない?」
「近くに繋がれる木が生えていれば、多少魔力を食うけど大丈夫なんだってさ」
「あっ・・・そうか、空間移動の力があるのか」
「うん、空間移動はその力の応用なんだってさ」
断崖の近くは岩ばかりだけど、ユウナやソテツという南方に生える木は生えているらしい。
「魔力使って大丈夫なの?」
「別に死体から魔力を取り込んでるんじゃないんだって、魔力を取り込む仕組みを作るための栄養らしいよ。その仕組が出来れば周囲からからどんどん魔力を取り込めるようになるんだって」
「なるほどねぇ」
魔獣や人を殺して取り込むトレントがいるそうだけど、その栄養が欲しかったって事なのか・・・。
「森の妖精が作れるようになるまで8年ぐらいで、ダンジョンが形になって入口を開けるのは20年ぐらいらしいよ」
「ふーん・・・柿と同じぐらいなんだ」
「確かに桃栗三年みたいだね、という事はダンジョンは蜜柑と一緒か」
「桃栗三年柿八年に続きってあったんだ」
「うん、梅は酸い酸い十三年、梨はゆるゆる十五年、柚子は大馬鹿十八年、蜜柑の間抜けは二十年だよ」
「へぇ・・・」
前世の実家に植えてあった柚子は、僕が小学校にあがる頃になり始めていたけど、接ぎ木でもされてたのかな。
「あとお礼だって言われて、鈴蘭の毒を精製して作ったっていうポーションをいっぱいもらったよ。ダンジョンで出るものと一緒だってさ」
「これって完全回復薬じゃない?」
「うん、そうだね」
エメロン王国のダンジョンの奥で数本しか見つから無かった完全回復薬が100本ぐらいあった。売ればとんでもない価値になるはずだ。
「トレントにとっては老廃物なんだってさ」
「なるほどねぇ・・・」
聖職者達は、毒花の森に送った1日目に11人のが花粉の毒で死んだ。そして2日目に2人が水の毒で死んだ。そして3日目にウサギを獲って食べた2人が死んだ。それからネズミやイモリや魚や野草などを食べて死ぬ人が続出し7日目からは森でとれるものを誰も口にしなくなった。そして10日目である今日、衰弱して倒れた聖職者をバラして食べた聖職者が出ていた。
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