第125話 主人公格のキャラって元々知力や武力が高いもんじゃないの?
「この事件があったのはジルベルタじゃなくスタトー厶だよ」
「はぁ・・・暗記ものは苦手だよ」
「バーニィここ教えて~」
「ここはこの計算からx=を導き出して、ここに代入する事でyを導き出すんだよ、それをこのx=の式に入れればxの解も出てくるんだよ」
「フローラは相変らず算術が苦手だなぁ」
「むぅぅぅぅぅぅ」
僕達はS組に残るための最後のあがきのために勉強をしている。僕はA組に落ちても良いと思うのだけれど、フローラがしたいと言い出したのだ。どうやら両親が首席と次席なのでS組は維持したいらしい。
僕はゲームのヒロインなんだし物覚えが良いとかそういうハイスペックな部分があっても良い様な気がするけれど、そういったものは無いように思う。
バーニィ曰く「努力無しに最初からハイスペックなんてゲームとして面白くないからじゃない?」だそうだ。
ビビリンから「最初からテンプレチートな無双アニメが流行ってるっす」と聞いた事があったけど、一体どっちが本当なのだろうか?
車で遊び歩くなんて年齢じゃ無くなった時期に、たまたま出入りしていた定食屋に置かれていた漫画でハマって、リナの部屋に置かれていた三国志というゲームも、結局は知力と武力の高いキャラを揃えて内政で国力あげて他国を蹂躙していくという感じだった。他にもリナが買ったと思われる一般兵を沢山切り捨てていく無双ゲーって言われてる三国志もあった。
なんとなく暇つぶしに見ていたアプリのなかにあった、武将を超イケメンにしたソシャゲも、LRキャラの曹操と趙雲と諸葛孔明と関羽と呂布がゲット出来ないと人権が無いから課金必須と低評価付けられてた。
ゲームって強いキャラで無双するのが好きな人が多いんじゃ無いのと思っていたけど違うんだろうか?
だって定年後に読見始めたネット小説では、チートも貰って無双みたいな話が高評価だったよ?
「才のみを挙げよとお触れを出したのは先王のロンメル陛下だよ。曹操じゃないからね?」
「あっ・・・」
三国志の事を考えていたから間違えてしまった。
「ソーソーって誰?」
「あー・・・前世で同じ事を言ってた人だよ」
「ふーん・・・」
僕が余計な事をしたのでフローラの集中力が切れてしまったようだ。算術は頭使うからね。
△△△
ベヘム村からエルムの街に続く道を拡張していたおかげで、ナザーラ領は冬でも往来する人が出てきた。さすがに豪雪となる厳冬期の1ヶ月間は無理だと思うけどね。
馬車で来るのは坂道で滑って無理なようだけど、雪道に強い魔獣であれば行き来でみるようで、闇魔術の得意な商人が従魔に乗ってやって来ていた。
そのおかげで、エメール公爵領向けのダンジョンドロップ品だけじゃ無く、冬に魔の森でとれた赤いマンドラゴラや雪ウサギの毛皮の他、魔獣の肉なども捌けているらしい。
去年までは魔獣の肉などは燻製にしたものを春先に売っていた。けれど血抜きしてブロックにした状態の肉がそのまま売れているので手間が減って楽だとアンナお爺ちゃんが喜んでいた。
「うひゃひゃひゃひゃ! 1本あたり金貨62枚で売れたぜ!」
「酷い笑い方するねぇ」
「あはは・・・」
キャンディさんはもう約40歳という年齢だけど、さすがにその笑い声は女性があげて良いものでは無い気がする。体を動かしている事と、運動をしているため体が締まっていて、若い見た目を維持しているのに残念過ぎる。旦那のザックさんも思わず苦笑いという感じだ。
「キューキュー!」
「ウサたんが約束忘れないでってさ」
「勿論だぜ!」
雪の下の赤いマンドラゴラの位置を正確に言い当てたのはウサたんだ。割り当てのお金だけじゃなくウサたんに約束の分の蜂蜜を献上しないとへそを曲げて、次から探して貰えなくなるだろう。
「そういえば雪解けしたら王都に行くんだよな?」
「うん、学園の試験受けないといけないからね」
「ウチらもついて行っていいか?」
「えっ?良いけど用事でもあるの?」
「あぁ、そろそろこいつらに外の世界を見せたいし、ザックの娘や養子にも挨拶しときたいしな」
「あー・・・なるほど・・・」
キャンディさんとザックさんは結婚してから1度もナザーラ領から出ていない。
すぐにキャンディさんのお腹にクッキーが出来て、出産したらそのあとすぐにビスケットが出来てと、それどころじゃ無かったし、ナザーラの街は、教ヤハー様の声が聞けるように作られている教会や、加護の登録が出来る役所もあるので、6歳になった時も外に出る必要が無く、そのままナザーラの街で過ごしていた。
キャンディさんやザックさんに鍛えられたからか、元「雷轟」13番隊員の子供達と一緒に冒険者になって、最近ウッド級を卒業したと聞いている。
ゴブリンやコボルトなら1体1で遅れを取ることは無く、集団での野営もこなせると冒険者ギルドが証明したという事だ。
「交代で御者してくれるなら良いよ。4人分なら席は空いてるしね」
「ありがてぇ、さすがにチビどもをずっと歩かせる訳にもいかないし、乗り合い馬車の旅も辛いからな」
僕達使っている馬車はいわゆる貴族用って奴でシートはクッション張りだ。さらに前世のクルマ好きだった知識を使って板バネを内蔵して、荷馬車や乗り合い馬車に比べたら格段に乗り心地が良いものになっている。
以前「雷轟」13番隊の人達が、家族揃ってべヘム村からナザーラの街に引っ越す事になった時に、まだ幼かった子供たちのために貸したのだけど、とても乗り心地が良いと気に入られてしまっていたのだ。
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