第124話 こんな状態に変化していくなんて思わなかった

「最近お兄ちゃんとバーニィが怪しい」

「えっ?どこが?」

「だってバーニィがあからさまに距離取ろうとしてるし、お兄ちゃんはそれを気が付いているけれど気を使って追及しないんだもん」

「あ~・・・あれはバーニィの生理現象だから追及する気はないよ」


 フローラが怪しんでいるのは、バーニィが無意識に僕の胸に視線が行くようになった事を自覚して、恥ずかしがってしまっている事だ。急に赤面して部屋を出ていくので僕は微笑ましく思いスルーしていた。


「生理現象って何?」

「ほら、僕はフローラの胸に視線が行ってしまう事があるだろ?」

「うん」

「今までバーニィにはそういう事が無かったんだけど、最近無意識的に視線が行くようになっちゃったみたいなんだよ」

「バーニィがお兄ちゃんを女として見てしまったって事?」


 確かにそういう一面はあるかもしれないけど、別に悪い事では無いと思う。バーニィは前世は女性だけど、今世で男の方が強く出ている。だけど僕とフローラと長く一緒にいるからか僕達を女性として意識していなかった。

 僕とフローラはその点ちゃんと思春期を迎え、お互いに好き合っている。だけどバーニィだけは、その部分が少し疎い状態で成長してしまったのだ。


「仕方ないと思うんだよ、だって僕はこんな立派な胸を持ってるし」

「嫌じゃ無いの?」

「フローラは僕に胸を見られて嫌?」

「ううん、お兄ちゃんなら気にならない」

「僕もそんな感じかな」

「お兄ちゃんはバーニィを好きなの?」

「うん、好きだよ。男の友人としてずっと好感を持ってたし、マシロという女性の部分もだいぶ好きになってるよ。見た目も僕の前では可愛くなるしね」

「私は?」

「フローラは妹として、そして女性として好きだよ、それはバーニィやマシロよりずっと強いよ」

「それなら良い・・・」


 どうやらフローラは嫉妬しているようだ。嫉妬する必要なんか全くないと言うのに仕方ない事だ。


「フローラに対してはまだ普通だけど、その内意識するようになるんじゃないかな」

「そうなの?」

「うん、だってフローラは可愛いからね」

「もう・・・お兄ちゃんたら・・・」


 フローラは僕に抱き着いたあとキスをして来た。こんな感じに僕とフローラはそれなりにスキンシップを取って来た。だけどバーニィにだけは距離があった。バーニィがフローラに遠慮して紳士的だったからだ。


「あと1年で僕達は卒業して結婚する。僕とフローラはお互いに初めてを交換するし、その後バーニィに抱かれるんだよ」

「うん・・・」

「フローラは嫌?」

「お兄ちゃんと一緒なら良い・・・でもその時はお兄ちゃんに手を握っていて欲しい」

「僕がバーニィに抱かれる時もフローラに手を握っていて欲しいな」

「うん・・・」


 バーニィが自身の男の部分を認識して変わっていっているように、フローラもバーニィ対する態度が少し変わってきている。

 周囲の男達に比べてバーニィは異質なほどいい男だ。優しく聡明で真面目でカッコよくて強い。氷狼の頂で2人でバーニィにキスをした時、フローラは抵抗なくしていた。フローラが僕より先にバーニィに出会っていれば、バーニィに恋をしていた可能性は高いのではとその時思ったのだ。


 フローラも成長して僕に対して男ではない部分を認識するようになっている、そう見せないように頑張っているけれど、それが見えてしまう事がある。僕が弱っている時のフローラは僕と男では無く同性の家族として心配していて僕を男だと。

 それに、僕はバーニィに抱かれた時に、自身の女である部分を強く認識して、男である部分に違和感を感じてしまうんじゃないかと思っている。フローラに僕は男だと言って貰って保てているけれど限界を迎えるだろう。何せ女の体で17年。男の体だった時の感触はもうかなり薄れてしまっている。自身の体を認識すれば、もう完全に女性になってしまっているのだ。


 僕とフローラがバーニィに抱かれた後、僕達はお互いに対する感情が変わるんじゃないかと思っている。僕とバーニィでは明らかにバーニィの方が男らしい。今は僕を真ん中にしてフローラとバーニィがいる感じだけど、バーニィを真ん中にして僕とフローラがいるような感じになるのではないかと思う。


「バーニィは良い男だよね・・・」

「うん・・・」


 僕の感情の変化はフローラも認識し始めている。バーニィと婚約した時にこんな状態に変化していくなんて思わなかった。

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