第108話 学園都市最強の力(エカテリーナ視点)
「キューキュー!(ママー! 見てー!)」
スイたんは海の属性を持つ竜だ。生まれながらに水流を操る力をもっている。
私もポントスの槍を使うことで水流を操る事は出来る。生後間もないスイたんの魔力はまだ弱いらしく、南の島では何とか威厳を保つ事が出来た。それ以来スイたんは「キューキュー(さすがママー)」と言いつつ新技を開発して私に披露をしてくれるようになった。
今日見せてくれたのは海水で巨大な球体を作り、その中に回遊魚の大群を遊泳させるという技だった。
海水の球体に全く揺らぎがみられず磨き上げられた様な真球で、かといって内部では回遊魚が泳ぎ回れるよう水流が作られている。
ポントスの槍による水流操作ではあそこまでのものは作り出せない。強さという点では私に軍配が上がっているけれど、コントロールという点ではスイたんには及ばない。
スイたんは水魔術師としては、既に私以上に熟練度が高いのだ。
「私でもこんなに奇麗な玉は作れないわ、私の負けね」
「キュー!(わーい!)」
河口近くの港の側の海でスイたんを泳がせながらこんな遊びをしていたものだからか、私とスイたんを海の女神とその連れの聖獣と言い始めて拝み出す人が出てきた。
実際に座礁していた外国籍の船を港まで連れていったり、波にさらわれて溺れかけていた子供を助けたからか、スイたんの好物である生きたタコやイカを差し入れに来る人が増えている。
屋台でもスイ様好物焼きという名前で、タコやイカを串焼きにして出す店が出てきている。
「タコやイカは見た目のせいで殆ど売れなかったんですが、とても売れるようになりました」
「タコはともかくイカもなの?」
「えぇ・・・あっしは開いて干したものを焼いたものが大好物なんですけどね」
「それってどれぐらい干すのかしら?」
「1晩ぐらいですよ」
「パリパリになるまで干した事はある?」
「ありますが、固くなり過ぎて食べられたもんじゃ無いですよ」
「それを遠火で炙ってご覧なさい、繊維の方向に簡単に裂けるし、とても旨味があって美味しいのよ」
「そうなんですか?」
「えぇ・・・酒のツマミとして売れるわよ」
「本当ですか!?」
「えぇ」
干し肉という考え方はあるのに干しイカという発想は無いらしく、スルメのようなものは作られて無いらしい。
たまたま市場の一角に釣り用のエサとして置かれていた新鮮なイカを見つけてスイたんに与えたらいたく気に入られたので定期的な取引をお願いし、別の時に外道扱いされているタコを見つけて同じようにスイたんに与えたら、同じように気に入られた。
「うわぁ」という声が上がったので、タコの唐揚げとイカリングのフライを作り振る舞ったら美味しさに驚かれて、それ以来市場で食用として扱われるようになり、こうやって色々な食べ方を試す人も増えて来た。
「新しい領主様と奥方様のおかげで生活がとても楽になりました」
「この街は元々栄えていたわよ?」
「それは水運の関係者だけです。我々漁師は貿易船の航路のために好漁場を取られ、さらに船で持ち込まれる食材との競争によって売値が下がって生活は苦しかったです」
「そうだったのね」
「奥方様が連れて来られたバーナード殿下やアニー様のおかげで鮮度を保つ大切さを知らされ、高値で売る事が出来るようになりました。売れ残りの魚と海藻と野草を食べる生活から、麦や野菜や果物を買って食べられる生活変わったんです」
「それは良かったわ」
兄貴はただ単に美味しい魚を食べに来ただけだと思う。けれどそのおかげでこの街の貧しい人が多く助けられている。
「また彼らを連れて来るわ。美味しい魚を食べたいと言いながら色々教えてくれるわよ」
「その時は是非我々の新作料理も食べて頂きたいものです」
「きっと喜ぶわよ」
私が海の女神と言われて拝まれる事があるように、バーニィも山の神と言われて拝まれる事がある。私がスイたんを連れているように、フジたんを連れているため、対になる存在だと考えられたようなのだ。
ちなみに兄貴のソラたんを見て、私やバーニィの対になる存在だと言い出す人はいないようだ。スイたんやフジたんのように体が急激には大きくなっていかないため、ワイバーンやスカイドラゴンのような亜竜だと思われているらしい。
でも本当に恐ろしい力があるのスイたんやフジたんではなくソラたんだ。
ソラたんの力は、多分ベクトル操作だ。兄貴は良く分かっていなかったけれど、ベクトル操作の力の意味を知れば、よりも恐ろしい使い方が出来るものだと分かる。
あるラノベでは、超能力者がいる学園都市最強の力を持っていたのはベクトル操作が出来る青年だった。スイたんが水流操作をあれほど繊細な制御が出来るように、ソラたんも出来るなら、あのラノベの超能力者のような力を行使できる可能性はあると思っている。
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