第107話 何処と仲が悪いの?

「あなた達は何を連れて来たのかしら?」

「新しい従魔です」

「ソラたんとフジたんです」

「ガァ!(よろしくねっ!)」

「グァ!」


 シルフィー先生に学園に戻れと言われていた2月後になったので王都に戻ったのだけれど、担任のシルフィー先生に帰還の報告に言ったら頭を抱えられてしまった。どうやら僕が連れているソラたんと、バーニィが連れているフジたんが原因らしい。

 ユキたんを連れて来た時は、眉を潜められはしたけどこんな反応されなかったのに何故だろう。

 ヒポグリフやスカイドラゴンやフォレストウルフやデザートイーグルを従魔にしている生徒だっているのだし問題ないだろう。


「何処で従魔にしたの?」

「魔の森に落ちてた卵に魔力を送り続けたら孵りました」

「魔の森ってドラゴンもいるのね・・・」


 バーニィから、卵を何処で拾ったか聞かれたら魔の森と答えた方が良いと言われていたのでそう答えた。


「雪豹を連れて来たのも問題だったけど、次に連れて来たのは翼竜と地竜の幼生、しかも私も知らない種類なのよ。あなた達ってどうなってるの?」

「冒険者活動中に魔物を従魔にしただけです」

「スカイドラゴンやヒポグリフよりも小さいので問題ないと思いますが・・・」

「現在はそうでしょうね・・・でもその2頭は、スカイドラゴンのような飛竜やグラスランドリザードのような走竜のように亜竜に分類される魔物ではなく正真正銘の竜よ。将来とてつもなく大きくなるわ」

「楽しみにしています」

「魔の森でスタンピードが起きたときに頼りに出来そうです」


 光輝竜もジェット旅客機ぐらいの大きさがあったし、その子供も大きく育つかもしれない。フローラの放つ光の矢から逃げ続け、僕に近づいて来た時にすれ違いざま小剣で首をザックリと切って倒されてしまったという良い所無しな竜だったけど、僕はソラたんを決して負けない最強の竜に育てると決めていた。

 そのため鷹匠のように手に捕まらせ、魔物を見つけて狩りをするという練習を、ダンジョン実習でしようと思っていたのだ。


「その竜は危険じゃ無いのね?」

「仲良しなので大丈夫です」


 シルフィー先生は何故かソラたんを見ながらそう言った。邪悪そうな色合いだからってソラたんを凶暴だと思うのは偏見だ。僕からすると、生まれてから1月も経たず2倍以上大きくなっていて、溶岩を吐き出せるフジたんの方が危険だと思うぐらいだ。溶岩を吐き出せる事はバーニィに口止めされてるので言えないけれどさ。

 まぁフジたんは草食で動きもゆっくりなので、海を高速で泳ぐ事が出来、水流を操作して巨大な渦潮を作ってしまうスイたんに比べたら危険度は低いと思う。


 ソラたんたちの力の検証のために、以前周囲を氷結させた南の島に行った時、リーナに以前渡したオルクダンジョンで拾った槍の力でスイたんとどっちが大きな渦潮を作れるか競争した時は、その景観の恐ろしさから、絶対に水辺にいる時はリーナとスイたんを怒らせてはいけないと心に刻みつけたものだ。


「ガァ〜(パパ、お腹空いた)」

「はいはいご飯ね」


 フジたんの背中に乗ってご飯を要求してくるソラたんに、この前獲ったウサギ型の魔物の肉を闇魔術の収納から出して与える。口をバカっと大きく開き、上を向いて喉に押し込んで行く様子から味わっているようには見えないけれど、「ガァッ!(美味しいっ!)」というので、味は感じてはいるらしかった。


「まぁ良いでしょう、前にも言いましたが、従魔が起こした問題は主人に責任がありますからね、ちゃんと躾けるんですよ」

「はい」

「分かりました」


 ダンジョン実習は3日後なのでそれまで何をしようか。既に最下層の奥まで探索してしまっている僕たちには、学校の成績のためにダンジョンの中層まで行くという課題は余裕過ぎる。

 マシロやリーナのように、僕やフローラはダンジョン実習で無得点でもS組をキープが出来る訳では無いので取り敢えず参加するけど、冒険者としての実績により免除とか出来たら参加するつもりは無い行事だ。


△△△


「私たちをグループに入れて貰えないだろうか」

「いいけど何で?」

「派閥の関係で折り合いが悪くなってね・・・」

「いいけど、そんなに険悪なの?」

「以前は大衆派閥と貴族派閥だったとしても学園内では普通に交流が出来たのだが、国王派閥が北部派閥と王国派閥に分裂して以降は生徒同士でも対立派閥同士はギスギスするようになったんだ」


 ブレイブとカタリナがダンジョン実習で僕たちのグループに入りたいと言ってきた。リーナとマギが成績充分だからとダンジョン実習に不参加なので、僕たちのグループには2名の欠員が出ている状態なので入ることは問題無かった。


「北部派閥は何処と仲が悪いの?」

「北部派閥以外全てとだ」

「えっ?大衆派閥とも?」

「どうやら聖教派閥に近い考えの奴が多いらしいんだ」

「あれ?でもカタリナって大衆派閥のボスの家だったよね?」

「あぁ、ヒルローズ侯爵は聖教派閥に近い考えは持っていないらしい」


 大衆派閥のボスが聖教派閥に近くないのに、抑えきれないのか。


「ふーん・・・もしかして大衆派閥も分裂しそうだったりする?」

「その可能性が高いな。元々大衆派閥は領民に寄り添おうという領主たちの寄り合いに近い派閥だったからな。ヒルローズ侯爵家が最も家格が高いので取りまとめ役をしていたが、派閥内の調整では少数派になる事が多かったようだ。ヒルローズ侯爵領はリンガ帝国に隣接する領地という事もあってヤハー教には懐疑的な領民が多いけれど、大衆派閥の多くはヤハウエ聖国に近い領地の貴族だったんだ」

「なるほど・・・」


 大衆派閥は3大派閥の一角だと聞いていたけてど、どうやらそこまで結束力が高い集団ではなかったらしい。まぁ国王派閥も北部派閥と王国派閥に分かれてしまったそうだし、派閥っていうものはそういうものなのかもしれないな。

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