第55話 今更戸惑ったりする関係では無かった
「お兄ちゃん・・・体調悪いの?」
「うん・・・」
「キュー」
「チーチー・・・(早く楽になって・・・)」
「チーたんありがとう」
僕の体が女性になってしまい生理というものが始まってしまった。お腹が張ったあと、痛みと不快感があって食あたりかなと思ったら股から血が出ていた。
最初の時、僕は目の前が真っ暗になって気絶してしまった。それほどショックな出来事だった。
何回か経験したことで血には慣れたけど、それでもこの生理痛というものによって体調が悪くなる事は慣れなかった。
チーたんの癒やしによって痛みは軽くなるけれどしれでもかなり辛い。これは個人差があるらしく、フローラのようにあまり辛くない人もいるらしい。
「風で仰いであげる」
「ありがとう」
秋に入ったけれど今日は残暑が厳しい。体を冷やすといけないからと、空調の魔道具を弱めに設定しため汗をかいてしまっていた。魔道具を操作すればいいのだけれど、僕はベッドから起き上がる気力すら起きておらず、チーたんに見守られながら部屋で静かにしていた。
「涼しくて気持ちいい」
「早く元気になると良いね・・・」
「今日は3日目だから明日には大丈夫になってるよ、それに最初の頃より随分と楽になったし慣れて来たんじゃないかな」
「それなら良いけど・・・」
定期的にはマリア母さんも見に来て、生理痛に効くという薬草の入ったお茶を飲ませてくれている。
マリア母さんも生理が始まったばかり頃はかなり辛かったらしい。
「僕は女なのかな・・・」
「お兄ちゃんは男だよ」
体調が悪くなり気弱になってる僕をフローラが慰めてくれる。
「フローラおいで」
「うんっ!」
「チー!(私もっ!)」
「キューキュー!」
「ウサたんもチーたんもおいで」
フローラが僕のベッドに入り僕の腕枕で横になる。ウサたんがフローラの胸の上で丸くなり、チーたんが僕の胸の上に乗って体をこすりつけて来る。
「胸も随分と大きくなっちゃったな・・・」
「うん・・・私よりずっと大きいね・・・」
今日は楽になるため体を締め付ける胸当てを付けていないため、盛り上がってしまっている。
胸が大きくなり、剣術の訓練の時にしっかり締め付けておかないと痛くなるし、いつの間にか肩が凝っている。
香味本位で揉んでみたけど特に気持ちよくなんてならなかった。
「邪魔だよなぁ」
「私、お兄ちゃんの胸好きだよ」
「僕もフローラ胸が好きだよ、でも自分の胸は嫌いだな・・・」
これさえ無ければ男だって言い張れると思うので、胸があるのがとっても嫌だった。
「私の胸、触っても良いよ?」
「今は大丈夫、フローラの髪を撫でる方が大事だから」
「うん・・・」
フローラは胸は僕より小ぶりだけど、触られるとフワフワした気分がして気持ちいいらしい。同じ胸なのに随分と性能に差があるみたいだった。
「もうすぐで僕たちの誕生日だねぇ」
「うん」
僕の方が20日ほど早いぐらいで誕生日は結構近い。去年フローラの誕生日に「プレゼントは要らないから私を貰って」と言われてしまい、「次の誕生日までに考える」と保留していた。そしてフローラを意識して見るようになった翌月に僕の生理は始まった。
「僕の誕生日にフローラを貰っていい?」
「うん・・・えっ!うん!」
女同士がどうするのかは前世の知識で多少は知っている。そういった情報についてはゴロゴロ転がっている社会だったしな。
前世では結婚しなかったけれど、女性と付き合った事はあったし、プロの方にお世話になった事もある。
それにフローラとは昔から一緒に風呂に入っていたし裸は見慣れている。今更戸惑ったりする関係では無かった。
とはいっても中に何かを挿れたりするつもりは無かった。そういうのに適した道具など持っていないし、怖いという気持ちがあったからだ。けれどいつかはフローラと共にそういう事をしようと僕は心に決めた。
△△△
「あら、静かだと思ったら寝ちゃったの?」
「母さん・・・うん眠くなっちゃって」
「血が減ると眠くなるのよ、このお茶を飲むと楽になるから」
「うん、でもみんなを起こすの悪いから後で飲むよ」
「体調はどうなの?」
「朝よりずっと良いよ」
「そう・・・それは良かったわ」
マリア母さんは日が落ちて、暗くなてしまった窓にカーテンをかけて部屋を出ていった。
「お兄ちゃん・・・」
「起きちゃった?」
「うん・・・」
「お腹空いてない?」
「うん空いてる」
お腹空いて無いの言葉に反応したのか、ウサたんとチーたんがパッチリと目を開けて、「キューキュー!」「チーチー(お腹空いた!)」と騒ぎ出した。
「体調良くなったから食べに行こう」
「本当!?」
「キューキュー!」
「チー(良かったー!)」
少しまだ体の重さは感じるけれど許容範囲内だ。しっかり食べてもう一度寝れば完全に回復するだろう。
「少し着替えるから先に食卓に行ってて」
「うん!」
「キュー!」
「チー(待ってぇ!)」
元気に飛び起きて部屋を飛び出して行くフローラ、低血圧なのか寝起きが悪い僕とは大違いだ。
「うん・・・もう殆ど止まってるな・・・」
下着を下ろし入れているあて布を外すと血の跡は殆ど見られず、おりものと言われる黄色いもののシミの方が多く滲んでいた。
寝汗で湿った寝巻きを脱ぎ、体を軽く拭ってから新しい下着を身に着け、さっぱりとした服に着替えた。
本当はお風呂に入りたいけれど、後でフローラと入るので我慢した。
試しに光魔術の「浄化」を唱えてみたけど、何かが浄化されているような感覚は無かった。この魔術は未だに何の意味があるのかさっぱり分からない魔術だ。
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