第54話 原作の事を思いやれる余裕(エカテリーナ視点)
「ビリーはそんな感じなんだ・・・」
「うん、とっても明るい人だったよ、プリエデのプレーヤーとしては違和感バリバリって感じだね」
ゲーム攻略対象であるビリー・フォローは所謂鉄面皮キャラだ。それが少しづつ主人公に依存していって嫉妬したり笑顔を見せてくれる事が萌えると評判だった。カードとしても主人公より強力な癒しの魔術が使えるヒーラーなので耐久力パーティのデッキを組む時に重宝する。脳筋突撃をする味方のNPCカードが出る時にも必須級であるため、他のキャラの攻略をしている時でもビリー・フォローの好感度を上げてカードを育てやすくしておくのが攻略の肝になっていた。
しかし兄貴の生前の知り合いで、かつ明るい人物が中に入っているらしく、私の3番目の推しであるビリーの面影はどこにも無いようだ。
「それで聞いてよ、ビリーったらエロゲマスターを自称するぐらいのオタクだったんだってさ。でも実際は熟女好きでそれを隠すためにエロゲマスター名乗ってたんだって。ちなみにプリエデは戦闘パートの部分にひかれてやっただけで、ストーリーは殆どスキップしてたからあまり良く分かっていないらしい。でも裏ダンジョンの事は結構詳しかったよ」
「エロゲマスター・・・」
銀髪で無表情な顔のビリーが、パソコンの前に座り、熟女系のエロゲをしている姿を想像してしまった。似合わな過ぎて違和感が物凄い。
「生まれてすぐに名前形自身がゲームの登場人物だって事にも気がついていたんだって、でもストーリーをスキップしてたから、どうしたら良いか分からず、ゲーム知識が生かせるようになるヒロインとの出会いが来るまで大人しくしてたらしいよ」
「そのヒロインがまさかの兄貴って驚きだったでしょうね」
でもこれは朗報だわ、ヤハイエ聖国関連のストーリーは胸糞がゲーム屈指だものね。その鍵となるビリーが味方に引き込めるというのは都合が良いわ。
「ビリーの加護は「雨」と「川」だったよ。「雨」はゲームの設定通りだね。イケメンだし水魔術の回復が得意だから、診療所で治療師やりながら、女性にチヤホヤされて鼻の下を伸ばしているよ」
「なるほど・・・」
鉄面皮だったビリーの鼻の下が伸び切った顔を想像して顔を顰めてしまった。
「そんな表情になるよね・・・」
「えぇ・・・」
私もバーニィもプリエデを愛するプレイヤーだった。共に不幸にならないためにシナリオブレイクをしてしまっているけれど、推しだったキャラまでブレイクさせたいとは思ってない。
ちなみにバーニィの推しはブレイブ・エメール公爵令息とクリス・ソード伯爵令息らしい。バーニィはどうやら愚直系が好きなようだ。
確か2人ともあまり人気投票では高く無かった攻略対象だ。ただ嫌味な感じはないキャラなので、兄貴と波長があうバーニィらしいと思っていた。
2人とは既に面会したそうだけど、どっちも転生者ではなかったそうだ。私の推しだけ3分の2が転生者でブレイクされているのに、バーニィの推しは変化なしとはあまりではないだろうか。
まぁこんな感じで原作の事を思いやれる余裕は、兄貴やバーニィのおかげで破滅の運命が回避されつつあるからこそ産まれたのだけれど。
「アニーをヤハイエ聖国に誘おうとはしていたから監視対象ではあるけれど、枢機卿に言われているだけって感じで、その意味は知らないみたいだったよ」
「それは安心したわ」
ビリールートでは、ヤハー教の腐敗っぷりが暴かれる事件に遭遇する。ヤハー教の教会では、敬虔な子供に、素質があるから修行させるといってヤハウエ聖国に送られている、その過程で美形な少年や少女はヤハー教の聖職者達の愛人にされている。
ゲームではビリーの好感度を稼ぐためには教会を頻繁に訪ね敬虔なヤハー教の信徒として振る舞う必要があった。そしてビリーの好感度が一定以上に達すると、ヤハウエ聖国に修行に行かないかと誘われる訳だ。そこでヤハウエ聖国で愛人にされそうになり逃亡するというイベントが発生する。
逃亡したヒロインからそれを聞いたビリーは、意図せずそれに加担させられていた事を知り動揺する。また父親である枢機卿もその共犯者である事も知り激怒する。
ビリーはヤハー教の信仰との板挟みに病んでしまうけれど、主人公に説得されて立ち直り、ヤハー教の闇を暴露し父親である枢機卿を打倒するという流れになる。
魔王発生時にリンガ帝国が滅びるまで協力的なヤハイエ聖国は、ビリールートでは一貫して非協力的で妨害行為難までして来るので難易度が上がる。
「メルエルは?」
「アニーを攫おうとしてたから排除した」
「ビリーはメルエルがいなくなって大丈夫なの?」
「小さい頃から鼻息荒くて下半身をベタベタ触って来て気持ち悪かったんだって。だから排除できる理由が出来て清々したってさ」
「えっ?」
「プリエデでは描写が無かったけれど、ゲームのビリーとメルエルはもっと深い関係だったのかもしれないね」
「そんな事知りたくなかった・・・」
メルエルとはビリーの身の回りの世話をする女性だが、ゲームではヤハイエ聖国と枢機卿の息がかかっていて、ビリーがヤハー教と敵対した時に裏切る事になる。ゲームではビリーはメルエルを姉のように慕っていて、裏切りにショックを受けてかなり心を病むといった描写がある。
「メルエルって結構綺麗な女性だったと思うけど?」
「若すぎるんだってさ」
「えっ?メルエルって確か20代よね?」
「ビリーの中身は35歳で熟女好きの男だって」
「もしかしてビリーが鼻の下を伸ばしている相手って?」
「30代から50代ぐらいの主婦達だよ」
「なるほど・・・」
ビリーは、中身が熟女好きであった事が幸いしてメルエルの毒牙から逃れていたらしい。
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