第45話 死亡フラグを折る事が出来そうだ(エカテリーナ視点)

「という訳でアニーとフローラの2人と婚約したんだよ」

「よく帝国が了承したわね」

「僕はお家騒動が嫌で放蕩してたからね。エメロン王国の新男爵令嬢で「日」の加護を持ちカラドリウスをテイムした少女と、新進気鋭の新子爵令嬢でカーバンクルをテイムした少女と縁が出来るよって言ったら了承されたよ」

「なるほど・・・」


 突然バーニィがやって来た思ったら、アニーとフローラの2人と婚約したと告げられた。アニーは前世が男だし、バーニィは前世が女だったので、逆だったら良かったのにと思っていたけれど、婚約してしまうとは思わなかった。


「それにしてもとんでもないシナリオブレイクしたわね」

「だねぇ・・・学園がどうなるか楽しみだよ」

「あと5年後か・・・」

「そっちはどう?」

「まだ資金集め中よ」

「それなら僕達の不用品をあげるからそれを売ってみない?」

「不用品?」

「オリン山に出没するワイバーンだよ、成竜並みに大きくて頑丈らしいよ?」

「はぁ・・・光輝竜を倒しに行った時のものね」

「いやテイムしに言ったんだけど無理だったんだよ。 レイドボスだからなのかな? 今度フェンリルがいるっていう山にテイム出来る聖獣をさがしに行くから、収納を少し開けときたいんだよ」

「頂くわ・・・」


 洪水被害の時に備えて余剰な食料を買い集めようとしていた。幸い収納リングがあるし、エメール公爵領の周囲は食料生産が盛んで穀物が安い。

 また痩せた土地でも育ちやすいとバーニィに紹介してもらった帝国の芋の栽培を領内で試験的に始めた。それはカサバという芋で皮と芯の部分に毒がある。また生のままでは結構傷みやすい。なので水にさらししたり天日干したりして毒抜きしたあと揚げて食べたり、すりおろしてんぷんを取り出したあとそれをこねて固めて蒸して食べる。

 水にさらして焼いたカサバは、甘みが少ない前世のサツマイモに似た味をしていた。熱帯性の植物らしいけれど王国でも南方に位置し、帝国に近い気候のマグダラ公爵領では栽培する事が可能だった。


「カールの方はどうするの?」

「なんとか破棄してもらうつもり」

「方法は?」

「誘拐されようかと思ってるわ」

「なるほど・・・3年1学期のイベントを使うんだ・・・」

「そういう事」


 ゲームではヒロインが皇太子を攻略しようとすると、3年1学期に悪役令嬢であるエカテリーナがヒロインを悪漢に襲わせ誘拐させるというイベントが発生する。戦闘パートで勝つと未遂に終わるけれど、負けると誘拐されてしまいバッドエンドで終わってしまう。

 理由は誘拐された貴族の女性は処女性を失うとされているからだ。特に女性の体となっていき初潮が始まるとされる12歳以降に誘拐された貴族の女性は、汚れたと見なされまともな婚姻を望めなる程周囲から冷ややかに見られるようになる。


「いつやる?僕達がもっている力なら誘拐は簡単だよ?3つ目の貸しも返しておきたいし手伝うよ?」

「本当に貰い過ぎよ・・・でも助かるわ」


 既に返せない程の恩を兄貴には借りている様な感じだ。まぁ実際は兄貴の代わりにバーニィが返しているような感じがしないでもないけどね。


「やるなら学園に入学する直前ね」

「卒業直前が良くない?学園で変な噂を立てられるよ?」

「学園でカール殿下の婚約者として過ごしたくないのよ」

「カールも嫌われたもんだね」

「俺様系の勘違い野郎は嫌い」

「まぁ僕もゲームでは苦手だったかな、見た目は嫌いじゃないんだけどね」

「私もパケ絵では一番好きだったわ」


 色々考えた結果、学園に入学する直前が最も良いタイミングだと思い至った。早い時期に誘拐されてしまうと、自宅に軟禁された上、どこかの変態貴族の婚約者になる事がマグダラ公爵により決められてしまう可能性があった。

 この国では16歳になれば女性は成人とみなされる。私は誕生日が早いので、皇太子との婚約解消の手続きをしている時間があれば16歳になっている。成人になれば本人の了承なしに婚約や婚姻を決められる事は出来なくなるとされている。最低でも同意したという書類が必要になる。

 しかも3歳年上のエバンスは私が16歳になった時には男性が成人とみなされる18歳になっている。教会に駆け込んで結婚してしまえば、誰にも引き離せなくなる。周囲の噂だって負け犬の遠吠えに聞こえるようになるだろう。


「護衛であるエバンスが責められたりしない?」

「そうね・・・エバンスと関係ない場所で誘拐されないといけないわね」

「それならエバンスが同行できない王宮で行われる宴の最中とか良いんじゃない?」

「王宮の宴?」

「新春の宴は伯爵家以上しか参加しないでしょ?」

「そうね」

「誘拐はアニー達にお願いすれば良いんじゃないかな?僕もリンガ帝国代表として参加できるよう調整しておくよ。会場でアシストできるかもしれないしね」

「なるほど・・・」

「王国の面子は丸つぶれだけど・・・別に良いでしょ?」

「えぇ」


 バーニィは兄貴と性格が似ていて楽観的だけど、頭の良さは兄貴よりずっと上のようだ。


「時間は十分にあるし細かい調整はゆっくりしていこう」

「分かったわ」


 どうやら私は学園入学前に、兄貴への3つ目の貸しが返済される事によって、死亡フラグを完全に折る事が出来そうだった。

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