第44話 誰か貰ってあげようよ
「そうか・・・アニーも嫁に行くのか・・・寂しくなるのぅ」
「いや・・・婿を迎えるんだよ?それに婚約だからね?」
「婿?」
「そうバーニィが婿に来てくれるってさ」
「そうかっ! でかしたっ!」
ヨウムお爺ちゃんとアンナお婆ちゃんに婚約の報告をしたのだけれど盛大に勘違いさせてしまった。けれど誤解はすぐ解けたらしい。
ヨウムお爺ちゃんもアンナお婆ちゃんもバーニィの事は気に入っていた。同じ「人」の加護を持ち、エバンスと同じく弟子みたいくなっていたからだろう。
バーニィはヨウムお爺ちゃんとアンナお婆ちゃんの技術には舌を巻いていた。ゲームの知識があっても実戦からくる技術には追いつけない部分があるらしい。
僕の婚約のお祝いが村で行われる事になって家宰をしている村長から酒が供出された。お祝いでは昔僕に何かとちょかいをかけて来たパウロが悔しそうな顔をしているのが印象的だった。
パウロは最近、僕とフローラが村で仲良く遊んでいる時にフローラに絡んで「うるちゃい」と一蹴されていた。
パウロは僕に付きまとったり、フローラに絡んだり、リーナにも一目ぼれして挙動不審だ。男でも女でも一途である事が付き合うための最低条件だと思うので完全にアウトな奴だと思う。最近僕と同世代の村の少女達もパウロの事を気持ち悪がっていた。
フローラははっきりした性格なので、パウロみたいにネチネチ絡んで来る奴が大嫌いだ。それにフローラは子爵令嬢で平民であるパウロには高嶺の花過ぎる相手だ。ベヘム村でもなければ顔を合わす事すら出来ない相手だったりする。
そういう僕も男爵令嬢でそういう存在になってしまっている。ベヘム村ではまだそういった身分的なものを曖昧にしているため子供達はあまり分かっていない。無礼討ちとか普通にある世界なので、街に出る予定があるのであれば大人になる前に学んで欲しいと思う。
魔の森のトレントの長老との交渉で、裏ダンジョンのある泉の辺りまでは森を開拓しても問題無いと言われている。むしろダンジョン攻略した事で老廃物がかなり片付いたらしく感謝されてしまった。
泉までの道の開発は「堅土」と二つ名のあるローズお婆ちゃんにお願いしている。魔の森の魔物に注意を払いながら地面を整地出来る程の人材は少ない。
ローズお婆ちゃんの護衛に、ヨウムお爺ちゃんとアンナお婆ちゃんとガイお爺ちゃんがついていて毎日楽しそうに森に出かけている。
森の奥に行きやすくなった事で元「雷轟」13番隊のみんなも狩りやすくなったと喜んでいる。
エルムの街の方に向かう道は僕とフローラとバーニィが土魔術の熟練度あげを兼ねて行っている。収納リングの肥やしとなっているワイバーンとかドラゴンの素材を買い取って貰えたら人を雇って一気に開発とか出来るのだけれど、色々面倒そうなので放出は大人になってからしようと考えていた。
自身の魔力というノーコストで出来る事だし、土をボコボコ盛り上げたり固めたりと結構面白いので、楽しみながらやっている。
そういえば、バーニィは光輝竜の鱗や牙を使うと最強の防具が出来ると言っていた。強度だけならアダマンタイトやオリハルコンの方が上だけど、軽量なので俊敏性が下がりにくく、さらに魔術に対する耐性があるのでお勧めだそうだ。
「最近ツレないじゃないか」
「マーカ・・・キャンディさん、最近は貴族の勉強しなければならなくなったんだよ」
「そりゃ分かるがよぅ・・・ウサたんいるのといないのとじゃ全然違うんだよ」
「またフローラにウサたん連れてくるように言うからさ」
「頼むぜ、蜂蜜用意して待ってるからよ」
「分かったよ」
裏ダンジョンでのレベリングやドラゴン退治していたし、最近は収納リングからドラゴンの卵を取り出して魔力を送ったりする事もしている。貴族の勉強だけじゃなくても色々と忙しいのだ。
そういえば元「雷轟」13番隊の中でキャンディさんだけが売れ残っている。顔は悪くないし性格だって明るいのに何故だろう?腹筋がバッキバキに割れているから?胸がペッタンコというか胸筋だから?尻が石みたいに固いから?酒癖が悪いから?唯一の30代だから?村の未婚の若い男がいなくなったから?一晩付き合った村の若い男が数日廃人になったから?
一夫多妻が許されているんだし誰か貰ってあげようよ。
「それで突然パイソンに飲み込まれて締め付けられてもう駄目かもと思ったんだがようぅ、思いっきり腹の中をつねってやったら締め付けが緩んだんだよ。なんとか腰の短剣に手が届いたから内側から捌いてやったんだぜ」
「それで血まみれで帰って来たのか、それにしてもパイソンに締め付けられて平気なんてどんな体してやがるんだ」
「今夜見てみるかい?」
「いや・・・遠慮しておく・・・」
「何でだよっ!」
今日もキャンディさんは逆ナンに失敗したらしい。
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