第40話 お兄たん見ててぇ!

「お兄たん見ててぇ!」

「おーう!」


 フローラがエロスの弓を引き絞ると光の矢が勝手に生成する。そして放つと光の矢が12本に分裂してワイバーンに突き刺さる。


「ホーミング機能付きの遠距離攻撃ってズルいよね・・・」

「もうフローラだけで良いかな・・・」


 魔の森のさらに奥地の高山地帯にある火山周辺でドラゴン狩りに来たのだけれど、亜竜であるワイバーンの群れぐらいならフローラ1人だけで対処可能だった。


「武器が凄いのかレベルカンストが凄いのかわからない・・・」

「ゲームの時と違ってステータス画面が見えないんだよねぇ・・・」

「熟練度上げればさらに強くなるんだよね?・・・必要?」

「取り合えずアダマンタイト級になってから先の事は考えよう?」

「・・・それもそうか・・・」


 裏ダンジョンを制覇した僕達は次の目標を未知の探索に切り替えた。ゲームではマップに限界があったためバーニィはそれより先に行きたがったのだ。

 また僕達のような可愛い聖獣が欲しいと言ったのでそれにも付き合うことにした。


 僕たちは精霊が宿った事で空間移動が可能となったため、移動がとても楽になっている。だから僕とフローラはリンガ帝国に行き、身分を隠して冒険者登録し、バーニィの仲間として活動を始めた。


 裏ダンジョンを攻略した僕たちには地上の魔物たちは雑魚同然で、殆どがフローラの使うエロースの弓で倒せてしまう。バーニィが聖獣になりそうと言う光輝竜を探しに高山地帯の火山周辺にやって来たのだけれど、エンカウントするのは亜竜ばかりで、フローラの独壇場になっていた。


「収納リングの容量が多いといっても無制限じゃないし、これだけ多いと整理も大変だ・・・」

「処分が面倒だったら溶岩にポイすれば良いんじゃない?」

「それもそうだね・・・」


 収納リングは裏ダンジョンの宝箱からから8個出た。ゲームでは攻略対象が7人で、自身も含めて全員に装備させるためその数拾う事が出来るようになっていたらしい。

 収納リングのうち2個はリーナとエバンスに贈った。収納リングには「海」の加護を持つリーナに相応しそうな、海の神様の名を持つとバーニィから説明を受けた槍と、盲目の剣士になっているバーニィに似合いそうな日本刀に似た曲刀をエバンスに贈った。


 バーニィはまず経験値効率が良いという第4階層にある隠しフロアに僕たちを案内した。そこで金属っぽい肌のブヨブヨとした魔物を3ヶ月間毎日のように狩りを続けた。 いくら倒しても力が上がるような感覚がしなくなった頃に、バーニィからレベルカンストしたのだと言われた。


 まだ体が幼いため基礎能力は低く技や魔術の熟練度も育っていない状態だけど、レベルカンストしてしまえば関係ないようで、そのあと裏ダンジョンもクリアできてしまった。

 リーナやエバンスもレベリングしたいだろうと思ったので、ダンジョンはそのままにしておいた。何でも最終階層のフロアボスを倒し続けると、ダンジョンは段々弱くなっていき、さらに魔物を倒し過ぎるとダンジョンという資源が枯渇するそうだ。

 けれど5000年以上溜められたという魔の森のトレントの老廃物は簡単に無くなる量では無いらしく、エメロンの王都やリンガの帝都近くのダンジョンよりもかなり長く資源採掘が可能らしい。


「ドラゴンしゃん見つからないね・・・」

「キューキュー!」

「火山がこんなに大きいとは思わなかった」

「標高どれぐらいあるんだろうね・・・」

「チーチー!(フェンリルの山よりは高くないよ)」


 高山地帯にある火山は、前世で見た富士山より明らかに大きい。空間移動は木を通さないといけないため森林限界以上には行けず火口近くに行くには歩いていくしかない。

 火山の火口付近にドラゴンらしいものが飛ぶ影は見えるけれど、高いためどういう竜かまでは区別がつかない。

 この火山はチーたん曰く、フェンリルがいるとされている山ほどの高さはないらしい。でも積層型のなだらかな山体であるため、高くないように見えてしまうという錯覚が発生している可能性がある。


「今日はこれぐらいにして戻ろうか」

「はーい」


 火口まで行きたいけれど、1日で往復できる距離には限界がある。麓から見ると富士山みたく結構なだらかに見えるけれど、実際に登ると傾斜はきつい。フェンリルのいるとい言われている山より切り立ってはいないけれど、それでも登って下りるには3日はかかるんじゃないかと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る