第38話 あなた様が死ぬと私も死にます
フローラについていくと魔の森の入口だった。
「お兄たんを連れて来たよ〜」
フローラがそう言うと何の物音もせず、以前助けた森の妖精が2人現れた。ただし前に助けた方は裸で青白く透けていて幽霊みたくなっていた。
「そうだよ、お兄たんがチーたんの主なの」
『・・・』
「わたちと同じ色の髪の方がお兄たんだよ」
『・・・』
フローラは会話をしているみたいだけど森の妖精の方は言葉を発していなかった。
『失礼しました、あなたがフローラさんのお兄さんですか』
「えっ・・・あ・・・はい、僕がフローラの兄だよ」
青白く透けた森の妖精の隣にいた方の透けていない森の妖精が僕の方に近づき手で僕の頭に触れると、そちらも青白くなって透けて服が脱げ落ちた。そして僕の頭に声が聞こえて来た。動いていないので聖獣達と同じように思念のようなもので話しかけて来ているのだろう。
『私はドライアドのティアと言います。以前私の姉テトを助けて下さり有難うございます』
「あっ・・・助けたのは君のお姉さんだったんだね、どういたしまして」
森の妖精ってドライアドって言うんだ。あと助けた相手は男だと思ってたけど女だったんだ・・・。
『私はあなた様に宿らせてもらいました』
「宿らせて?」
『私たちは同種の存在同士で会話が出来ますが、それ以外の方とは宿ったものとしか会話をする事が出来ないのです』
「チーたんと同じ?」
『えぇ・・・あなた様がチーたんと呼んでいるカラドリウスと同じと思って下さい』
「わかった・・・それで半透明になったのは何故?」
『肉体が無くなり精神だけの存在になったからです』
「えっと・・・死んだって事なの?」
『肉体を失い精霊になっただけです』
精霊になるって何だ?フローラとバーニィの方を見たけど僕の声しか聞こえて居ないため不思議そうな顔をされただけだった。
「精霊・・・宿るって僕と会話が出来るだけなの?」
『いえ、私はあなた様からマナを貰います、さらに追加でマナという対価を頂ければ我々の力をあなた様が行使する事が可能になります』
「マナって何?」
『あなた達が魔力と呼んでいるものです』
「なるほど・・・チーたんと同じだね」
『えぇ同じと思って下さい』
「それだけ?」
『私はあなた様の命令には逆らえなくなります、そしてあなた様が死ぬと私も死にます』
「えっ?」
彼女がどんな力を使えるのか知らないけど、そんな重い対価を相手に強いたくはない。
「そんなの良いよ! 逆らえないなんてならない方がいいよ!」
『我々は生涯に1度だけ定めた相手に宿る事が出来ます、そして一度宿ると、解除出来ません』
「え・・・それってウサたんやチーたんも?」
『いえ、カーバンクルやカラドリウスは、宿っても肉体を残すので違います。我々と違い肉体にマナを残しているので命令に抗う事も可能です。肉体で自らマナを生み出す事が出来るので、定めた相手が死んでも死にません』
それは良かった。聖獣はすごく長生きみたいだし、僕が死ぬことに巻き込まれるなんて可哀想だ。
『テトはフローラ様がカラドリウスの契約者だと思い、フローラ様に宿ってしてしまいました』
「あぁ・・・フローラがテトを助けたと思ったんだね?でもテトを見つけたのはフローラと契約しているウサたんだよ?」
『テトは癒したものに宿るよう母から言われておりました』
「母?」
『あなた達がトレントと呼んでいる存在です』
「ドライアドってトレントの子供なんだ」
トレントは魔獣の事が書かれた本に木の魔獣の欄に書いてあった。木に擬態し油断したところを襲ってくる魔獣だ。迷いの森に多く生息しているらしい。
『はい、ドライアドは地に宿ればトレントに、生き物に宿れば精霊になります』
「ティアは僕に宿って精霊になったんだね?」
『はい』
ドライアドってトレントにとっては種みたいな存在なのか・・・。
「でも何で僕に?」
『テトが宿る相手を間違えたからです』
「それは必要な事なんだね?」
『はい、恩を頂いたら返す物です、テトはあの時死ぬ運命にあったので、全てを差し出す必要がありました』
「ティアは関係ないじゃないか」
『同じトレントから産まれたドライアドは一心同体です、テトが恩返しに失敗したら次のものが恩返しをします』
「そうなんだ・・・」
在り方の話っぽいからこちらに害が無い限りとやかく言う事では無いのかな。
『ドライアドが生き物に宿る事にもメリットはあります。トレントは宿っている地が手狭になると、我々ドライアドを鳥や狼に宿らせて新たな地を探させるのです。我々はドライアドのままでは母であるトレントからは長い時間遠くに離れられません。精霊になったものが外を旅して母に世界を伝える事で姉妹のドライアド達を遠くに導けます』
「なるほどね・・・」
ドライアドが種だとすると精霊はそれを遠くに運ぶための綿毛みたいなものか。
『ご主人様にお願いがあるんです』
「アニーで良いよ・・・それで何?」
『我らを助けて欲しいんです』
「助ける?」
『我らの同朋の多くがバジリスクに石化させられております。チーたん様のお力で癒やして欲しいのです』
「なるほど・・・良いよ?」
『感謝いたします、では行きましょうか』
「えっ?今から?」
『そんなに遠くはありませんから』
「そうなの?」
ティアが一つの木に触れると手がズズズと入っていった。
『さぁどうぞ・・・一瞬でつきますから』
「フローラとバーニィも一緒で良い?」
『バーニィ様というのはフローラ様の隣にいる方ですか?』
「あぁ、友達なんだ」
『マナを10倍ほど使わせて貰いますが宜しいですか?』
「それぐらいなら大丈夫」
『では宜しいですよ』
僕たちはのやり取りを黙ってた聞いていたフローラとバーニィの方を向くと、ティアの手が木に吸い込まれている所を驚いた目で見ていた。
「森の他の妖精達の所に連れてってくれるんだってさ、残っても良いけど、行きたいなら付いてきてよ」
『・・・』
「わたちはテトが連れてってくれるって」
「も・・・もちろん行くよ!」
フローラは勿論バーニィもついてくると言うので連れて行くことにした。
森の妖精がいっぱいいるところか・・・楽園のような場所なんだろうな・・・。
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