第37話 君もTSっちゃったのか

「君がアニーなのかい?」

「君は・・・えっと・・・誰?」


 べヘム村に誰かがやって来る事は珍しいのだが、妙にキラキラした男がやって来た。しかも黒髪黒目で肌が少し浅黒く、東洋系っぽい感じがするので親近感が湧いた。


「シルバー級冒険者のバーニィって言うんだ」

「えっ! 冒険者!? しかもシルバー!? いくつなの?」

「9歳だよ」

「えっ! 僕と同じ歳なのにすごいねぇ! 僕も冒険者になりたいんだ! どうしたらなれるの?」

「6歳で加護を貰ったら誰でも冒険者登録出来る筈だよ」

「マジで!?」

「マジだよマジマジ」

「それならエルムの街にいる時に登録に行けばよかったよ」

「君ならすぐにシルバー級ぐらいにあがるでしょ」

「えっ?そうなの?そうだと嬉しいなぁ」


 冒険者って意外と簡単になれるんだな。


「そういえば何しにこんな辺境の村に来たの?」

「君に会いにだよ」

「えっ?僕?」

「そうそう、リーナに聞いてない?」

「リーナ?・・・バーニィなんて人の話なんて聞いたこと無いよ?」

「帝国の皇子だって言えば分からない?」

「帝国の皇子・・・ってバーナード皇子の事かっ!」

「そうそう、長いからバーニィって呼んでくれよ?」

「分かったよバーニィ、僕は・・・略せるような名前じゃないからアニーな」

「了解アニー」


 この男の子がリーナが言ってた転生者か・・・随分と陽キャっぽい奴なんだな。


「黒目黒髪っていいよなぁ・・・」

「そう?帝国ではありふれてるよ?」

「そうなんだ・・・いいなぁ」

「僕には君みたいなストロベリーブロンドに緑色の瞳の方が羨ましいけどな」

「そうなの?なんかナヨッちくない?」

「可愛らしくはあるね」

「だよなぁ・・・フローラみたいな女の子なら似合うんだろうけどさ」


 フローラも僕と変わらない髪色をしている。フローラは瞳の色が茶色だけどね。


「うん?君は女の子だろ?」

「あぁ・・・実は中身が男なんだよ・・・リーナから聞いてないの?」

「知らなかった・・・君もTSっちゃったのか・・・」

「君も?」

「僕は中身が女なんだよ」

「マジ!?」

「マジだよマジマジ!」


 3番目の転生者は僕と逆パターンのTS転生者らしい。


△△△


「へぇ・・・結構若い時に死んだんだね」

「あぁ・・・先天的に心臓が弱くてさ、学校に通いながらの通院生活、遂には高校2年頃からは死ぬまで入院しっぱなしだったよ。だからこの世界に産まれて自由に体を動かせる事が幸せなんだ」

「それで冒険者になったんだ・・・良いなぁ・・・」

「君もなればいいじゃん」

「冒険者にはすぐなるよ、でも「日」の加護のせいであまり動くなって言われてるんだよ・・・」

「そうなんだ・・・「人」の加護で放任されちゃった僕と逆だね」

「あれ?そういえばヤハー様に、もう一個加護があるって言われなかった?」

「「山」があるって言われたよ」

「「空」に「海」に「山」かぁ・・・次は「川」とかかな?」

「「谷」かもしれないよ?」


 4人目っていそうだよなぁ・・・パターン的に普通に男が男に転生したパターンでさ。


△△△


「お兄たん・・・隣にいるのはだぁれ?」

「友達のバーニィだよ」

「アニーの友達のバーニィだよ」

「フローラだよ」

「バーニィはリーナの友達でもあるんだって、あとミスリル級の冒険者だってさ」

「リーナからアニーの事を聞いて会いに来たんだ」


 急に寒気がしたと思ったら、フローラの雰囲気が変わった。目の瞳孔が広き瞬きをしないままバーニィをじっと見つめていた。


「お兄たんはわたちだけのお兄たんだからね?」

「どういう事?」

「フローラにとって僕は唯一のお兄ちゃんらしいんだ」

「フローラのお兄たんを取っちゃらめなの」

「大丈夫だよ、フローラのお兄さんは取らないから」

「良かったな」

「・・・うん・・・」

「随分と複雑な事になってるんだね・・・」

「複雑?何が?」


 暖かい風が吹いたと思ったら、フローラがいつもの雰囲気に戻っていた。


「刺されないようにね?」

「何に?」

「分からないなら良いよ・・・」


 何に刺されるんだ?最近羽虫を寄せない風魔術を使い続けているから虫にはさされないぞ?


「キューキュー!」

「あっ・・・そうだ、森であった人がお兄たんを呼んでるよ」

「森で会った人?」

「ほら、お手々とあちがいちになっいた人いたでしょ?」

「あっ・・・えっ?」


 森の妖精が僕に会いに来たって事?


「話が出来たの?」

「出来たよ?」


 フローラは何を当たり前の事をという顔をしている。どうやらフローラは森の妖精と会話が可能らしい。


「バーニィ・・・」

「なんだい?」

「会いに来たのは森の妖精だ、迷いの森の妖精とは違う種族らしいけどね」

「は?」

「もし彼らと意思の疎通が出来るならバーニィの目的が前進しそうじゃない?」

「あぁ・・・」


 バーニィの目的は迷いの森の妖精が人を襲い出さないようにすることだ。意思の疎通が出来なかったとされる森の妖精とフローラが意思を交わせた事は非常に大きな意味を持つのではないかと思う。

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