第28話 こいつら手際が良すぎじゃい
「キューキュー!」
「オーク2匹しゃんじ方向500メートリュ!」
「よし来た、「雷轟」、罠までおびき寄せるぞ!」
「「おう!」」
「こいつら手際が良すぎじゃい」
「ウサたん凄いわ・・・」
「チー・・・(私だって・・・)」
「チーたんは活躍しない方が良いんだよ」
「魔の森はこんなにヌルい場所じゃない・・・」
ヨウムお爺ちゃんに、僕とリーナを泉に連れて行って欲しいと相談したら、森での活動に耐えうるか試験が行われる事になった。結果、戦闘員として来た全員が合格を貰い、希望者の中でフローラだけが不合格となった。
けれどその結果にエルム領の騎士達と「雷轟」13番隊の皆が猛反論。じゃあ試しに浅い場所にと連れていった所、ウサたんの索敵力とフローラの通訳により魔の森がヌルゲー化してしまった。
お爺ちゃん達でも見逃しヒヤッとする事があるという、隠密に特化したキングカメレオンやフォレストパイソンやビッグアントライオンも確実に見つけ教えてくれる。
タートルドラゴンのような防御力が高い魔物以外は大丈夫だとお墨付きを貰い、泉まで片道2日がかりで向かうことになった。
ちなみに防御力が高い相手は僕かリーナが手加減無しでやればブチ抜けるのではと思う。多分大規模な森林破壊が起きるから最終手段だけどね。
「ふぃ〜一発だけもらっちまったぜ」
「油断するからだっ! ここは魔の森だぞっ!」
「チーたん出番みたいだよ」
「チー!(わーい!)」
「雷轟」のボブがオークの棍棒の一撃を貰ってふっ飛ばされたようで鎧がひしゃげ、肌着が破けていた。胸が揺れないように巻いてあるサラシが見えていて少し色っぽい感じになっていた。
普段は色気が皆無の「雷轟」13番隊のみんなだけど、戦闘の緊張で興奮状態だった野郎どもには刺激が強いらしく、凝視して固まっていたり、赤くなって顔をそむけたりしていた。
「ボブ! お前の今を見て興奮してる物好きが居るぜ!」
「うるせーよっ! 俺も一応女だぞ?」
「説得力ねーって!」
「お前ら緊張感を持てよ・・・ここは「魔の森だって言うんだろ?」」
楽勝が続き弛緩ムードになっているようだ。あまり良くないように思えるけどお爺ちゃん達はニコニコしている。
「大丈夫なの?」
「ああ見えて誰も油断してないわい、空気を弛緩させて緊張をほどこうとしとるんじゃよ」
「そうなの?」
「緊張っていうのは強すぎると長続きしないしの、それに夜営で眠れなくなったり視野が狭くなったり、時には幻聴や幻覚に襲われたりと毒にもなるんじゃ、余裕がある時は適度に弛緩するのも大事なんじゃよ」
「そうなんだ・・・」
「キューキュー!」
「11時方向から黄金樹の実の匂いがちまちゅ」
「おいおい・・・実1個で金貨3枚だぞ」
「キュー!」
「黄金樹のちたにコカトリチュがいまちゅ、400mしゃきでちゅ」
「実が落ちるのを待ってるパターンか・・・」
弓を持っているのはアンナお婆ちゃんとリーナだけだ。けれどリーナの軽弓では威力不足だろう。
「ローズ、行きましょうか」
「了解」
コカトリスには見たものを石化させる力がある。だから普段は目を閉じているのだけれど、撃たれたら目を開ける。
撃ったあと目線をきれれば良いけれど出来ない場合は危険だ。だから「堅土」と言われるローズお婆ちゃんによる土壁が必要になる。
「儂らは待機じゃな」
「休憩して待とう」
お爺ちゃん達は余裕の態度だった。お婆ちゃん達が失敗するとは全く思ってないようだ
「チーたん一応ついていって」
「チー!(分かった〜)」
チーたんの癒し効果は石化を治すのにも有効らしいのでお婆ちゃん達を見張って貰えば万が一は起きないだろう。
10分程待った頃に「ギェ〜!」っという鳴き声が聞こえて来た。
「仕留めたようじゃの」
「そうなの?」
「あれは断末魔の声じゃの、警戒の声はもっと甲高く断続的なのじゃ、それが無いと言うことはそのままくたばったって事じゃよ」
「なるほど・・・」
「コカトリスの肉は美味いからの、休憩がてら食べようかの」
ヨウムお爺ちゃんの声にみんなの歓声があがった。王族が買い占めに走るコカトリスの上異種にあたるビッグコカトリス程ではないけれど、コカトリスの肉でも貴族の専属仲買人たちが競売をし始めるぐらいの高級肉なんだそうだ。
「チー!(仕留めたよ!)」
「ご苦労さん」
ヨウムお爺ちゃんの言ってる事は間違いない無いようで、戻って来たチーたんの報告で裏付けが取れた。
「泉はあと2時間ぐらいじゃ、コカトリスで腹ごしらえしたあとは一踏ん張りじゃぞ」
「「「おう!」」」
既に結構泉の近くまで来ているらしい。残り時間が示されるとやっぱ元気が出るよな。チーたんのおかげで肉体は常時回復状態とはいえ、緊張によって生じる精神まで常時回復とはいかないのだ。
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