第19話 お互い大変な立場だね
「ようこそお越しくださった、マグダラ公爵令家のエカテリーナ嬢。エルム領領主のミュラー・エルムです。こちらは妻ゼノビアと娘のフローラ。そしてあちらに居るのが当屋敷に逗留しているマリア・ナザーラ男爵夫人と娘のアニー嬢です」
「エカテリーナ・マグダラです。こちらは私の護衛隊長のザック・バーディスと、身の回りの世話をしている傍仕えのエバンスです。しばらくお世話になります」
「こんな辺境まで大変だったでしょう」
「風光明媚で道中大変目の保養になりました」
「それはようございました、是非ゆっくりとご逗留下さい」
「ありがとうございます」
僕と同じ転生者らしいエカテリーナ・マグダラが来訪した。フローラ宛ての手紙に「SOS」と分かる文字が書かれていた時には驚いた。試しに僕が代筆を申し出て「OK」を分かる文字を書いておいたら。僕宛てに手紙が来るようになった。
最初は「Where are you from」と書かれていたので、「JAPAN」と書いたら日本語になった。
手紙が検閲されている可能性も考えているようで短文のやりとりだったのだけれど、現地語の手紙の方に「こちらは王都の方に比べて自然が多く景観が素晴らしいです」と書いたら「それは訪れたく思います、今度お父様に相談してみます」と返事が来て、こちらにやって来る事になった。
「キューキュー!」
「よろちく、フローラだよ、こっちはウシャたん!」
「チーチー!(よろしくね!)」
「仲よくしような、僕はリーナ、こっちはチーたんだよ」
僕がカラドリウスの事を「シマエナガみたい」と言ったら、フローラが、それなら「チーたんだね!」と言った。多分「シーたん」だと言いたかったのだろうけど、フローラは舌足らずなため「さしすせそ」が「たちつてと」になるため「チーたん」になってしまったようだ。
カラドリウスが自分の名を「チーたん」だと認識してしまったため定着してしまった。鳴き声も「チーチー」なので似合っていると思いそのままにしている。
「リーナさんは僕っこですのね・・・」
「僕は男の子なんだよ」
「お兄たんなのよ?」
「なるほど・・・」
どうやら前世が男であった事はエカテリーナ嬢にしっかりと伝わったようだ。
△△△
「やっと話が出来るね・・・」
「はい・・・」
エカテリーナ嬢はマグダラ公爵から帰るように言われるまでずっと滞在するつもりらしい。数日お互いに交流を持ち打ち解けてきた事で、護衛達の緊張がゆるみ、僕とエカテリーナ嬢が2人きりで話す事が出来る場所を作る事が出来た。
「お互い大変な立場だね」
「えぇ・・・特に私は悪役令嬢として死ぬ運命にあります」
「実は僕はアニメ版を少しだけ見ただけであまりゲームの方は詳しく無いんだ、内容を詳しく聞きたいんだけど良いかな?」
「はい」
ハッキリ言って僕にはゲームの知識が皆無だ。だけどそれだと相手に主導権を握られ過ぎてしまう。だからエカテリーナ嬢からなるべく情報を引き出さなければならないと思った。
「なるほど・・・僕は最後に魔王と戦わなければならなんだね?」
「はい・・・私はアニメ版を最終話まで見る前に死んでしまったのでそちらが詳しくありません。ただどのルートでも魔王とは戦います。ゲームでは魔王討伐後のストーリーもありますがアニメの話の進み具合的に魔王戦までは進まなかったと思ます」
「エカテリーナ嬢が亡くなったのは西暦何年なの?」
「2024年です」
僕は驚いた。その年に僕の妹が死んでいたからだ。
「なるほど・・・僕は2064年9月まで生きた記憶はあるけどアニメがどこまで続いたかまでは知らないね」
「私より随分と後の方なのですね」
「エカテリーナ嬢は何歳で亡くなったの?」
「24歳です」
一致している、僕の妹が死んだ年齢と同じだ。
「それは随分と若い時に亡くなったんだね、僕は69歳まで生きたからね」
「それだと・・・私より5歳年上だったんですね」
「そうだね、君は前世の妹と同じ歳だよ」
「へぇ・・・妹さんがいたんですね・・・」
「あぁ・・・」
僕はなんとなく目の前の女性が妹なのではと思っていた。よく見ると仕草にも名残があるよう思える。
「君にも兄弟はいたの?」
「えぇ・・・あまり仲は良くなかったのですが5歳上の兄がいました・・・」
「なるほど・・・」
もうお互いに分かっていた。エカテリーナは目に涙を溜めている。俺達は前世で兄妹だったのだ。
「リナか?」
「・・・兄貴だったんだね・・・」
まさか兄妹が異世界で再会するとは思ってもいなかった。妹にとっては約7年ぶり、俺にとっては約47年ぶりの再会という事になるのだろう。
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