第11話
お礼を言って図書室を出て教室に戻る。
「あれ?安藤ってば図書室行ってたんだ。珍しいな」
本をカバンに入れようとしたときに永田君が声をかけてきた。
「なんていう本借りたんだ?」
本を永田君に渡すと表紙をしばらく見た後、パラパラと中身を確認していた。
「こんな本も置いてるんだな、うちの図書室。もしかして今朝の話に触発されて選んだとか?」
「ううん。この前別な本読んで、司書さんに他にお薦めの本ありませんかって聞いてたのね。それで、さっき図書室行ったらこの本を出してくれたの。こんな偶然もあるんだね」
「だな。今、アタマのとこ流し読みしたけど、なかなか興味深い事、書いてありそうだよ。安藤が返したら、俺も借りてみようかな」
「そう?じゃあ、読み終わって返す時に教えるね」
「おう」
授業も無事に終わった放課後。
それぞれ彼氏と帰るという有紀と佳織に、今夜のグループトークの予定を伝えた。
「約束通り、今夜ちゃんと話すから。時間は九時からね。でも、大した内容じゃないよ?」
「それでも、聞きたい。ね、有紀」
「もちろんよ。もう、昼ごはん食べてる時にどれだけ聞き出したい気持ちをおさえてたと思うの?」
ふたりとも、目がキラキラしてる。
有紀……やっぱり可愛い。
二人きりの昼ごはん──きっと最初で最後だろうな。
来週からは加藤君のお弁当作るって言ってたし、そうしたら二人で食べるだろうし。
いい想い出ができた……ということかな。
夕ご飯が終わって自室でくつろいでいるときに、ふと思い出した。
(そういえば、遠藤君にちゃんと謝ってない)
時計を見ると八時半をまわったところだった。
(まだ時間あるし……)
スマホを手にとってアプリを立ち上げ、遠藤君のアイコンをタップして開く。
昼間に送ったメールは、ちゃんと既読となっている。
画面上の受話器マークをタップする。
『プルルルル……』
呼び出し音が数秒鳴る。
「は、はい!」
遠藤君が出た。
「あ、遠藤君、ごめんね。今、大丈夫?」
「あ、え、あ、うん。だ、だいじょ……ぶ。って、え?あ、え?なんで?」
あ……先にメールで、今から電話いい?って聞けばよかったかも。
いや、でも、驚きすぎ。
「ごめんね、驚かせちゃった?えっとさ、昼間メール送ったでしょ?あのことなんだけど」
「あ、ぼくに謝りたいって……ことだったよね?」
「うん。ほんとゴメンね。つい、勢いで」
「あ、ぼくなら気にしてないっていうか。みんなに知られたのは照れ臭いけれど。結果的にはよかったかなって思ってる」
「だったらいいけど」
「でも、びっくりした。連絡先、交換してはいたけれど、まさかほんとにメールとか電話もらえると思ってなかったから」
「だって、何かあった時のために交換したんだもん……でも、驚かせてごめんね。じゃあ、また来週ね。おやすみなさい」
「うん。おやすみなさい」
通話を終えて時計を見る。
そろそろ九時……約束の時間まで、もう少し。
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