第5話

 「あ……うん。そっか。そうだよね」

そこで納得されても困るんだけど。

それにしても永田君、さすが野球部副キャプテン。

まとめるのが上手いわ。

 

 「ごめん……里穂。今さらだけど、お弁当とか、一緒に食べよ?」

「うん。ありがとう」

「で、渡辺に松本。安藤にだけ謝るの?他にも相手、いるんじゃね?」

永田君が遠藤君に視線を向ける。

 

 「え?ぼ、ぼく?ぼくは別に」

両手を前につきだしてブンブンふりながら遠藤君が言う。

「いや、謝ってもらう権利はあるぞ?」

「安藤さんとのうわさだったら、ぼくは……」

 

 「それとは別。さっき遠藤が言ってた渡辺たちの会話。あれ、たまたま俺も聞こえてたの。……そのあとの会話もね」

みはるたち、またバツが悪そうな顔してるけど?

「あの後、言ってたよな。『今すれ違った遠藤君とか……ありえな~い』って、笑いながら。あのさ、言っていいことと悪いことってあるんだよね。というか、お前たちの声、デカすぎ」

 

 うわ……そんなこと言ってたんだ。

たしかに遠藤君のこと『陰キャ』扱いしてたけど。

そういう陰口は……イヤかも。

「ほら、遠藤にちゃんと謝れよ?」

 

 「……遠藤君も、ごめん」

「あ、うん。ぼくは大丈夫」

遠藤君が答える。

というか、あんなこと言われても怒らないなんて。

 

 「遠藤君も、安藤さんもゴメン。僕が余計な事、言っちゃったから」

「水元君?どうして君が謝るの?」

遠藤君のそばに、水元君が申し訳なさそうな顔で立っている。

「僕が『昨日、安藤さんを送ってあげてたんだ』って言わなかったら、こんな騒ぎにはならなかったんじゃないかと思ってね」

 

 「それでも、そのおかげで色々誤解とか解けたから、結果オーライでいいんじゃね?」

永田君が言う。

「だったらいいけど。……昨日さ、外が暗くなってるのに安藤さんが廊下をひとりで歩いてるのが見えて。駅まで送ってあげたいけど、仕事残ってるしな……って思いながら、一応昇降口まで追いかけたんだ。そしたら遠藤君が一緒に歩いてるの見えて。ああ、彼が一緒だったら安心だなって。おかげで仕事も終えることができて。だから今朝はお礼が言いたくて、ああ言ったんだ」

 

 そうだったんだ。

「おーい。話はすんだか?そろそろ朝のHR始めたいんだがな。みんな席につけ~」

いつの間に来ていたのか、森口先生が教卓の前に立っていた。

「先生、いつの間に……」

水元君が言う。

ほんとに、いつからいたんだろう?

と言うか、クラスの誰も気づいていないなんて……忍者?

 

 「そうだなぁ。『なぁ、じっと見てたら好きってことになるんなら、お前らこそ安藤の事が好きってことになるんじゃねぇ?』あたりだったかな」

それって……かなり長い間見てたってことじゃない。

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