第4話

 「はぁ?なんでそんなことになるのよ?」

みはるが心外と言った口調で言い返す。

「だって、そうだろ?さっきから聞いてると、お前らふたり安藤のストーカーか?って思うくらい行動見てるし」

「そっ、それはたまたま……」

 

 「たまたま、とは言えないレベルで見てるように思えたけどな。少なくとも俺はなんて気にならないし」

……そういえば、遠藤君が言ってたな。

『ぼく、安藤さんが好きで、ずっと目で追ってたから──だから気がついたんだ』

みはるたち、私のことを見てたの?

見てたというか見張ってたレベル?

やだな……みはるたち、なんか気持ち悪いんだけど。

あれ?でも遠藤君には気持ち悪いって思わなかったな。

 

 「なんかさ、見てるというか監視かよってレベル。まぁ俺の個人的感想だから、お前らの意図とは違うかもしれないけど」

「私……私たち別に里穂が好きとかで見てたんじゃないわ。ちょっと気になっていたのは、認めるけど」

「見てたのは認めるんだ」

ふぅんといった感じで永田君が言う。

 

 なんで、見てたの?

理由が知りたい──ふと視線を感じた。

永田君が私を見ている。

そうだよね、私だけに問いただす権利がある。

 

 「なんで、見てたの?理由を教えて。好きとかって感情でないのは信じるから。何が気になったの?」

「里穂が、寂しがってるんじゃないかって」

みはるが答えた。

「私が、寂しがる?」

 

 「仲良し三人組の有紀と佳織に彼氏ができたから。ひとりになって寂しいんじゃないかって」

「ほぁ?」

間抜けな声が出てしまった。

 

 「それって……」

ずっと黙っていた遠藤君が口を開いた。

というか、一番の当事者のはずなのに存在を忘れてたわ。

「それって、この前言ってた『うん、いなかったと思う。と、いうかさ、理想とかすごく高そう……どんな人が彼女ののかな?』に関わってくること?」

 

 「え?」

みはるたちが驚いた顔で遠藤君を見ている。

「そ、うだけど。なに?あんた。いつ、その話聞いたの?私たちの会話、こっそり盗み聞きしてたの?イヤラシイ」

「イヤラシイって……渡辺さんたちが図書室に行きながら、廊下で話してたんじゃない。ぼく、ちょうどその時すれ違ったんだよ」

 

 「なんだよ?もしかしてただの好奇心?それともお節介?」

永田君が言った。

みはるたちはバツが悪そうな顔をしている。

なにそれ──ただの好奇心とかお節介、なの?

 

 「お前ら、なぁ。ワイドショーのゴシップネタ好きなオバサンじゃないんだから。他人の恋愛にクチバシ突っ込んでるんじゃないよ。誰が誰を好きだろうと、誰かとつきあおうとつきあうまいと、そんなの個人の自由じゃん」

「だって……」

「安藤が寂しいかどうかは、本人の感じ方次第だろ?それで、どう過ごすかも安藤次第。そんなに安藤がひとりで寂しそうって心配だったら、ただ見てるんじゃなく、自分らと一緒に過ごそうって誘うのが筋じゃないか?と、俺は思う」


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