第3話
教室に近づく。
ガラッ!
わざと大きな音を立ててドアを開ける。
「あ!彼女のお出ましよ!」
みはるの声がする。
私は机にカバンを置いて、みはるの前に行った。
「彼女って?なんのこと?」
私はできる限り感情をおさえた声で問いかけた。
みはると、隣に立つ倫子のことを交互に見る。
見るというより、睨みつけてたかもしれない。
「彼女って、そのままの意味よ。里穂と遠藤君ってつきあってるんでしょ?」
「つきあってなんか、いないわよ。告られたことはあったけど、断ったし」
私は心の中で(ゴメン)と遠藤君に謝りながら、そう言った。
「じゃあ、なんで昨日も、この前も二人で帰ってたの?昨日は踊り場のところで話しこんでたの、見たんだから」
「この前一緒に帰った時は、森口先生に手伝いを頼まれた時。時間が遅かったけど、先生が忙しくて送れないからと遠藤君に頼んでくれたの。昨日は、図書室で用事済ませてたら遅くなっちゃって、たまたま残ってた遠藤君が暗くて危ないからと一緒に帰ってくれた。踊り場のところで話してたのは、聞きたいことがあったから図書室で話しかけたけど、図書室はおしゃべり禁止だから場所を移動したの。というか、クラスメイトとふたりで帰ったり話したりしたら、それだけでつきあってることになるの?それって、めちゃくちゃ短絡思考だと思うんだけど」
「だって、仲よさそうに見えたし」
「クラスメイトなんだもん。仲がよくて何が悪いの?」
「だって、男子と女子なんだよ?つきあってるって思われても仕方がないじゃない」
「性別が違う同士だったら、仲がよさそうっていうだけでつきあってることになるの?」
「だって、同性同士ではつきあったりしないじゃない。そもそも同性同士でつきあうとかヘンだし」
「同性同士はヘン?そういう考えは偏見だと思うけど?」
「……そういえば里穂って、倫子が借りてきた本見た時もそんな反応してたよね?もしかして、里穂がそうだから、そんな反応するんじゃない?」
「そうって、どういうことよ」
──バレるはずはない。
私の想いは、バレてはいない……遠藤君以外には。
「里穂ってば、女子が好きなんじゃないの?」
「違うわ」
私は即答した。
そう、女子が好きなわけではない。
「そぉう?時々有紀のことを目で追ってる時があるみたいだけど?」
「そりゃあ、見るわよ。大事な親友なんだもん」
「ふぅん?なぁんか違う目で見てたようだったけど?」
ニヤニヤと笑うみはると倫子。
──ムカつく、けど見てたのは事実だし、こいつら何を言っても聞かないだろうな。
「なぁ、じっと見てたら好きってことになるんなら、お前らこそ安藤の事が好きってことになるんじゃねぇ?」
急に男子が話に割り込んできた。
永田君、だ。
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