待ち合わせ
@ArakawaA
待ち合わせ
はじめまして細胞のひとつぶひとつぶが愛を語り始める日
ふくらんだお腹を抱え麺すするまだ見ぬ子に絡まりはせぬかと
立ち会いに制限時間設けられありったけの祈りを煮つめる
産みおとす母の呼吸が春キャベツやわらかく煮る沸騰前夜
子が生まれわが半分妻の血になった気がする三十二の朝
出産の恐怖と孤独を飲み干した妻の椎骨なぞり泣くやも
静かに沐浴する幼子は椎茸のように出汁がでている
子の裸がラム肉にみえた風呂上がり愛は狂気の一種だと知る
離乳食にたたみこまれた妻の汗愛はなまもの小さきからだへ
もしこの愛にカビはえたならそのカビはきっと透き通ったまま蒸す
愛情か使命感かわからぬまま走馬灯のごと日々は過ぎゆく
真夜中に一生懸命伸びをする吾子のさやぎのはだざわり
春の田を縫い合わせゆく足跡は小鳥と猫と吾子と詩人
踊りあがる炎のような喜びがふと湧き上がる子の散歩道
コーンスープのクルトンを世界中から集めたしと吾子の餐は
子の食べ残したりんごのカケラが田舎の母の手の甲に似ており
フルートのような背骨ふるわせママパパと力の限り奏でる子
めしべを這う小さき小さき羽虫のように二歳児は地球を歩く
一枚の家族写真を見つめおりすべての巡り逢いの一瞬よ
本当はずいぶんと昔からきみたち家族と待ち合わせしてたんだ
待ち合わせ @ArakawaA
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