第5話






『困ったなぁー困ったでぇー』

「何を困ったん? 順調にランク上げてるやないの?」

『そのクラのアホさがいちばんの原因やって!』

「ええ……(困惑)」


なんかあったかな?


『命狙われたのにその顔! それも3回』

「あんなのこの街じゃよくあることやろ?」

『そんな物騒じゃねーよこの街!?』

「だって冒険者なら道をすれ違う時、避けるのが普通なんやろ?」

『なんでこんな物騒な子に育ってもうたかな……(遠い目)』


カッラーーーッン


人通りの少ない路地に遠くまで滑る甲高いナイフの音を思い出した。


ワイの進路を塞ぐように何人かの冒険者が立ちふさがったから、何人かの腹をぶん殴ったんや。


天ちゃんが刃物を持った冒険者同士だからすれ違う時は避けるのがマナーって教えてくれたんやで。こんだけ響く音鳴ったらすぐに人の注目を集めたわ。そしたらすたこらと逃げてった。


あんまり命狙われたいう感覚はなくて、マナー違反を体で教えたって感覚やな。


『返り討ちにするのはええけど、こんな悪目立ちすると仲間なんてできんで?』

「それは困るなぁ」

『少なくともクラのやらかしに動じないくらいメンタル強い常識人じゃないとあかんな。って矛盾しとる存在やんっ!?』

「メンタ? ムジュ?? ときどき天ちゃんは難しいこと言うなぁ」

『……ワシのフォローももうそろそろ限界や仲間探しは急務やで』


よくわからんけど急ぎで仲間が必要らしい。天ちゃんが言うならそれが正しいんやろう。


「なあ、常識的な仲間おらんか?」

「は?」

『ワシの言ったことの変なとこだけ切り抜いとるぞ』


言葉って難しいな。


受付のねーちゃんになんとかがんばって、ワイが仲間を探していること、強さは置いといて頭が良い人を紹介してほしいことを伝えた。


「頭が良い人は何人か心当たりがありますが……」


ねーちゃんは何か考えてるようだった。


「ならその人紹介してくれや」

『お前がアホやから紹介していいか迷ってるんやろがい』

「ワイがアホやから!?」

「自覚あったんですね」

『嬢ちゃん本音が出とるで』

「おほん。紹介したい子がいます。E級で燻ぶっていますが、良い子がいます」

『とりあえず一回会ってみよか。最大の難関はクラに耐えれるかどうかやで』

「(なんでやっ)わかったで紹介お願いするわ」


いつもなら昼にはくるらしいから、モンスターの解体の手伝いしてお小遣い稼ぐで。


「ボウズ手際えぐいなっ」

「村のお手伝いしとったからな」

「お手伝い??」

『お手伝いは便利な言葉ちゃうぞ』


解体所のおっちゃんに驚かれたりしたけど、待ち人が来たみたいで呼ばれたで。


「紹介します、こちらリリィさんです」

「お、女の子や」

「まだ幼い男の子じゃないですか!?」

「10歳らしいですよ」

「その歳でD級。天才っ……」

「それほどでも(照れ)」

『アホやけどな』


リリィは14歳らしいで。おっぱい膨らんでてお子様やない女の子や。


「リリィはいつまでも1人で危なっかしいんですよ。それなのに女の子以外仲間にしようとしない」

「ならなんでワイなんや?」

「10歳ならまだ子供ですから。彼なら男性不信のあなたでも大丈夫でしょ?」

『なんか受付の嬢ちゃん、リリィちゃんの姉ちゃんみたいやな』

「…………アンリさんの言う通り、クラフトくんなら襲われるとは思わないです」

「ならペアが組めるわね。試しに一回組んでみない?」

「心配させてしまってすいません。やってみます」

『なんか嫌々感出とるなぁ。あん?』


おかんが言うとったわ。ワイには女の子のことは難しいから、迷ってもうなづいとけって。


「ワイもええで」

「パーティーを組むということで、ゴブリン狩りはいかがでしょう?」

「ゴ、ゴブリンっ!?」


ゴブリンの何が驚くんかワイはよーわからんくて首をかしげる。


「だってゴブリンといえば1匹見たら20匹いると思えと呼ばれるほど繁殖力の高いモンスターですよっ」

「20匹でも50匹でも数える前に倒してたらすぐに終わらんか? 自慢やないけどワイは数えるのは苦手やで」

『ホントに自慢やないなぁ。それとクラは脳筋すぎるわ』

「20匹は少なくないですよ? それに50匹もいたらD級の依頼レベルですからリリィが撤退を判断するのは間違っていませんからね?」

『ほら、ツッコミが追い付かへん』

「とにかくリリィちゃんと一緒にゴブリン狩りに出掛ければええんやな?」

「パーティーを組めば取り分は減りますがよろしいですか?」

『かまへんかまへん。余裕たっぷりやで』

「大丈夫や」

「よ、よろしくお願いします」

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