第3話





お掃除お掃除。ギルドでの初仕事やでー。


「おばちゃん、一回こんな感じでええか確認してー」

「はいはい。確認入れるだけ、今までの子より優秀だね――――なんだいコレは?」


おばちゃんの動きが止まったけど、すぐに動き出してワイが手を加えたところを穴が空くように見とる。


「雑草の根まで消えてるよ。ヘドロは袋の中に乾いた状態で入ってるし、この短い時間でどうなってやったんだい?」

「魔法やで」

「魔法?」

「ワイは昔から家の手伝いで魔法を使っていろんなことをやってたんや」

『ワシが育てた』


ワイがドヤると天ちゃんも後方師匠ヅラ(?)モードになった。


「こんなに綺麗に片付くなら文句のつけようがないわ。もしかして今日で全部終わりそうなのかい?」

「余裕で終わるで」

「この感じで全部やるなら銅貨60枚を出すわ」

「任せとき」


ワイに掛かればちょちょいのチョイや。夕方によりかなり前に終わらせたで。


「おつかれさん。もしよかったら明日もここに来てくれない? 近所に溜まってる掃除がまだあるのだけど」

「了解やで。朝からでええか?」

「朝早すぎるとバタバタしてるから、3の鐘くらいで来てちょうだい」

「3の鐘?」


どうやら街では鐘で時間を知らせるらしいな。日が昇ったら1の鐘、次は2の鐘。しかし不思議なことに、日がいちばん高いところに登ったら派手に鐘を鳴らして、また1の鐘に戻るらしいわ。最後に日が沈むときにまた派手に鐘を鳴らすんだと。


「なんでそんな風に鳴らすんや?」

『う~ん。たぶんやけど、日の長さが季節によって違うからやと思うで』

「なるほどー」

『ホンマにわかっとるんか? 冬は日が短いから寒いんやで』

「ほーん。ならお日様がよく出てるから夏は暑いんやな。なんとなくわかったわ」


時間を知らせてくれるのは便利らしいで。鐘の音をよく聞いとこ、村と違って街の人は時間を気にするらしいしな。


『そういや仕事の報告をする前に宿取っとき。宿がなくて野宿なんて勘弁やで』

「言われるまで考えてなかったわ。じゃあ戻っておばちゃんに聞いてみるわ」


おばちゃんは知ってる宿を教えてくれたけど、お金のことを心配してたわ。でもこう見えてワイは金持ってるんやで。そんな自慢をしたら――


「子供が金を持ってるだなんて自慢するとタカられるよ」

『街中で強盗されても殺すとめんどいことになるで。おばちゃんが言うようにそういうとこ気を付けや』

「ぐぬぬぬぬ」


高くなった鼻がポッキリや。





「ありがとね。まさかこんなに短い間で片付くなんてみんな思ってなかったみたいで感謝されたわ」

「こちらこそ、お昼ごはんありがとな」


次の日もお掃除をやったで。おばちゃんの家のお昼ごはんにお呼ばれしてお腹も満足やったで。報酬は昨日よりも多い銅貨75枚やったわ。


『クラはちゃんとお金を数え慣れるようにな』

「数えるのは苦手や」


昨日もそうやったけど、天ちゃんの言う通りに銅貨を10枚ずつ並べて、それが終わったと思ったら、おばちゃんに大丈夫って言えって言われるままやったわ。よくわからんかった。


『さっきのは10枚の列が7つと5枚で75枚だったやろ? 金額をちょろまかされないように並べるんやで』

「10枚? 7列?? 5枚……?」

『だめだこりゃ。それとおばちゃんはちゃんと前もってここまでやったら銅貨75枚払うって約束してたよな。それも大事やで』

「大事って、やらんかったらどうなってたんや?」

『悪い大人やったらちょろまかされたり、ゴネたりで受け取る金が半分になってたかもな』

「ええっ!?」

『そん時はギルドに泣きつくんやで。しりぬぐいをしたり、悪い依頼人を懲らしめるのもお役所のお仕事や』

「ムズすぎるわ……」

『世の中勉強して悪いことはあらへん』

「頭を使うのは苦手や」

『クラはこういうとこが心配やな。早く気が合う仲間が見つかるとええけどな』


天ちゃんが言うにはワイはかなり強いらしい。けどアホだそうや。


村ではワイの冒険についていけそうなヤツはいなかったし、天ちゃんも常識には疎いと自信なさげやった。しばらくは1人で活動して仲間を見つけたほうがいいって言っとったな。

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