山内の寿命が短いということじゃない、サエの方が長く生きそうだという話
未来が見えるか?
と問われれば、それは見えないという他あるまい。
山内とサエに聞いてみた。
「二十年後の自分が見えるか?」
山内は、なぜか目を輝かせて、
「子供が二人いてさ、大自然に囲まれて生活しているんじゃない? 私はほら自然が好きだ、ろ? そんであれだ、娘が薪で焚いた風呂に入んだ。ダンナ? ああ、ダンナはいないだろうねぇ。でも、生活費はもらえてる、感じ? な?」
サエは、真剣に考える素振りを見せた後に、
「やっぱり、そんなにはもたないと思う」
「もたない?」
「この世にいないと思う」
「……ああ、そう…」
「もう全然。十年後でも怪しいくらいだと思うから、安心して」
「安心? あなたが十年もたなくて、私が安心するの?」
「そりゃあ、まあ大人になってからバラされたら絶対困るだろうと思われるあなたのヒミツを、私はたくさん持ってるからねえ、ふふふ」
私は見えないものに対して心を動かすことはしない。
よって未来を悲観したり楽観したりすることはないが、興味はあるのだ。
私はなるようにしかならないのでどうでもいい。
しかし、こいつらがこれから先どんな風になっていくのかは気になるのだ。
率直な考えを述べれば、二十年後にこの世にいないとすれば、たぶんそれはサエではなく山内の方だと思う。
残念だけど。
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