友 垣.2
「――前線に立つにせよ、
いずれは解消することになる
カフルレイリが彼なりの解答を手土産に、さらに距離をつめる。
「解消することになるんですか?」
そこで、となりにきた講師に
「あたりまえだ。
友人であり続けることはできる。だが、どんなに馬が合っても〝墓までいっしょ〟とはいかないだろう。
なりゆきで、おなじ場所で
本人たちがそうしたいなら他人がとやかく言う
老いれば、能力も
いつまでもその均衡を維持できるものでもない。
引退の要因は、老衰や負傷・病気以外にもある。
必ずしも
最期……
「講師は、どうして《鎮め》に成りたかったんです?」
ロジェが
「過去形にしてくれるな。
それと言及し、
抗議してみせても、さほど気にかけてはいないのだろう。
「浅はかにも、わずらわしいものを蹴散らせる力が欲しかったというのが本音だが…(
いささか
「けど、まぁ…。考えてみれば、そんな利己的な目的に賛同する
けっこう指摘され、軽蔑され、ばかにしてるのかと無視も
それでもな。妥協するのも邪道に走るのも利用されるのも性にあわなくてな。いまも、こうしているわけだ。
これでも、まったく誘いがなかったわけじゃないんだぞ? (正直、鎮めの仕事……作業は自分の仕事という気がしないし、このままでもいいかなと思い始めているが――…)。
安全そうに見えても、彼らの中には下心から近づいてくるものもある。
背負いきれる都合・問題とも限らないからな」
そこで、すいっと。講師の注意が周囲に流された。
「みんな、そろそろ片付け始めろ。時間切れだ」
不特定多数へ指示を投げたあと、講師の青い双眸がセレグレーシュ
「レイス。昼はいっしょに食わないか?
(おごる、って……なにを?)
言葉にして返さぬまでも。
あらためて講師に視点を
ここの門下生は、正当な理由もなくひとりで三人前たいらげたり、極端なメニューを望まない限り
生活する上で月ごとの
定期でとる食事などは、暫定的ながら一食あたりの上限枠が定められて管理されるが、最低限、良識的な配慮もされている――(二食分
ゆえに、そのへんを常識的な範囲内に調整できない者は、〝生活能力に難、または癖がある〟…とされ、資質評価の材料にもなる。
一定額までの
要するに借金だろうと実家の財力・コネだろうと、 散財して
予定の上限を越えた事情・理由・用途によっては、要項が追加されたり
医療費や教材費など、諸事情や進み方によって個人差が大きくなる分野も存在するので、表向きは年齢・性別・段階に合わせて一律のように言われていても、裏側では、必ずしもそうではないのが実情である(とうぜんのことながら、あまったからといって、個人に還元される種類のものではない)。
ちなみに光熱費など、法印で対処可能な項目において。その方面の技術習得目的で滞在する者であれば、成長過程でカバーできるようになるので、けっこう早い段階で設備費用程度に縮小される。
「俺たちも同席していいですか?」
マークリオ少年が生真面目にたずねると、答えが返されるより先に、その友人のロジェもここぞと便乗した。
「俺、〝ラララ風ラビオリ〟が食いたいです。それで、買い食い・買い
自主訓練時の間食・夜食用に考えて(い)るんです」
「おう、やる気だな! 歓迎するぞ。
だが、特注も買い食いもセルフだ。自分の
「それって、
条件をひるがえされて不服を
「
私は、おまえらの衣食住分、ノルマを課せられた上で、自分の生活のために必要程度の仕事を
そういった面では、けっこう、時間を
まぁ、養っているようなものだから《
(――それは組織の体質・方針だから、〝
事実の曲解・
対象をヤツひとりと想定して
その思考の主(ロジェ)は、腹の内側に不服・反感を抱えていようと、表むきはおくびにも出さず、受動的に言葉を連ねた。
「そうか。養ってもらっていたのか…。…〝お
「む…。あまり嬉しくないが……。考えてみるか」
「冗談です。そんなの、
「ほう。そこで
親元(を)離れて
律義な大人をからかった代償は安くない。覚悟はしておけ」
「俺は、なんの覚悟しておけばいいのでしょーか?」
「そりゃあ、容姿・性格に問題のある娘ができたら、おしつけられるんじゃないか?」
ロジェと講師のやりあいに入ったつっこみは、
本気とも思えない彼らの会話が耳に入ったのだろう。
「あれ? 講師、女いるんですか?」
ロジェが、さらに現場を混ぜっかえした。
口をはさんできた者は、聞こえた会話に
多少は耳をそばたてているのかもしれないが、後処理作業を再開し、自身が使った法具をひろい歩くなかに、もともとあった距離をさらに広げている。
「いまはフリーだ。注文はうるさいが、いい
講師が軽い口調で応戦してると、片側で、ぽつりと。
こころなしか、しずみがちにも感じられる声がなされた。
「
それと真剣な
それ以前に交わしていた会話が微妙に金銭に関わるものだったとはいえ、現場の流れからはまったくといっていいほど脈絡がみえない
カフゥ講師が渋い表情を見せながら、律義にその追及に応じる。
「あぁ…。そうして入るにも、いくつか条件がつくな。チャンスを活かせるかは、本人次第だが……」
事実……
法印関係の仕事の受注対応はもとより。
地元における法印管理の費用軽減や法具・資材を売買する上で、優遇措置を提示したり、金を積んだり、保証したりして、才能ある子供を
または金銭目あてで、子を売ろうとする者も
事情はそれぞれなので、総じて個別対処になるが…――。
それが
事実、過去に、そういった事例がなかったわけでもない。
「求めているのが、必ずしも心力……法印使いとしての可能性とも限らないからな。
(
商取引、公証人。事務作業員に教職……
…――滞在が叶えば、ここは出稼ぎも学びも可能になるひとつの街みたいなものだから、人材登用の道は多岐だ。
だが、どんなに金を積もうと、入れない奴は入れないぞ。そういった
(今のところは)法具運用で大抵のことは
「いろいろ、黒い噂もありますし、そういった綺麗事も上辺だけじゃない
実情を解説されようと、流されることなく冷めた調子で指摘したのは、ロジェである。
「(そう)思うのはいいが、憶測で
まぁ、(目端が利く
犯罪に手を染めたり、過度な損害を出さないかぎりは家内事で済まされるが、流れによっては、身にも返ってくるぞ。
一度
ゆるいようでも、それと発覚し、目にあまる行動をみれば対処する。そうして作ってきた敵も少なくないらしいからな。
人間いろいろだから、そのへんの識別にも苦慮する」
「《
〝ここは万全〟なんて言ってられなくなるんじゃないですか?」
カフルレイリが、黒褐色の
「おう、よく気づいた――(気づかない方がマヌケだが)。
だが、あの一族の
彼らもばかじゃないさ。
それでも、《
▽▽ 場 外 ▽▽
【 割愛対象になりそうな事柄ですし、機会があってもずっと先になりそうなので、ここで注釈……
下記? の一部を本文の間にはさんでおりましたが、あらためて見たら邪魔だったので、ここに移動いたしました ('◇')ゞ💦 】
大食堂において。
特注品を望む場合は、前日・昼までに予約するのを常識としております。
その場で対処可能な範囲であれば当日でも享受され、要望によっては、材料確保・調理者の事情などから、後日に伸ばされたり却下されたりする。
日頃からメニューのリクエストも受けつけますが、献立としてとり入れられるかは裏方の胸先三寸 になるのです。
《家》といっても、独立したひとつの町のようなものとしているので、食事できる場所は他にも存在します。
喫茶店をはじめ、郷土料理をあつかうお食事処、甘味や特定の食物専門の各種売店やファストフード店、弁当+惣菜屋などを利用する者もある。
食材を買いこんで自分で炊事する者もおります。
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