さして古くもない過去の常連 ~ その縁者 ~.3
…――《
それはかつて《リセの家》の一区画として存在し、
組織としての体制が整い、勢力が増してゆくなか。《家》の機能は中央から、さほど離れてもいない周辺の土地(台地)へと、目的の分権化・
そういったふり分けの決着がほぼついたとされるいまも一部機関は、利便や都合、形式、慣例的な事情から中枢界隈に残されたままになっている。
《
千客万来。
入門希望者や細々とした相談・
いささか軽度なもの、デリケートなもの、
大きな動きがなければ安穏として
いまだ解決されぬまま、くすぶり続けている往年の問題も少なくない。
対処したくてもなかなか手を出せない厄介な事柄というものも存在しているのだ。
柔軟かつ臨機応変な対応を求められることから、自然、この部署には、そうおうの者――非常時には複数ともなるが、主に
しかし、あつかう事業の大半を北の施設に
その本日の担当者はいま。
建物の南東の
ほどよい広さを具えたその露台を利用しているのは、かなり年齢層がばらついて見える男女が三名。
「
肩越しに
ともすれば十代ととられかねない未完成さも感じさせるが、じっさいは、二三を数える洒脱な風体の男子である。
彼が手にしているのは、水……もしくは酒気だろうか?
そんな彼の言葉を
ことりと。
口もとからおろした
ともなく。その動作をこなした右腕を自分の身にひきよせるよう
「パルがそうしたいなら、いいんじゃない? 反対はしないわ」
とりすまし肯定した少女の
健康そうな黒い虹彩に純朴そうなきらめきを宿してもいる。
囲むテーブルについて行儀よく姿勢を正し、したたかに心を武装している印象なのだが、その女子ものごしには、つけいる隙が多分に存在した。
外見相応の頼りなさ・女性らしい
「学生さんになにを言ってるの。講義は、ちゃんととって受けなさい」
たしなめの言葉を発した残りのひとりは、漆黒の髪をアップにした
たしかな経験の
しかし。
その肌は、いぜんとして
年齢不詳気味なその女性の
そんな彼女が
先の少女とも類似するその特徴は〝
――《亜人》である
平素は
この日のこの時間。業務を総合的に
この組織を導く先導師陣にも名を連ねる
その名を〝マヒアグラシア〟といった。
壁も距離もあるなかに、その
その役割を担う者が所持する
持ち場を離れても、窓口付近で交わされる音をひろえる種類の利器。
いま、彼女が右の耳たぶに
身に着けるポイントは必ずしも、耳や肌でなくてもよいので、利用する者の発想や気分によっては、私物に組みこみ、ネックレスやブレス、ピンブローチのように
《法具》なので心力の
主に収音に特化して
遠隔的に
彼女は、訪問者を案内するどころか、自分たちの居場所を
見えない位置からの呼びかけで、こちらの所在を見当つけられるかどうか……
無視しないまでも、そのへんの採択・行動判断。対応を相手に丸投げしたようなものなので、親切とは言えない。
かなりおざなりな対応である。
多忙を極めていたり、手が離せないという場面ではもちろんなく、多少、心力消費が進むとはいえ、燃費が
彼女自身に
「でも、つま
マヒアグラシアに
「覚えたいと思わないものは、頭に入らないよ。
俺は、
うちからはカレンが出ているんだから、もういいじゃん」
「兄さんがどうでも、パルには関係ないと思うけど……」
聴かせるともなく呟やいたのは、背伸びしがちに見える年若な少女だ。
次いで、少女の
「中途半端はいけないわ。
「半端って……俺が選んだんじゃないよ! 産まれた時からここにいるんだし。
どんなものか、ある程度知らなきゃ選ぶなんて無理だ。
なんか俺らは、なんだかんだ言いくるめられて、その道、入るの、あたりまえみたいに押しつけられたしさ。
トリーンは、後で迷わなかったのかって……あー…
〝トリ―ン〟と呼ばれた少女が、少し離れたところに立っている弟のようすをちらと見る。
それは、いっけん十代半ば未満にしか見えない彼女の通称。
正名の初めの〝カ〟の音が省略されて、日ごろ(から)多用されている愛称だ。
――正式名はカトリ―ンである。
「
本場にあって、ほどほど自由なのがいいんだよ」
🌐🌐🌐
〔こっちに来る
〔…。いいさ。こちらから行こう〕
🌐🌐🌐
「〝ハイディス〟とか〝
「パル……パルフェール。あなた、ちびって言ったね…(しかも、歳をくっているって……)」
指摘された
「うん」
たとえ年少者が、より年上に見えようと慣れ知った
くわえて弟の方は母親が異なるので、混ざりのない人間である。
「おまえは鎮めになりなさい」
「って、いきなりなに言ってるの。なれっていわれたって、そんなの、なれるものじゃ…」
「パートナーなんて、私が探しだして
「ぅわ…(
「法印使いとして、一生、家に
「庭師さんは、唯一の賛同者を無くしたわね」
「唯一じゃないよ。母さんも賛成してくれてる。俺にだって、選択する権利が……あ!」
そこで彼、パルフェールが、こころもち身を乗り出した。
視界のはしに変化を見たことで、そのハシバミ色の瞳の焦点が、あっちからこっちへ、こっちからあっちへと揺れ動く。
「マギー。――マギーが行かないから、お客さん、向こうからきたよ」
マギーと呼ばれた彼女。マヒアグラシアは、近づきつつある客人をそう遠くない
対象がそこにあることを否定することもなく受け流し、気にかけるようすもない。
足を運んだ現場の雰囲気から、それが目標と判断したのだろう。
客人の筆頭。
茶と白の斑頭をした
〔
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