勧誘者.3
〔……君。スタ師範と契約してる
〔してねーよ。拘束されてんだ〕
赤褐色の髪の
〔…
セレグレーシュが思案がちに返すと、その
〔こうなったのは事故だ。
迷惑しているが、とっぱらっても、先がある保証はない。
自分から飛びこんだ
なにかと
(わたしの)
そういった事実を
つけ込めるだけの能があるかどうかを別としても。おのれ自身の攻めどころを暴露するようなものなのだ。
それでなくても、契約相手がいる
理由がそれ(弱みの
ちら、と。
事情の
どういったわけか、セレグレーシュに対する警戒心は
そこで、ふと思いたったセレグレーシュは、深い意味もなく、この場に居る
〔…ふたりは知りあい?〕
〔いや。
答えた赤褐色の髪の
〔知人になってやってもいーぞ。そっち
発言に反し、意欲のほうは、さほどでも無いようだ。
言いまわしにワンクッション置くような距離があり、すぐに双眸を伏せがちに逸らして、まともに対象を見ようともしなかった。
それに対し、
〔「アシュ」だ。「トレース・アユスヴェーダ・ヒチ・ヴィヴァスヴァット」ともいう〕
アシュヴェルダが、さらっと事もなげに応えて……
セレグレーシュが、《アシュ》以下の、真名ではない聞きなれない人の域の語呂を頭の中で
〔聞いたことのない家名だな。それで〝
その銀色を
〔その意味……わかって使っているか?
〔亜流も少なくないだろう。失われたものもあれば、縁なき
すでに、その数にも収まらない。
さほどに重い意味があるとも思わないが……〕
アシュヴェルダの
真名ではなくても、名のひとつらしき響きをフルで示したのも、相手に
うっすら笑っているのに、微笑みとも冷笑ともつかない表情をしていて、その瞳の色がいつの間にか、油断ならない
いま目の前にいる相手ばかりではなく、その背景にあるだろう者達の無知・愚かさ、こだわりの
さりげなくも挑発的なので、喧嘩を売っているようですらあったのだ。
対する赤髪の
〔…。「ヘレン」だ〕
知りあいにはなっても気は許さないと、態度と発言で宣言したようなものだ。
〔「《ひち》」って、なに?〕
素朴な疑問を胸に。
セレグレーシュが、かたわらの
〔
〔気が向かなくても、教えろよ〕
セレグレーシュが遠慮なく返したことで、冷笑めいた笑いを収めたアシュヴェルダが思案がちに瞳を伏せる。
〔考えておく〕
こころなしか、とまどい・
表情に気丈な
(…また、目の色変わってる……。
ヴェルダって、冷静に見えて、意外と感情の起伏が激しい?
たいがいがそうでも、
でも…なんだろ。
どっちでもあるんだけど、それだけじゃない……つかみきれない余剰がある感じだ…。
うん。オレ、けっこう、向こうから来た者かこちらで生れたものか、そういうのは、わかる方だと思うんだけど。真名を知っても、どっちで生まれたものなのか、はっきりしない。
どこまでもあやふやな部分がある……。
プルーやテレマ(※ 〝テレマ〟はセレグレーシュが幼少時、呼び出した子)みたいに向こうの色が濃くて、無理なく自立的にまとまっているから――集約されているから見極めをつけ
根が深くて、単純にこっちに来たことで変化したとか、ゆがんだってふうでもなくて…。……。
ヴェルダって、そのへんにいるこっち生まれの
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